一歩前進?
私が次に目を覚ましたのは、その日の夕方だった。
リーンさんが食事を持ってくるって言ってたのに、悪いことしたなぁ…。
コンコン
誰だろ?リーンさんかな?
「失礼するぞ」
ルーカス王子!?
ルーカス王子は、手に果物がたくさん入ったカゴを持って部屋へ入ってきた。
「体調はどうだ?」
“もう大分楽になりました”
「そうか」
そう言って、ベッドのサイドテーブルにカゴを置いて自分は、椅子を持ってきて座った。そのまま沈黙が続いた。
なんなんだろう…なんでずっと座ってるの?ていうか、この沈黙はキツイ!
「本当にすまなかった…俺がもう少し毒について知っていればよかったな」
ルディさんが何か言ったのだろうか?それとも何か悪い物を…。
「…何か変なことを考えているだろう」
私は勢い良く頭を振った。
びっくりした…そんなに分かりやすかったかな?そう思いながら、私はまたメモ用紙に言葉を書く。
“前も言いましたが、私は仕事をしただけです。ルーカス王子が気にする必要はありませんよ”
「だが…」
“本当に大丈夫ですよ、それよりミリア様はいいんですか?”
「今日、少し会ってあの飲み物のことを聞いた。どうやら、父親に渡されたらしい」
やっぱり、マーリン侯爵が関わっているのは確かなんだ…。じゃあ、侯爵の後ろにまた違う本当の犯人がいるってことかな?ルディさん達がエモ草の出所を調べてるから、その報告を聞いてからまた考えようかな?
「とりあえず俺は、ミリアと少し距離を置くことにした」
え!?本当にいったいどうしたの、ルーカス王子!
“ミリア様に怪しまれませんか?”
「大丈夫だ、お前のことを知ってるのはリーンとルディ達。それにカイル達だけだ」
国王様達も知らないのか…。あ、ちょっと父さんに連絡してみようかな、エモ草についても何か知ってるかも。
「とりあえず、お前は早く声が戻るように安静にしていろ。何か分かったら、逐一知らせるようにする」
“分かりました、ありがとうございます。ルーカス王子”
「と、当然のことをしただけだ。じゃあな、俺はもう戻る」
そう言って、私が頷くのを見たあと背を向けて部屋を出ていった。
本当に何か悪い物を食べたんじゃないかっていうくらいの変わりようだったな。ま、ルーカス王子のいう通りまずは、声が出るようにしないとな…。ルーカス王子との関係も、一歩前進かな?
あ、そう言えばもうすぐ満月だな…。