想いを伝える。
スクリプト王国に戻った私達を、お父さんやお母さん、ソフィー様、ナタリーその他にもお城で働いている多くの人が待っていた。
最後に私がルーカス王子の手を借りて、馬車から降りた。
「アオー!」
ナタリーが、飛び付くように私を抱き締めてきた。
走っていて結構な勢いがついたまま、私に抱き付いたから私は少しフラついたけど、なんとか受け止めた。
「もうすごく心配したんだから!」
「ごめん、ナタリー」
「無事で良かった…」
「おかえり、アオ」
「お母さん…。ただいま!」
お母さん達も私達のところへ、歩いてきていた。
ナタリーから離れて、お母さんとも抱擁する。すると、肩に手が置かれた。
「おかえり、アオ。無事でなによりだ」
「ただいま、お父さん。ソフィー様も」
「アオが無事で良かったわ」
お父さんとソフィー様とも抱擁を交わし、とりあえず中に入ろうということになった。
夕食は、皆で摂ることになったからルーカス王子とは夕食のあとに、時間をとってもらった。
夕食では、ナタリーからものすごく怒られた…。
今回の作戦を、内緒にしていたのが相当腹立たしかったみたいだ。ソフィー様から、心配でずっと泣いてたじゃない、と言われ顔を真っ赤にしながら怒っていた。
お母さんは、落ち着き過ぎていて逆に私に何かあった時に、誰かお母さんの怒りを鎮めることが出来るのかが不安だったとソフィー様が言っていた。
お父さんは、そんなお母さん達の話を穏やかな顔で聴いていた。
そんな賑やかな夕食を終え、約束通りルーカス王子の部屋へ来た。
リーンさんやルディさん達には、隣の部屋で待機してもらっている。
ルーカス王子に案内されたテーブルには、果物や一口サイズの小さなケーキなどがあった。
「紅茶で大丈夫か?」
「私やるよ?」
「一応、今のこの部屋の主は俺だからな」
「分かったよ、じゃあお願いします」
ルーカス王子が、二人分の紅茶を淹れて席に着いた。
なんか緊張してきたな。
二人ともしばらく無言で、紅茶や果物を食べていたが、ルーカス王子が切り出した。
「で、話っていうのは?」
「えっとね…」
うーー!やっぱり、緊張する!
そんな様子を見てか…。
「アオらしくないな、どうかしたか?」
心配されてしまった。これ以上黙ってても仕方ないしね…。よし!
「今回の事件で、自覚したことがあってね」
「自覚?」
「今回の事件の捜査をしてる時にね、ヨルク王子が身代わりとはいえ私を襲ってるのを見たときにね…」
「なっ!そんなことしてたのか、あいつ!」
「落ち着いて!とりあえず、私の話を聞いて」
「……分かった」
私が襲われたと言うことに、反応して立ち上がっていたが、私の言葉を聞いて素直に座り直し、落ち着かせるように紅茶を一口飲んでいた。
「でね、その時本当に気持ち悪くて寒気がするほど。でもその時にね、なんでかルーカス王子の顔が浮かんだの」
「俺の?」
「うん。最初は私もどうしてルーカス王子の顔が浮かんだのか分からなかった、でもね……ルーカス王子のことを考えてて分かったんだ。ルーカス王子のこと、頼りにしてる私がいてね。そんなことを思ってるうちに…。あ、私、ルーカス王子のことが好きなんだなって…」
「……」
「だからね、ルーカス王子私と…」
「ちょ!待て!」
ものすごい勇気を振り絞って告白しようとしたら、ルーカス王子にすごい顔と勢いで止められた。
「本当にお前は!それは、俺から言うことだろ」
「でも、ルーカス王子前に似たようなこと言ったでしょ?だから、今度は私の番かと…」
「そういう考えになるんだなお前は…」
「え?普通そうじゃないの?」
ルーカス王子が、もう見慣れてきている長いため息を吐いた。そして、呆れたように…。
「女なら、だいたいの奴らが男から言われたいだろ…」
「そういうものかな?」
「そういうもんだ…。はぁ……仕切り直しだ、俺から言うからな」
「あ、はい…」
私もルーカス王子も、姿勢を正した。
そして、ルーカス王子が話し出す。
「アオ、俺と結婚してください」
「よろしくお願いします」
「はぁ……。なんか、どっと疲れたぞ」
「私も、なんか疲れた…」
二人で脱力して、なぜか笑いが込み上げてきて二人で気がすむまで笑ったあと、リーンさんやルディさん達に報告することになった。
「本当に、おめでたいですわ…」
「ようやく、言えたんですね」
「良かったね!アオ様、ルーカス王子!」
「おめでとうございます」
リーンさんは、涙を探して喜んでくれて。ルディさんは、ルーカス王子に向けた言葉だろう。
「さて、明日の朝スクリプト国王に話しに行くか」
「それも、あったね。頑張らないとね」
「ていうか、アオ様ってここを継ぐんだよね?ルーカス王子と結婚するって大丈夫なの?」
その問題があったんだ…。
うっかり、その問題を忘れていた。