回想
ここから、回想が何話か続きます。
ルーカス王子達が、拐われたアオを救出するために動いている間のアオ視点です。
時は、アオがマリアーヌに手紙を出した直後からになります。
「本当にやるんですか?」
「やって炙り出さないと、ルーカス王子達はちゃんと動きますよ。前の色ボケ王子じゃないんですから」
「アオ様…。ルーカス王子のことそんな風に思ってたんですか…」
「えへっ」
おどけて見せると、リーンさんが呆れたような表情をしていた。
「まぁ、本当のことですけど…。今のルーカス王子には、絶対に言わないで下さいね!」
「わ、分かりました…」
最後の方の言葉に、やたらと力が入ってたな。
「さて、準備をしましょうかね。とりあえず、私はマリアーヌおばあちゃんのところへ行きます」
「あっちが動かなかったらどうするんですか?」
「動かなかったら動かなかったで、平和な日常を送るだけですよ。私の身代わり置いていきますね」
そう言って、魔方陣を描いていたところに最後に手をついて私の力を送る。
すると、そこから植物のツタのようなものが出てきて、人の形を作っていく。
あっという間に、私と瓜二つの子が立っていた。
「私の身代わりお願いね」
「了解、気を付けて行ってきてね」
「分かってる、じゃ私も…」
「えっ?」
リーンさんはまだこの状況に、頭が混乱しているみたいだけど、なんとか理解しようとしてくれている。
そして、私の姿も銀色の鳥へと変化する。
「綺麗ですね、アオ様」
「お、やっと落ち着きました?」
「はい、その姿であれば誰もスクリプト王国の月の姫とは思わないでしょうね」
「そうなんですよ~。じゃ、よろしくお願いしますね」
「はい、行ってらっしゃいませ」
リーンさんともう一人の私に見送られ、私は闇夜に紛れて飛んだ。
目指すは、マリアーヌおばあちゃんのところだ。
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「アオ、よく来たわね」
「少しの間、よろしくお願いします」
「こちらこそ、で?これからどうするのかしら?」
「この姿のまま、アイスプルフに行って今の状況を見てくるよ」
「少し休んで行きなさい、どうせ何も食べてもいないでしょ?」
おばあちゃんにそう言われ、大丈夫だと言おうとすると、急に空腹だと言うことを自覚する。
「じゃあ、少しだけ」
「すぐに用意させるわ」
それから、軽い食べ物を胃におさめてからまた出発した。
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「予想以上に荒れてるなぁ…」
アイスプルフは、内乱状態だと聞いてはいたけど結構荒れてる。
民家は所々壊れてるし、夜でも街灯があるはずなのにそれすら使い物にならない。
「とりあえず、お城に行って探りを入れるか…」
城へ着いて、外から中を見てみる。
すると、人が集まっている部屋があってそこの窓に留まって、中の話を聞く。
「ヨルク、まだなの?」
「もうすぐですよ、明日にはリアが戻ってきます」
「できるだけ早くしてちょうだい」
「分かっていますよ、母上」
リア…。もしかして、ティーリア姫のこと?でも、戻ってくるってどういうこと?
確か、流行り病で亡くなったって…。
「あの術は成功するのか?」
「えぇ、必ずアオ姫をここに連れてきますよ。必ずね」
「記憶を隠蔽する術。バレれば、アイスプルフ家は終わりだ」
「はい、父上。では、俺はもう戻ります」
「あぁ、気を付けてな」
若い男性は、ヨルク王子であの男女は国王夫妻か…。
私の記憶を隠蔽して、私をティーリア王女の代わりにするつもりなんだ。
ま、とっくにバレてるけどね。さて、私も戻るかなやっぱり動くんだな。リーンさんに知らせとこ。
次の日の夜、おばあちゃんと夕食を食べている時、スクリプト王国にいる私が拐われたという知らせが入った。