報告と満月の日
さっそく次の満月の日を調べてみると、明後日だった。明日には声も戻るだろうしな…。
あ、お父さん達に連絡してみよう。
ジョイール王国へ来る前、一応念のためにと持たせてくれた物がある。時計型の連絡装置だ。
これを、こうして…できた!
すると、目の前にビジョンが出てきた。
「あ、アオ。やっと使ってくれたね」
“ごめん、ちょっと毒で声出ないんだ”
ビジョンに現れたのは、お父さんだ。私が見せたメモを読んで少しびっくりしてたけど、すぐに普通に戻った。
「声が出ないなんて、けっこうな量の毒だったんだね。で、何の毒だったの?」
“ここらでは手に入らない、エモ草”
「ほう、そんな物をどこで手に入れたんだろうね。少し調べてみるよ」
“よろしく、こっちでも調べてるから”
「分かった。それより、そっちでの暮らしはどうだい?」
“いい感じだよ”
私は嘘は言ってないよね?離宮も綺麗になって住みやすいし、ルディさん達は私の認識を改めたみたいだし。王子も、なんかよく分からないけど柔らかくなったし。
「そうか…。さて、話は変わるけどもうすぐ満月だね、そんな感じで大丈夫かい?」
“大丈夫、声ももうじき戻るよ”
「そうか、じゃあ問題はないね。あの歌を聞けないのは、惜しまれるけどね。じゃあ、頑張ってねアオ」
“ありがとう、お父さん”
そして、ビジョンはなくなり普通の時計に戻った。
とりあえず、エモ草のことは伝えたし協力も得られたから大丈夫だよね。やっぱりお父さんも驚いてたな、まぁそりゃそうだよね普通は手に入らない物が、大量に使われてるなんて。
さて、私は明後日のことをまず考えとかないとね…。
コンコン
「失礼します」
「もう起きて大丈夫なの?」
「声は相変わらず出ないんだね」
“もう大分楽ですよ、声も明日には戻ると思いますし”
来たのは、ルディさん達だった。
あ、明後日のことを言っとかないといけないよね。
“あの、明後日なんですけど夜少し湖に行きたいんです”
三人は顔を見合わせて、視線だけで会話しているみたいだったけど、しばらくして。
「それは、月の姫としての仕事ですか?」
ルディさんに聞かれて、私はメモ用紙にそうですと書いて見せた。すると納得したように頷いていた。
「明後日は満月でしたからね」
「力が強くなるの?」
“そうですね、強くなります”
「具体的には、何をするんですか?」
ルディさんに聞かれ、少し話そうかどうか迷ってしまった。
あれは、正直この人達には見られちゃいけないから、興味をもたれて見るって言われると厄介だから。
“魂を鎮めるだけですよ、でもその間は私を見ちゃダメですよ?”
「魂を鎮めるだけなんでしょ?なんでダメなの?」
ジミーさんからのこの質問は当然だ、この離宮に来たときにすでに一回見てるから。でも、満月の日はちょっと違うんだよね…。
「何かあるのか?」
“月に捕らわれてしまうんですよ”