異変
私は、シスターが呼びに来るまで子供達と遊んだ。その後、お昼を子供達と食べてから私達は帰ることにした。
外から戻って来た時、なんだかルーカス王子の様子がおかしかったけど、それを指摘しようとしたらジミーくんに“ほっとけば大丈夫だよ”と言われ、結局なんだったのか分からずじまいだった。
「今日は本当にありがとうございました。子供達もとても喜んでいました」
「こちらこそ、急にすみませんでした」
孤児院の門の前で、シスターに見送られて私達は城に帰った。実は、子供達も見送ろうとしてくれてたんだけど、勉強の時間だからとシスターに止められた。
帰りは馬車にしてもらって、私とルーカス王子、ルディさんが乗っている。アンドリクス王子は、もう少し街を見ていくと言って、市場の方に行ってしまった。
「アオ様は、いつもこうやって孤児院などに行ったりしてるんですか?」
「そうですね、だいたいは一人でしたけど」
「それは、危なくないか?」
「この辺りの国に、好き好んで私を襲おうとする人はいないよ」
「あ、そうか!依頼でいつも助けられてるからか」
「そ、だから大丈夫」
この国に来てから、街とかに普通に一人で出ても襲われたことなんて全くないからね。
まだ、こっちに来て日が浅かった頃に一回だけ襲撃されたけど、思いっきり返り討ちにしたらそれから来なくなったんだよね。
「……アオ様、一度はあるのでは?」
あれ?顔に出てたかな?ルディさん、本当に油断ならないな…。
「あるのか?」
「まぁ、一回だけですよ?で、返り討ちにしたらもう来なくなりましたし、大丈夫ですよ」
私がそう言うと、二人してため息をついていた。
なんだろう、ルディさんの私が思ってることを当てる確率が、凄く高くなってきてる。
「シスターが心配していたぞ、お前が無茶なことばかりしてるんじゃないかとな」
「え!そうなんですか?」
心配かけてたのか…。全く気づかなかったな。
昔から、あの孤児院に行くと色々ともらったりすることが多かったけど。本当は、私がもっとあげないといけないと思うんだけど、今回もお返しにシスター特製のパイをもらってるし。
「心配をかけたくないなら、無茶なことをするのを止めるんだな」
「分かってるよ、でも、身体が勝手にね」
「勝手にね、じゃない。ナタリーヌ姫が他国に嫁ぐんだ、この国の新たな女王になるかもしれないお前は、結構危ない立場だぞ?」
そうなんだよね…。私のお披露目が正式に終わり、婚約者が決まればナタリーは隣国に嫁いでしまう。そして私は、次期女王になることが決まっている。
最初は、ナタリーの婚約者がなるはずだったけど、あっちの後継者になるはずだった婚約者のお兄さんが駆け落ち同然で出ていってしまって、あっちの跡継ぎがいなくなったから、ナタリーがあっちに行くことになった。
それで、私が継ぐってなったんだけど。私は、こことは別の世界のお母さんの子供、それでもいいのかお父さんに聞いたら、全然問題はないと言われた。“これまでの、アオの活躍なら誰も文句は言わないよ。もし、言ってる奴がいるなら黙らせるから、大丈夫だよ”て言われ、最後らへんの言葉はスルーして、なら大丈夫かと女王になることを決めた。
だから最近は、婚約者を決めるのと同時進行でこの国のことをまた、勉強し直している。
国の情勢って結構変わるもんなんだと、思いながらいつも勉強してる。
「狙われる頻度は上がるのでは?」
「いや、逆に縁談がさらに来てるらしいよ。お父さんが大変だって言って、いつもご飯の時言ってるし」
「あぁ、倒せないのならば味方に…。といった感じか」
「だと思う。最近は贈り物も多いし」
「そうか…。まぁ、何かあれば言え。しばらくは、ここにいるからな」
「ありがとう」
しばらくして、城に帰った私達はそれぞれ部屋に戻った。
リーンさんに、孤児院での話をしながら部屋へ帰り、身に付けていた装飾品やらを外して夕食用に着替えようと思った時、私は違和感を覚えた。
「リーンさん、ここにあったアクアマリンの指輪知りませんか?」
「え?」
私の呼び掛けに、リーンさんが夕食用のドレスを手にして私のところへ来て、おかしいですね、と言った。
「アオ様が孤児院に行く際の着替えをして、アオ様が出掛けてから確認したときは、確かにあったのですが…」
「誰かが、ここに来ましたかね…」
「ですが、結界が…」
「あれは、私がこの部屋にいるときにだけ発動するようになってるんです」
私がいないときは、特に必要ないだろうと思ってたんだけど…。これまで物がなくなるなんてなかったしね。
「どうしますか?」
「とりあえず、私達だけの秘密で様子を見ましょう。何度か続くようなら、また考えます」
「分かりました」
それにしても、よく私の部屋に来れたな。
一応、結界を張ってから夕食に行くことにした。