アイスプルフの姫~ルーカス~
数日後、俺達はアイスプルフ王家が開くパーティーに出席するため、一日早くアイスプルフの城に滞在することになった。
「これは、いるのか?」
「仕方ありません。ルーカス王子の、アオ様との婚約破棄騒動のことは、こちらにも広まってますからね」
ルディの返答に、渋々納得しながら目の前にある鏡に写っている赤毛に変わった自分を見る。
俺の顔は、あの騒動で結構な範囲に広まってしまい、自然に無くなっていくのを待つしかないのだが、今回はマリアーヌ女王陛下の護衛になりきるため、マリアーヌ様の提案で髪の色を変えることになった。
「なかなか似合ってるけどね」
「そうだな」
「マリアーヌ様が、ルーカス様の瞳の色に合わせたと言っていましたが、違和感はないように見えます」
「うまく紛れ込むことが出来るのであればいいがな」
今回の目的は、アオを取り戻すこと。
もし、アオが記憶を無くしていた時用の術の準備も出来てる。
「お、慰めてるのか?お前」
素っ気ないルディ達の代わりに、銀色の鳥が俺の肩に留まり優しく俺の肩をつついてくる。
こいつは、ここまでくる道のりで一度帰って来なかった時があったが、それ以外では大抵俺か、ルディ達の誰かの肩に留まっていた。
俺以外のやつのところに行っている間、少し寂しかったのは秘密にしている。
「今日は、アイスプルフの人達には会えないんだっけ?」
「あぁ、準備で忙しいとのことだったな」
「重大発表があるとか言ってましたよね?まさか、それがアオ様をお披露目することだったりするの?」
「あり得ない話じゃないな」
「だよね…」
「なんにせよ、万全の状態で迎え打つしかないさ」
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次の日
パーティー会場に、マリアーヌ様と共に入った俺達は、あまりの人の多さに驚いていた。
「よくこんなにも集めたわね」
「確かに、内乱が鎮まってすぐのパーティーでここまで人が集まるのは凄いですね」
「若い男が多くない?」
ジミーの言葉で、俺達は周りの招待客を見回す。ジミーのいう通り、若い同じ歳ぐらいの男が多かった。
「皆、まだ婚約者のいない王子や貴族の子息ばかりね」
「そうなんですか?」
「もしかしたら、お姫様の結婚相手を探しているのかしらね」
「酷なことですね。病が治ったばかりでしょうに」
「王族や貴族の結婚は、だいたいそんなもんだろ?」
「ご自分は、アオ様に思いっきり婚約破棄をすると、おっしゃいましたよね?」
「うるさい!」
なんだか、最近ルディの俺に対しての言葉がきつい気がするんだがな…。気のせいかな?
「何ですか?」
「いや、何も…」
「ご来場の皆様。お待たせいたしました、アイスプルフ家の登場です」
「やっとお出ましだね」
司会のやつの言葉で、会場の一段高いところに用意されている舞台の右手から、アイスプルフの者達が入場してくる。
アイスプルフの特徴である水色の髪の、中年の夫婦と若い男。アイスプルフの国王夫妻と王太子だろう。それぞれが、用意された席の前に立ち一礼したあと、国王だけが一歩前に出て挨拶をする。
「本日は、お忙しい中お集まり頂きましてありがとうございます。今夜は、長く病に臥せっていた私の娘、ティーリアの快気祝いとしてこのパーティーを開きました。娘は、病により髪と瞳の色が変わってしまいましたが、今回のパーティーに出席するという、本人の希望がありました。さ、ティーリアこちらへ」
皆が、舞台の右手に注目し出てくる人物を見て驚く。
「!!」
「え!?」
そこにいたのは…。
「アオ…?」