道2~ルーカス~
数日後…。
「よく来ましたね。お疲れ様でした」
「お招き頂きましてありがとうございます。マリアーヌ女王陛下」
俺達は、シュトラント王国にいる。
あの日の、マリアーヌ様からの手紙に俺達をシュトラント王国へ招待する、との話もあった。
アオが拐われた今、何故かと思ったがシュトラント王国は、アイスプルフ国と近く交流もあるのだとか、そして近々アイスプルフがパーティーを開くらしい。内紛中なのに何を考えているのか…。
それで、マリアーヌ女王陛下の近衛として俺達も連れていってくれるらしい。
「貴方達がアオの為に動いていることは、ジョシュ国王から聞きました。私は立場上すぐに動けない、でも、少しだけ力を貸してあげることが出来るわ」
女王という立場上、無理もないことだ。でも、心配しているのだろう。
「さて、これからだけどパーティーは一週間後に行われるわ。三日後にここを発ちます」
「分かりました。それまでに、出来るだけ情報を集めます」
「そうして。あ、そうそうこんな時に悪いけど頼みがあるの」
「頼み、ですか?」
「えぇ、出てらっしゃい」
マリアーヌ様の呼び掛けに応え、姿を現したのは両手に乗せられるぐらいの、銀色の鳥だった。
「この娘も一緒に連れていってほしいの」
「はぁ、それは構いませんが…」
「ありがとう、それではよろしくお願いするわね」
その鳥は、ソフィーヌ様の元から飛び立ち俺の肩に留まった。
その鳥を見ると、瞳が薄い紫でその色彩がアオを思わせる。
「お預かり致します」
「出来ればもらって欲しいわね。その娘には、ちゃんと本心を包み隠さずに見せることが出来る相手が必要だから…」
「はぁ…」
女王陛下は、この鳥をとても大切になさっているみたいだな。
「長旅でお疲れでしょう。部屋へ案内させるわ、ゆっくり休んで」
「お気遣いありがとうございます、失礼致します」
謁見の間から退室し、部屋へ案内されてやっと一息つけた。
「やっぱり緊張するよねー」
「緊張してたのか?ジミー」
「そりゃ、僕でも緊張することぐらいあるよ。リオンは、僕をなんだと思ってるんだよ」
ジミーとリオンの話を聞きながら、俺は女王から預かった鳥を見ていた。
鳥籠には、かわいそうだから入れていないそうで、たまに姿を見なくなったなと思ったらまた自分で帰ってくるらしい。
「アオ様の色に似ていますね」
鳥を見ていた俺に気づいたルディが言った。
「そうだな、だから女王もとても大切にしてたんだろう」
「それを何故、私達に預けたんでしょうね」
「それは分からん。でも、何かしら意味がありそうだな」
「意味…」
「この鳥を預けたのは、マリアーヌ女王陛下だ。何もないとは限らないだろ」
マリアーヌ女王陛下は、とても名の知れた人物だ。女王としての品格、資質共に幼少の頃からあったとか。25という若さで玉座に就いた時、それに納得いかない者達が反乱を起こしたが、それを見事に鎮め今日まで、様々な活動を行い今では美しき賢王とまで呼ばれている。
そんな人が、意味のない行動をするわけがない。自分の孫が拐われている、こんな時に。
「これからどうするの?」
「ジミーとリオンには、武器の調達を頼みたい」
「武器って持ってるじゃ…」
「ジミー違うぞ、力を込められるやつだ。スクリプト王国では出来なかっただろ?」
「あ~、俺達のボロボロだったね。分かった行ってくるよ」
「ルディは引き続きアイスプルフを調べてくれ」
「はい」
「あいつからも、何か情報が来るだろ」
「アンドリクス王子達ですね」
アンドリクス王子とは、協力してアオを助けることを約束し、何か分かったらすぐに手紙をくれることになっている。
「それじゃ、皆、頼んだ」
「はい!」
それぞれが、アオの為に再び動き出した。
その様子を、静かに銀色の鳥が見つめていた。
まだアオ以外の視点が続きます。