縁談の申し込み者達4
次の曲が始まり、私もアンドリクス王子も踊り始める。
「あんた、月の女神と瓜二つだな。瞳の色は違うみたいだが」
「そうですね、アンドリクス王子は月の女神のことよくご存じなんですか?」
「スフィーリア王国は、月の姫に救われたことがあるからな」
「そうなんですか?」
「俺がまだ生まれる前のことらしいけどな、それ以来うちは月の姫贔屓になってる」
そうだったんだ…。スフィーリア王国か、私は行ったことないけど…。
少し、記憶を探ってみる。
すると、アンドリクス王子に似た人が頭を抱えているのが視えてきた。
“陛下、このままでは国が滅んでしまいます!”
“分かっている、しかし、兄さんがこっちに送った間者が多すぎるんだ”
「謀反?」
「っ!知ってるのか?」
「いや、実際に私が体験したことではないですけど…。月の姫は、歴代の月の姫の記憶を受け継ぐので、もしかしたらと思ってちょっと探ってみたら、アンドリクス王子によく似た人がいて」
「あぁ、それは多分俺のじいさんだな。俺とじいさんは、よく似てるらしいから」
「通りで、よく似てるな~と思いました」
私が言うと、アンドリクス王子は何故か吹き出して笑い出した。
そんな変なこと言ったかな?
私がそう思ったのが分かったのか、アンドリクス王子は違うと言ってきた。
「あんた、正直すぎる。顔にも、どう思ってるかすぐに出てたし」
「え!私、そんなに出てましたか?」
「もろにな」
と言いまだ笑っている。案外、笑い上戸なのかな?
「笑い過ぎですよ!アンドリクス王子!」
「アンドリューでいい、アンドリクスなんて言いにくいだろ」
「まぁ、そうですけど…。本当にいいんですか?」
「あぁ、あんた面白いしな。敬語もいらないからな」
「分かった、アンドリュー」
「おぅ、俺もアオって呼ばせてもらう。しばらくここに滞在するからよろしくな」
と、ここで曲が終わった。その後、またなと言ってアンドリューはどこかへ行った。
不思議な人だったな。
アンドリューと踊ってから、他にも何人かと踊って席に戻る。
「アオ、お帰り」
「はぁ~やっぱりダンスは疲れるね」
「面白い人いた?」
「挨拶に来てた、スフィーリア王国の王子が面白かったよ。昔、スフィーリア王国を月の姫が救ってから、月の姫を特別に見てるみたいだよ」
「そうなんだ」
「スフィーリア王国と言えば、今の王様がお祭り好きで有名ね」
ソフィー様が、果実酒を飲みながら言ってきた。
それにしても、お祭り好きか…。
「アンドリクス王子からは考えられないよね?」
先にナタリーに言われてしまった。
「アンドリクス王子は、お祭りの時は自分が所属している警備団の仕事をしているみたいね。アンドリクス王子は、次男だしスフィーリア国王は自主性を重んじる方だから、自由にさせているのかもしれないわね」
「お母様、やけに詳しくありませんか?」
確かに、スフィーリア王国って結構遠い国だけど…。
私とナタリーが、ソフィー様からの返答を待っていると、ソフィー様はお母さんと顔を合わせて笑い始めた。その間に挟まれているお父さんは、苦笑いだ。
何かあったのかな?
「実はね、スフィーリア王国の今の国王様がまだ王子だったころ、私に求婚してたのよ」
「えぇ!」
「本当なの?お母様!」
私達二人が驚いていると、ソフィー様は笑いながら頷いた。
その息子が、またスクリプト王国に来てるっていうのも凄いな。
「懐かしいわね、スフィーリア王国はとにかく派手な国でね国民も凄く明るくて、面倒見がいい人が多い印象だわ」
「へぇ~行ってみたいね、アオ」
「そうだね」
次に会うときが楽しみだな。
そんな感じで、話は盛り上がりパーティーも大成功に終わった。