第4話 『冒険者ギルド強盗』をやっつけてみる。
第4話 『冒険者ギルド強盗』をやっつけてみる。
「冒険者ギルド強盗? なんだそれ?」
「そのままの意味よ。冒険者ギルドを狙った強盗」
「……まあそうなんだろうけどさ~」
たしかにギルドの内装を銀行みたいだとは思った。
思ったが、だからって銀行と同じノリで強盗がいるというのは……
「こういうことって、よくあることなのか?」
「ええ。よくあるわ」
「だよな~。……え? よくあるの?」
だって、冒険者ギルドだ。
冒険者たちが常駐はしてないまでも、頻繁に出入りしているはずである。
警察署に押し入るようなものだろう。
たぶん。
リタがため息をついた。
彼女も俺と同じ思いのようだった。
「ここの金庫には、クエストの報酬のためにまとまった額があるはずだから、それを狙ってのことなのでしょうけどね」
「ふむ。よっぽどの考えなしのバカなのか。よっぽど腕に自信があるんだろうな」
「両方ではないかしら」
「なるほどな~」
と。
「おいおいおい! テメェら! なに呑気に会話してやがんだ! ああ!?」
冒険者ギルド強盗の1人が俺たちに詰め寄ってきた。
袖を破った上着を来た、いかにもチンピラ風な男である。
手にした分厚いナイフに光をギラギラと反射させていた。
俺はヒラヒラと手を振った。
「あ、お構いなく~」
「おう! わかったぜ! ――ってなんでだよ!?」
俺の巧みな話術で一度は持ち場に戻りかけたソイツだったが、くるっときびすを返すとビシッとツッコミを入れてきた。
大阪人なのかな?
「……うーん。あんまりやる気、出ないんだよなぁ」
「ハぁ? テメェ、なに言ってんだあ?」
「美人のお姉さんいないしさぁ……」
俺はカウンターで刃物を突きつけられているオッサンを見て、がっくりと肩を落とした。
「なんで美人のクエストお姉さんじゃないんだよ……」
「残念でしたね。ご主人様?」
「なんでお前はちょっと嬉しそうなの?」
リタを見る。
ふいっとそっぽを向かれた。
なんなの? このかわいい幼女。
俺が幼女に興味ないのが悔やまれるところだ。
宝の持ち腐れってやつだろう。
「おいテメェら! いい加減に――」
額に青筋を浮かべたチンピラの言葉が途中で止まった。
なんてことはない。
俺が強くにらみつけたからだった。
それだけでチンピラ男は硬直し、ガクガクと震えだした。
腰を抜かしてへたり込み、失禁する。
泡を吹いて気絶した。
「……あれ? もう終わり?」
その反応に俺自身が驚いていた。
まあ面倒がなくてよかったけど――と。
「ガハハハ! ガハハハ! 良い! 感じるぜぇ! 強いヤツの気配がするッ!」
野太い声は、ギルドの二階――天井から聞こえてきた。
次の瞬間。
天井が割れて、上半身裸で筋骨隆々な巨漢が俺の頭上に降ってきた。
だが、普通の物語なら奇襲に驚く場面なのだろうが、俺は冷静だった。
落下しながら巨漢の振り下ろしてきた棍棒を片手で止めて軌道をズラすと、床に軽く叩きつけた。
巨漢は動かなくなった。