とある家族
短くなっています。すみません!
「あぁ、やっと来たのだな」
「なんて美しい娘でしょう」
「父上、母上この娘はもうあなた方の娘なのですから、目を覚ました時は他人行儀なことは止めて下さいね」
ある家のとある家族…。ベッドに寝かされているのは、銀髪の美しい娘。その周りを囲むのは、その家族の特徴である薄い水色の髪を持つ男女三人。
「あ、目覚めますね」
銀髪の娘の瞼が震え、瞼で隠れていた薄紫の瞳が周りを囲む三人を見つめる。
「ここは…」
「ここは、貴女の家よ。そして、私達は貴女の家族」
「私の、家族…」
一番最初に娘に話しかけたのは、女性だった。他の二人も、娘の近くにきた。
「私はお前の父だ」
「俺はお前の兄だよ」
「お父様、お兄様…。お母様?」
それぞれを見ながら言う娘を見て、女性のそれまで堪えていた涙が、頬を濡らしていた。
女性は、娘の手を握りしめながら微笑んだ。
「えぇ、貴女のお母様よ。よかったわ、目覚めてくれて」
「私…」
「お前は、流行り病にかかってしまってずっと眠っていたんだよ」
「私…。何も分からない……私の名前は…」
「お前の名前は“ティーリア・アイスプルフ“だよ」
「ティーリア・アイスプルフ。私の名前…」
「あぁ、親しい者達からは“リア”と呼ばれていたよ」
「そうなの…」
戸惑いを見せる娘を、優しい声で雰囲気で三人は包んでいく。
「大丈夫だよ、リア。これからまた、色々と教えてあげるからね」
「お兄様、ありがとう」
「リアが目覚めたお祝いをしなきゃいけないわね、あなた」
「そうだな、盛大にやろうか」
「リア、ゆっくりでいい。また、思い出をつくっていこう」
「うん」
それから娘と両親を残して、若い男は部屋から出た。
それを待っていたかのように、黒い影が彼の傍に現れる。
「術は成功したようだな。部屋に宰相の監視用のトカゲがいたが、これでこちらに送っていた兵も撤退させるだろ」
「はい」
「それと、近隣諸国に招待状を準備してくれ」
「招待状ですか?」
「リアの快気祝いさ」
「なるほど…。そこで、婚約者…」
影は、男から向けられた目を見てその先を言うのを止めた。
「婚約なんて、させるわけがないだろ?俺の可愛いリアなんだから。一生、俺のものだよ」
「失言でした。申し訳ありません」
「これからは気を付けて。じゃ、俺は執務に戻る。母上は、リアの傍を離れないだろうが、父上はもう執務に戻るだろ」
「はい、失礼致します」
影は、男の異様な執着を見て恐怖を抱いた。