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メカニカルマジック  作者: カップヤキ
第一章:イロードパンデミック
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一握りの希望からの快進撃

コータが地下に落ちた後地上には二機のロボットが残っている、その二機は今は動きを止めている。

それはつまり地上で戦っていた講師たちは全滅してしまっているという事実をしめしているのだ。

その二機は通信回線を開き連絡を取っている。

「駆除も終わったことだしそろそろ回収地点へ向かうわよ。」

そういったのは後から降ってきたロボットに乗っている人間である、どうやら女性のようだ。

「そうか、もうそんなに時間がたっていたか。お前は先に向かっていろ、俺は後から行く。」

「どうした、何か問題が起きたのか?」

「ああ、ちょっとな。」

そういって視線を校舎のほうへ向ける、モニターの隅には校舎の中を走る人影が二つチラリと映る。

女のほうは男が何をしたいのか察するとため息をつく。

「わかった、私は先に行かせてもらうぞ。」

そう言いと女の乗っているロボットは学園を後にする、学園に背を向けて移動するさなか一言だけ言い残す。

「ほどほどにな。」

男はそれに無言でゆがんだ笑顔で答える。



ほぼ無人となった校舎の中を走る二つの影、それは書記のエリスを探していた生徒会長のリオンと副会長のミリアの二人だった。二人はコータ達と別れた後もずっと校舎内を走り回ってエリスを探していたのだ。

だが当の本人であるエリスは地下の部屋にいたので見つかっていない、二人は学園の地下にある部屋を知らないのだからしかたがない。

「まったくあの子は一体どこに消えたのかしら。」

「もしかしたらもう既に一人で避難したのかもしれないな、あの子はああ見えて抜け目ないからな。」

「そう...かもね。」

そういいながらもミリアは不安感をぬぐえない。

そんな時リオンは背後の窓の外から異様な気配を察知する、リオンは電気系統の魔法を得意としており周囲に日常では発生しえない異常な電圧を感じたのである。

リオンはそのまま後ろを振り返ることなく前にいたミリアの体をひっつかみ横に跳ぶ、そのすぐ後には青白く光る巨大な刃が突き刺さる。少しでもリオンが気づくのが遅かったらアウトだったであろう、二人はぎりぎりでかわしその光景をみると戦おうとせずに逃げることを選択する。


「っち! すばっしっこい害虫だ。」

二人を外から串刺しにしようとした男は舌打ちをして二人をモニター越しに追跡する、リオンたちは校舎の中を上へ上へと逃げる。逃げている間も男が乗るロボットから無慈悲な攻撃が繰り出されるがそれをぎりぎりで回避していく、だがその途中でミリアは足をくじいてしまう。

リオンは足をくじいてしまったミリアを背中に担ぎ走り出す、そして二人は屋上まで追い詰められてしまった。


「くっ、もう逃げ場がないか。」

「まだ...まだ何かあるはずですわ!」

そういってあたりを見渡すが屋上にはさっき昇ってきた階段以外には周りを囲むフェンスぐらいしかみあたらない。

(仕方ないがまた階段下りて校舎内にもどるか?)

リオンがそう考えていると下へ降りる階段がある場所はロボットの右腕に刃によって切り裂かれ崩れ落ちる、完全に逃げ場を失ってしまったのだ。


「みーつけたー! もう逃げ場はないぞ、害虫。」

男の乗るロボットの左腕を二人にしっかり向けて狙う、屋上のように障害物も何もない場所では隠れることも避けることも難しいだろう。

(くそっ!もう駄目なのか...)

手も足も出ない状態に歯を食いしばりながら正面のロボットをにらみつける。

「終わりだ、死ね害虫。」

男が二人を打ち抜こうとしたその時ロボットの横の地面のほうがキラリと光る、その瞬間ロボットの左腕の銃の先端あたりに爆発が起こりその反動で射線がぶれる。爆発のおかげでロボットの射撃は逸れ、二人には当たらなく明後日のほうへ飛んでいく。

「なっ!いったいなんだ。何が起きたんだ!」

そういって男は怒りに顔をゆがませながら先ほどキラリと光った方へ視線を向ける、モニターに映し出されたのは奇妙な銃のようにも剣のようにも見える武器を持った青年が一人。

「こいつかあぁー!俺様をコケにするのもいい加減にしろーっ!」

そういって激高する男の頭からは完全に屋上にいる二人の事は抜けていた。



コータがエリスから託されたアーティファクトの説明を受けて地上に上がった、その時ちょうど屋上に向けて左腕の銃を向けるロボットをみつけた。

何を狙っているのかは下から確認することはできないが、コータは阻止するためにアーティファクトをロボットの銃に向けて撃ったのだ。とっさの事だったのであまり狙えていなかったが偶然にも銃身の先端にかすり、射線をそらすことに成功したのだ。

コータの持つアーティファクトは実弾を発射するのではなく、持ち主の魔力を消費して魔法を打ち出すという画期的なものだ。つまり持ち主の魔力が枯渇しない限り玉は無限にあることになる、しかも打ち出す魔法はアーティファクトに記憶されている魔法ならなんでも自由に使えるのである。


「クソ虫が!」

男は右腕の刃をコータに向けて振るう、コータは魔法で足を強化し跳躍してこれを避ける。そのまま走りながらも男の乗るロボットにめけ魔法を打ち出すが、走りながらなうえにコータ自身がまだ扱いなれていないせいもあり一つも当たることはなかった。

「下手くそめ、これならどうだ!」

ロボットは足を振り上げそのまま思い切り地面へ振り下ろす、グラウンドの土が舞い上がりロボットの足もとは土埃で何も見えなくなる。

(こいつ馬鹿なのか、そんなことをすればそちらからも俺の居場所がわからないだろうに。)

コータがそう思うように男は土埃でコータを見失っていた、だが男は全くそれを気にすることなくロボットを操作し土埃に向けて横から薙ぎ払う。

「地を這う虫にはよけれまい!」

土埃により視界が悪い中コータは横が光り輝くのを見てとっさに上へと跳躍する。

(なるほど、そういうことか!)

土埃は横なぎされたことにより吹き飛び、上に跳んで避けたコータの姿が捉えられる。

「上に跳んではよけれまい、チェックメイトだ害虫!」

男の操るロボットは空いている左腕の銃を上に跳んで無防備なコータに向ける、コータは浮いているので避けることはできない。


だがコータは避けた、空中でさらに銃の上に向かって跳躍したのだ。

「馬鹿なっ! ありえない!」

男は慌てて薙ぎ払った右腕を引き戻すが間に合わない、コータはそのままロボットの左肩にとりつきアーティファクトの刃を魔法で強化し肩の装甲へと突き立てる。

強化された刃は装甲を貫通し突き刺さり、コータはそのまま魔法を装甲内に打ち出す。

「こすれば絶対に外さないだろ、食らいやがれ!」

左肩の装甲内で爆発が起こり、前に構えられていた左腕は糸が切れたように下がり動かなくなる。

コータは爆発の反動で突き刺していた刃が抜けて吹き飛ぶ、そのまま空中で体勢を立て直し再び足を強化し勢いを殺しながらなんとか着地する。


これで男の乗るロボットの左腕は機能停止したので、残る脅威は右腕の刃と四本の脚であろう。

「さてここからどうしたもんか。」

そういってコータはアーティファクトを構える、一方ロボットの中では男が驚きや怒りなどの感情で取り乱していた。


「こんなことありえない! 私が害虫ごときに翻弄されるなんて!」

男は取り乱しながらもロボットを操作し残る右腕でコータに襲い掛かる、コータはそれをかわし走り避けながらアーティファクトから魔法を打ち出す。

コータの打ち出した魔法はほとんど当たることなくよくてかする程度、だがそれでも男への精神的なダメージを与えていた。

「ちょこまかと、チクチクとうっとうしいんだよ!」

そういって男はコータを踏みつけようと足を動かす。

(うお、あぶねぇ...。 単純ながら踏み付けは脅威だな、それに土埃で視界も悪くなるし。)

(ん?待てよ足もと...そうか!いけるかもしれない。)

コータは何か思いついたようで足に踏まれないよう気をつけながら四本の足の中央、ロボットの胴体の真下へと移動したのだ。

「クソ虫め、どこへ逃げた!」

(よっぱり、あのロボット足もとは見えても胴体の真下は見えないんだ。)

コータの予想通り男はコータの事を見失っている、仮に見つけていても真下にいるコータを攻撃するには足を動かし移動するしかない。胴体の真下は構造上足で踏むことはできない上に、右手の刃で切り裂こうとすれば自分の足を切り裂いてしまうのだ。

コータはそのままアーティファクトを真上に向けてロボットの胴体を狙う。

「これでおわりだ!」

そう叫びコータは胴体に向けて何度も魔法を打ち出す、コータの打ち出した魔法は装甲を貫通...いやすり抜けて内部に入り込みそこで発動した。

コータの持つアーティファクトは魔法を打ち出せるが実際は魔力の塊を打ち出し、それが打ち出す際に設定された距離まで届くと魔力は魔法へとかわり発動する。

そのために打ち出された魔力には魔力の尾がついており、それはアーティファクト本体までつながっている。魔力の導線を使った起爆といえよう、魔力自体は物質をすり抜けるのでたとえどんなに厚い装甲で身を固めても意味がないのだ。

コータが打ち出した魔法は内部で発動しロボットの胴体を破壊したのだ。

ロボットの胴体には動力源でもあるイロードリアクターが搭載されており、コータの攻撃はその厚い装甲に守られたイロードリアクターにも届いた。

その結果使われていたイロードにひびが入りそのまま砕け散る、すると動力源を失ったロボットは機能停止して動かなくなった。


「たおした...のか?」

コータは動かなくなったロボットの下で呆然としている、無理もないだろうあれほど絶望的な状況からの快進撃なのだから。



それゆえにコータは気づけなかった、コータが呆然としているなかロボットの胴体の一部が動き中にいた男が出てきたことに。







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