縁談
「お帰り~アオ!」
「お母さん、ただいま!」
ここまで乗っていた馬車から、勢いよく飛び出して出迎えに来ていたお母さんに抱きついた。
「大変だったみたいね、アオ。久しぶりにその姿が見れて嬉しいわ」
「ただいま帰りました、ソフィーヌ様」
「お帰り、アオ。お疲れ様」
「ただいま、お父さん」
それから、ひとまず夕食まではゆっくりしていて構わない、と言われたので部屋で休むことにした。
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「アオ、アオ。夕食の時間だって」
「ん~…。結構寝てたんだね……」
「疲れてるんじゃない?夕食止めておく?」
「ううん、大丈夫。逆に眠れてスッキリしたよ、行こうか」
「その前に、少し髪の毛とか直してから行こう」
ナタリーに簡単に髪を結ってもらって、ドレスも少し直してから部屋を出て、お父さん達が待つ食堂へ向かった。
久しぶりに、家族全員が揃う食卓はやっぱり楽しい。話題も尽きることなく出てきて、それが落ち着いたのは食後のお茶が出た時だった。
「本当に色々あったのね~」
「大変だったけど、楽しかったよ。お祖母ちゃんにも会えたし」
「あぁ、そうだったわね。お母様は、お元気だった?」
「とても、変わらずお綺麗でしたし」
「それはよかったわ」
私達がにこやかに話をしている間、お父さんの雰囲気がおかしいことに気付いた。
「お父さん、どうかしたの?」
「ん?あぁ……」
「ジョシュ?」
「何かあったの?」
お母さん達が聞いても、難しい顔をしたまま何も喋らないお父さんに、しびれを切らしたのはお母さんだった。
「ちょっと!せっかくアオが帰ってきたのに、何、難しい顔してるの?何かあったのなら、はっきり言って!」
「わ、分かった!言うから落ち着け!」
今にもお父さんの胸ぐらを掴みかかりそうなお母さんを、なんとか宥めてお父さんが口を割る。
「実は、アオがジョイール王国の夜会に出てから縁談の話が凄くてな…」
「ジョシュは大変だけど、アオには良いことよね?」
「そう、そうなんだがな…。なにせ数が凄くてな…」
「やっぱり、アオ大人気だね」
ナタリーが無邪気に笑って言ってくる。それを聞いて、ナタリーに笑顔を返しながらも何となく嫌な感じがする。
「それでだ、今度のアオのお披露目会から本格的に相手を探そうと思ってる」
「まぁ、こちらではアオの年からだと遅いくらいだものね」
「で、アオには一人一人と面談をしてもらおうと思っている」
「面談?」
「一対一で?」
「いや、なん組かに分かて会ってもらいアオの印象に残った者だけ、一対一で会うようにする」
なるほど…。どれくらい来てるのか知らないけど、結構多いのかな?それなら、色々な人に会えるからね。
「アオ、いいか?」
「大丈夫だよ、お披露目まではまだ日があるし。それまでには、片付けは落ち着くから」
「じゃあ、さっそく仕立て屋さんを呼ばないとね」
「明日から忙しくなるわね、ソフィー」
「絶対にいい方を見つけましょう」
当事者である私よりも、気合いの入ったお母さん達にほどほどにね、と伝えてまだ疲れが残っているだろうと、お父さんに言われて早めに休ませてもらった。
なかなか投稿出来ず、すみません。ここまで読んでくださっている方、ブクマ、評価をしていただいている方、本当にありがとうございます!