お披露目!2
私達が会場へ入ると、やはり会場のほとんどの人の視線が私に集まっているのが分かった。
「なんか、予想より人が多い気がするんだけど…」
「それはそうだろう。今回のパーティーに、今まで全く出てこなかった月の姫が来るって情報があちこちでされてたからな。それで、参加人数が増えて対応するのが大変だったぞ」
「私もやりたくてやってるわけじゃないんだけど」
ルーカス王子と少し話ながら国王様の元へ行く。
「本当に月のように美しい」
「あぁ、銀色の髪に菫色の瞳。ほんとに神秘的だ」
「ルーカス王子とは婚約をしていない、ということでしたけど…」
「そうなんですの?でも、とてもお似合いですのに」
「素敵よね、お二人とも」
国王様の元に着き、淑女の礼をとり国王様に挨拶をする。
「この度は、お招き頂きありがとうございます」
「アオ姫、今回のことでは本当にお世話になりました。ぜひ楽しんでいって下さい」
「はい、ありがとうございます。それから…」
私が斜め後ろに視線を送ると、先に挨拶を終えていたナタリーが私の隣に立った。
「私達二人から、国王様に祝いに一つ贈り物を」
「おぉ!それは、ありがとうございます」
「では…。ナタリー」
「うん」
二人で掌を合わせてから、それを勢いよく空中て離すと、その瞬間天井の方から色々な花や花びらそして、光の粒が降り注ぐ。
「まぁ、綺麗!」
「凄い!下に落ちる前に消えていく」
「「これからのジョイール王国の繁栄と、国王様のご健康を祈って私達からの、祝いの品とさせて頂きます」」
「美しい贈り物をありがとうございます。ナタリーヌ姫、アオ姫」
私達はもう一度礼をして、国王様の元から離れた。
今回のパーティーは、立食形式で中央がダンスフロアになっている。
私達は、ルーカス王子達がいるテーブルに向かった。
「なかなかの余興だったんじゃないか」
「ありがとう」
その後、国王様と王妃様がファーストダンスをして自由に交流する時間になった。
私はこのままルーカス王子達と話していたかったけど、そうもいかない。このパーティーでの私の行動が、そのまま私の評価に繋がるから。
ルーカス王子達が離れていき、私とナタリーだけになると話をかけに来る人が多くなった。
「初めまして、太陽の姫に月の姫。ナタリーヌ姫には会ったことがありますが、アオ姫には会ったことがありませんでしたね」
「ごきげんよう、ユーリス様。アオは、月の姫への依頼でこの国に滞在していて、少し早いお披露目というところです」
「それは、私は運が良かったみたいですね。普段はあまり出席しないのですが、こんなに美しい女性に会えてとても光栄です」
ユーリス…。確か、次期辺境伯だ。でも、女遊びが激しくて、今の当主であるこの人の父親は手を焼いてるとか…。
「初めまして、ユーリス様。これからは、私もこういう社交の場に多く出席しますので、よろしくお願いしますね」
「こちらこそ」
確か、この前二人の女性を妊娠させたとかで自宅謹慎になってたはずだけど。
そんな風に考えていると、ユーリス様が近づいてきて耳元で。
「えぇ、“色々と”教えて差し上げますよ」
あぁ、そういうことか…。
「ユーリス様、今は自宅謹慎のはずでは?」
「なぜそれを!?」
「私、言いましたよね?“女性を大事に出来ないのなら、貴方にもそれ相応の罰を受ける”と」
「お、お前、まさか!」
「月の女神は夜を司る。その血を受け継ぐ月の姫もまた同じ、夜に起こったことは全て知っていますよ。貴方が、もう一人妊娠させたことも」
「なっ!」
「悠長にパーティーに参加してていいんですか?」
「くそっ!」
ユーリス様は、走って会場から飛び出していった。