怒り
明日は投稿出来そうにないので、本日2話投稿しました。
「アオ、遅くないか?」
「そうですね、リーンも何も言ってこないですし…」
「迎えに行った方がいいかな?」
「アオはいつもこんな感じなのか?」
「いや、いつもならもう…」
「大変です!」
いつもなら、とっくに来ていてもおかしくはないアオが来ないという話題が出た時、リーンが慌てたようにやって来た。
普段のリーンなら考えられない…何かあったか?
「アオ様が拐われました!」
「何!」
「拐った奴を見たか?」
「申し訳ありません、部屋に何か焚かれていたようで私も気を失ってしまって」
「すると、結構時間が経ってますね」
「ひとまず、アオの部屋に案内を。ルディはスクリプト国王に報告を」
城の中に紛れ込んだのか?
スクリプト王国は、太陽の姫、月の姫以外にも凄腕の騎士団が有名な国だ。城にはその騎士達が多く配置されていて、夜間にもちゃんと騎士が巡回していたりする為、容易く入り込めるはずがないんだが…。
「ここです」
アオの部屋に入ると、確かに少しだけその匂いが残っているようだ。
「この匂い…。なんだか、酒で酔った時のような感じになりますね」
「今は、アオとリーンが気を失った時よりも匂いは薄くなっているはずだが…。相当、濃く焚かれてたんだな」
リオンのいう通り、なんとなくふわふわするな。
しかし、どうやって…。
「ルーカス王子!牢にいたアオ様の物を盗んでいた奴もいなくなっているようです!」
「と、すると。やはり、そいつが関わってるな」
「その犯人は、自分の姿を見えなくすることが出来るようでした。それに、壁とかもすり抜けることが出来るとか」
「だと、したらもうスクリプト王国からは出てるかもしれないな」
「国王様は、すぐに国境で検問を行うと言っていました」
「そうか…」
対応が早いな、それにすぐにそんな判断ができる辺りが、さすがだな。
「ルディ、すぐに奴の国のことを調べろ」
「アイスプルフですか?」
「国の事情が分かれば、なぜアオを拐ったかも分かるだろ。アオは月の姫だ、利用価値は他の国の姫よりもあるからな、何かに利用される可能性が高い」
「分かりました」
「僕達も行くよ」
ルディの後に続き、ジミーとリオンも部屋を出ていった。
「俺も俺で、情報を集めよう」
「……傭兵達の情報網だな」
「さすが、あいつらの情報網は侮れないからな」
「頼んだ、俺は国王のところに行ってくる」
「……」
「…なんだ?」
「いや…。お前、本当にアオのことが好きなんだろ?よく落ち着いてられるな」
そうか、他の奴には俺は落ち着いて見えるか…。
「そんな訳ないだろ。犯人を見つけたら、死んだ方がましだと思うぐらいの、生き地獄を味わってもらうさ」
「……そうかい、なら早く捕まえないとな」
「あぁ…」
アンドリクス王子に返事をして、リーンと共に部屋を出た。アンドリクス王子も、傭兵上がりの奴らのところへ向かう。
平気な訳がない。好きな女を拐われて、落ち着いてられる奴がいたらみてみたいな。だが、俺が感情的になってアオが戻ってくる訳でもない。ならば、俺がやるべきことはアオを早く見つけ犯人を捕まえることだ…。
リーンがこの時の俺のことを、本当に全身から怒りの炎が出ているかのようだったと、語ったそうだ。