今後について2
皆が中庭に出て、ささやかな昼食会が始まる。
リーンさんと他の侍女さん達が、次々に料理を運びテーブルに並べていく。
「本当に気持ちいいね~」
「いい天気だよね~、眠くなってくるよ…」
「アオ!寝ちゃダメだよ、今からご飯だから」
「相当疲れたんだな」
昨日は、ロランとの戦いだったし今日は着せ替え人形だったし…。正直、今すぐにでも夢の中に旅立っていけそうだよ…。
「さ、準備が出来ましたからどうぞ!」
「それじゃ、アオが寝る前に。いただきます」
ルーカス王子の後に続いて、それぞれいただきますをして食べ始めた。
「こっちの料理も美味しいけど、そろそろスクリプト王国の料理も恋しくなってきたな」
「そんなで、結婚してから大丈夫なの?」
「うっ!ちゃんとそれまでには対策を練るよ」
「ま、ナタリーの婚約者ならナタリーの為なら、色々してくれそうだもんね」
「えへへ」
やっぱり恋してる女の子は、綺麗だよね~。
ナタリーも、恥ずかしそうに照れ笑いしてるのが本当に可愛いし。
いつか、私にもそんな風に想い合える人に出会うことができるかな?
そんな、羨望の眼差しでナタリーを見ていた私に、ジミーくんが声をかける。
「ところで、ナタリーヌ姫が恋愛結婚なのはほとんどの国の人が知ってるけど、縁談とか見合いとかそれまでなかったの?」
「あったんですよ、たーくさん!」
「やっぱり、そうだろうな。スクリプト王国は小国とはいえ、資源に恵まれているし太陽の女神と月の女神の血を受け継ぐ王族がいる国となると、どうにかして姻戚関係を持ちたいと考える者達は多いだろうしな」
「ま、月の姫については忘れられつつありましたけどね」
私が不貞腐れたように言うと、ルーカス王子達は痛いところを突かれたような、複雑な表情をしていた。
「あれは、俺達が悪かった。しかし、太陽の姫はちゃんと現れるのに、月の姫はたまにしか産まれないんだ?」
「あぁ、それは力が大きすぎるからだよ。太陽の姫がちゃんとサポートできる器を持っていないと、月の姫は産まれないの。私達も、どういうことかよく分からないけどね」
「そうなのか…」
「そういえば、アオ様はこちらの世界で正式にお披露目パーティーをしていないですよね?」
ルディさんに言われ、そういえばこっちに帰ってきてからすぐにここに来たからしてないな。
スクリプト王国に近い国なら、仕事では顔出しもしてるけど。
「確かにそうだな…。お父さんのことだから、なんか考えていそうだけど」
「たぶん帰ったら忙しくなるんじゃない?お披露目したら、アオへの縁談話が凄い量になりそう」
確かに、私と結婚すればもれなく月の姫の力が手に入るしから、相手にとってのメリットは多いよね。
「……おい、アオ。お前が持ってる力もだがな、お前自身にも興味を持って縁談話を持ってくる奴もいるぞ」
「勝手に人の思考を読まないで、そんな人いるかな?」
私がそう言うと、私以外のその場にいた皆がため息をついた。
「ナタリーヌ姫、アオは昔からこうなのか?」
「まぁ、そうですね。異世界にいた時は、黒髪黒目で地味に過ごしていたらしいですし、たまにこっちに来て仕事をしてる時も、今回みたいに綺麗に色が戻ることは無かったですから…」
「なんか、アオ様って色々もったいないよね」
「え?」
もったいない…のかな?
「皆さん、おしゃべりもいいですけど食事もして下さいね」
リーンさんに促され、皆食事を再開する。
私は複雑な気持ちで、食事をしてその後食後のお茶もいただいて、解散になった。
私とナタリーも、それぞれの部屋に戻り休むことにした。これは、私が本当に限界だったからだ。
フラフラしながらも、リーンさんに時折背中を叩いてもらいながら部屋にたどり着き、ベッドにダイブしてそのまま眠りについた。