第6話「幼女とランチしてみる」
第6話「幼女とランチしてみる」
ボスの少女だけを残して衛兵たちが強盗を連行していく。
彼らの背中に、俺はボスの少女を指さして声を上げた。
「あ、この子が主犯ですよ」
「「「えっ」」」
衛兵たちの視線が少女に集まる。
「はい。オレがやりました……」
ボスの少女も捕まった。
俺はギルドから謝礼金をたんまりもらった。
~
「……意外だったわ」
「んぐんぐ。ぷはー! ん? なにが?」
俺とリタは大通りの飯屋にやってきていた。
ギルドからもらった謝礼金で、豪華な昼食としゃれ込んだわけだ。
この、シュワシュワする不思議な飲み物ってなんていうんだろ?
「てっきり、あの女をハーレム要員にすると言い出すかと思ったのだけれど」
俺はジョッキをテーブルに戻して、質問をしたリタを見る。
「おいおい、なに言ってんだ?」
リタはきょとんとして、幼女特有の、あどけない表情を向けてくる。
俺はニヤリと口の端をつり上げてみせた。
「するよ?」
「え?」
「ハーレム要員に、するよ?」
当たり前じゃないか。
「え、でも、だって」
「あんなに可愛い娘だからなー。当然だろ? 胸も大きいし」
うんうん、と俺は腕を組んでうなずいた。
あれはいいものだぁ……
なんといっても幼女にはないものである。
「くっ」
「頑張れー。ほい」
俺は幼女の前に牛乳(かどうかはわからないが、なにかの乳だ、たぶん)の注がれたコップを差し出した。
リタは俺からコップを受け取った。
小さな手でコップを両側から持って、あおる。
んくんく。
喉が動いていた。
「けぷ……でも、それならどうして、彼女を衛兵に突きだしたりしたの?」
「なんだ。そのことか」
「あの場で1人になった彼女を引き入れるのは難しくなかったと思うわ」
「まあな」
仲間を失い、行き場をなくしていた。
ハーレムに勧誘するには絶好のチャンスだったわけだ。
でも、それではいけない。
「だって、わるいことをしたんだ。ちゃんと償わなきゃな」
リタの場合とは違う。
この世界の常識がどうなっているのかは知らないが、俺は俺の常識で考えるだけだ。
リタは驚いたように目を大きく開けていた。
俺は続ける。
「あのコは未遂だとはいえ強盗を働いたんだ。そのことには、ちゃんと罰を受けないとならない。それに――」
「それに?」
「仲間が捕まって自分だけ助かるなんて、あのコの負い目になるだけだろ」
「……そう」
リタは目を細めた。
長いまつげを震わせて嬉しそうに微笑む。
「わたしのご主人様は、ずいぶん優しい方なのね」
「うっ」
やはりこの幼女、ポテンシャル高いんだよなー。
うっかり惚れそうになっちゃう……
俺は立ち上がった。
「じゃ、飯も食ったし。ハーレム要員をゲットしに行くか。あのコを迎えに行くぞ!」
「え? でも彼女は捕まって……」
「ふっふっふ。金ならあるんだ。もらった金が。だから、こいつを保釈金にする! 助けられた彼女はきっと俺に従順だぞ?」
「…………」
「さあ、巨乳美少女ゲットだぜ!」
「…………」
拳を天井に突き上げた俺を、リタがジトっとした目で見ていた。
先ほどまでは俺を見てキラキラしていた幼女の瞳が、今はどんよりと曇っている。
わお、いいね! ゾクゾクしちゃううう!
俺たちは衛兵の詰め所へと向かった。
強盗たちが捕らえられているはずだ。