誕生日パーティー
「こんなに大変だとは思わなかった…」
「頑張って下さい!アオ様。あと半分です」
「でも、まさか、こんなに多いとは思わなかったんですよ!」
今、私は目の前…つまり机の上に置いてある出席者名簿とにらめっこして、途方に暮れています。
ようやく半分まで見終わって、いい加減飽きてきた。
「アオ様は、自分の国ではどうしてたんですか?」
「小さな頃から遊び相手になってもらってたり、話をしに行ったりしてたから、自然と覚えてたんですよ」
「そうだったんですね」
「とりあえず、名前と特徴だけ頑張って覚えます。当日、もし忘れてしまったら教えてくれますか?」
「はい、もちろんです」
誕生日パーティーがあると聞かされて数時間後には、ルディさんの父親である宰相様が離宮までやってきて、ある程度のこの国の貴族のことを教わった。
宰相様の教え方は本当に上手だった。
それなのに、息子であるルディさんが貴族や国のことを分からないはずはないと思うんだけど、分かっているならもう少し、あの王子をどうにかしようとか思わなかったのかな?
「ん~……」
「考え事ですか?」
「ん?まぁ、そうなんですけど…こればっかりは私には手に負えそうにないです」
「そうなんですか…」
もう少しルディさん達と仲良く出来たらいいんだけど、最近は無理して私に丁寧に接してるみたいだからなぁ~。
「さて、まだまだやる事はいっぱいありますしとりあえず、パーティーが無事に終われるように頑張りましょう!」
「はい!」
それからは、ドレスを決めたり貴族の名前を覚えたり、マナーをもう一度見直したりとあっという間に過ぎていった…。
ーーーーーーーーーーー
「やっぱりアオ様には、青色の系統のものがよく合いますね」
「髪の色が特殊ですからね…。逆を言えば、合う色があまり無いんですよね」
今回の衣装は、前の婚約パーティーと同じ形のドレスだけど、前よりも濃い青色で銀糸で花の模様が刺繍されている。
ネックレスとイヤリングもドレスと同じ色で、涙の形をしている物だ。
コンコン
「アオ様、支度は出来ましたか?」
部屋の外から、カイルくんが聞いてきた。
「うん、もう行くね。じゃあ行きましょうか」
「はい、アオ様」
私は部屋から出て、カイルくん達とリーンさんと一緒に広間へ向かった。
すると、広間近くで何か言い争う声が聞こえてきた。その言い争う声の主を、多くの騎士さん達が囲んでいて誰がいるのか分からない。
とりあえず、どいて貰わないと中に入れないよね。
私は近くにいた騎士さんに話しかけた。
「あの、すみません。何かあったんですか?」
「あ、アオ様!ルディ隊長!アオ様が来られました!」
え、何々?私待ちだったの?ていうか、ルディさんがこれやってたの?
とか考えているうちに、私の前の人達が左右に寄だして私の前に道が出来た。その先には、ルディさん達と、ルーカス王子とミリア様がいた。
私はその道を歩き、ルディさん達のところへ行った。
「なんの騒ぎですか?」
「白々しい!お前がルディに言って俺をここに足止めしたんだろう!」
「なんの話ですか?」
ルーカス王子は、頭に血が上り過ぎていて冷静に話が出来る状態じゃない。
「どういうことですか?ルディさん」
「貴女は、一応ルーカス王子の婚約者です。もし、ルーカス王子が貴女ではなく他の女性をエスコートしていた場合、ルーカス王子に悪い印象が付きます」
「何故だ?俺が心から愛しているのはミリアだけだ、ならば俺は一途な男として見られるだろう」
「いえ、それが普通の姫ならば私も何も言いません。ですが、アオ様は月の姫…歴代でもっとも月の女神に近い力を持つ方です。それを蔑ろにしているとなれば、国王様はもちろん他の臣下の方達もあまり良くは思わないでしょう」
「だから、その女をエスコートしろと?」
「はい」
まぁそうだよね。ルーカス王子やルディさん達と同じ世代の若い人はどうであれ、国王様やその臣下の人達の世代の人達なら絶対に“なにやってんだあの王子は”てなるよね。
「……分かった、今回はルディの言う通りにしよう」
「ありがとうございます」
「そんな!私と一緒はダメなの?」
「ミリア、分かってくれ。今、父上やその臣下に睨まれては今後に響いてくる。今日は、エスコート出来ないが俺にはミリアだけだ」
「王子…分かりました」
「ありがとう、ミリアなら本当にいい王妃になれるよ」
「王妃だなんて、まだ気が早いですわ」
あー早く終わらないかな、この二人のイチャイチャ。
「それでは、参りましょう」
ルディさんのこの言葉で、やっとイチャイチャは終わりルーカス王子は、私のところへ来た。
「今回だけだからな、いい気になるなよ」
「なりませんよ。私、貴方のこと好きじゃありませんし興味もありませんから」
「なっ!」
おっと、あんまりにもイチャイチャを見せられたから、ついつい本音が出ちゃった。
なおも、何か言いかけていた王子だが広間のドアをルディさんが開けたので何も言わなかった。
~~~~~~
その後、パーティーはちゃんと予定通りに行われていった。
今日は、王妃様の誕生日パーティーということもあり、広間の壇上にはいつもより綺麗に着飾っている王妃様とその王妃様を、いつもより優しい笑顔の国王様が並んで座っていて、その右側にルディさんの父親だったり、王様の側近の人達が左側に私達が国王様に近い順に、ルーカス王子、私と並んでいる。
ミリア様は、壇上に上がろうとしていたみたいだったけど王子が自ら説得にいって解決したみたい。
今は、貴族の人達の挨拶を受けているところ。
「王子、ご機嫌麗しゅう」
「えっと……」
「リーモス侯爵ですね、先日お子様がお生まれになったとか」
「おや、よくご存知ですね。えぇ、妻に似た可愛らしい女の子が生まれたんですよ」
「おぉそれは良かったな」
「はい。しかし、アオ様はもうジョイール王国の貴族の名前を覚えたのですか?」
「まだ、曖昧なところもありますが」
「いやいや、凄いことですよ。おっと、長く話をし過ぎましたね。それでは失礼します」
こんな感じで、ルーカス王子はまったく名前を覚えてないのだ。その度に私が、さっきみたいにフォローをいれている。いい加減疲れた…。
「おぉ、マーリン侯爵久しぶりだな!」
やっと王子の口から貴族の名前が!
「いつも娘がお世話になっております」
「いや、今日はすまなかった。ミリアをエスコートできず」
……あぁ、ミリア様のお父様でしたね。
そりゃ覚えてて当たり前ですよねぇ~。
「王子、のどは渇きませんか?私、飲み物を持ってきたんです」
「おぉ、ありがとうミリア頂くよ」
あれ?この臭い…ミリア様が渡したコップから?まずい!
私は、今まさにルーカス王子が飲もうとしていたコップを奪い、飲み干した。
「何をする!せっかくミリアが持ってきてくれたものを!」
「すみません王子、私ものどが渇いていてミリア様本当に申し訳ありません」
私は、ミリア様に頭を下げた。
「いえ…、大丈夫ですわ」
「アオ様は、緊張もしていたのでしょう。王子も落ち着いて。それでは、私達はこれで失礼します。行くぞ、ミリア」
「はい」
二人は下がっていった。
やっぱり、ミリア様が持ってきたコップの飲み物には毒が入っていた。それも、かなりの量の。
パーティーはもう終盤だから、そろそろ終わるだろう。
予想通り、しばらくしてパーティーはお開きになった。
私は、ルーカス王子にエスコートされながら広間を後にした。
ヤバい…意識が…手と脚の感覚も無くなってきてる。
「おい!エスコートするのは今回だけだからな!せっかくミリアが持ってきた飲み物も横取りして!」
あ、もうダメだ…。
「おい、聞いているのか?おい!」
私は、そのまま意識を失った。




