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お菓子を作る  作者: ニン
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夜のゼリー作り

 午後9時半。急にお菓子を作りたくなった。


 最近、嫌なことが続いている。長い付き合いだった人との別れ。自分の仕事への不満。趣味にも打ち込めない。気分はずっと晴れないままだ。こんな気分だから嫌なことが降りかかってくるのかもしれない。そういえば、ろくにご飯も食べていない。ここ1週間ほどは食欲もわかず、毎食おにぎり1個とお茶で済ませてしまっている。まったく気が滅入る。今朝は嫌な想像をしてしまった。自分の体内に時計があって、その秒針が長く突き抜けていて、私の臓器やら何やらを突き刺して回る、という馬鹿げたことである。よっぽど時間に追われているのか、知らず知らずのうちに何かに追い詰められているのか、私にも分からない。

 午後9時半。何か冷たいものを取り入れたくなった。冷たいお茶とか水ではなく、何か食べ物を食べたくなった。気持ちの変わらないうちに何か食べたい。すぐに作れるものって何なんだろう。正直なところ私は料理が不得手で、家庭科の調理実習で作ったものが一番真面目に作った料理、といえるほどであった。そんなことだから、冷蔵庫の中に今、私の欲を満たしてくれる物は無いし、料理に対する知恵だって無い。私は携帯で、簡単に作ることのできるお菓子を調べた。そこでご飯について調べなかったのは、夜遅いという理由のほかに嫌いになっていた、ということもあるのだろう。とにかく、私は調べた中からゼリーを選んだ。

 そんなわけで10分後、私は近所のスーパーへと向かった。スーパーには意外にも多くの人がいた。こんな時間だというのに小学生の子供を連れて歩いている母親がいる。カップルも多い。高齢者はあまりいないようだ。最近できたばかりだからか、閉店前だからか、賑わっている。それが少しありがたかった。私は飲み物が並んでいる棚に行き、リンゴジュースのペットボトルをかごに入れた。それからゼラチンと、なかなか見つからなかったがレモン汁もかごに入れた。セルフレジに並び、さっさと支払いをすませてスーパーを出る。誰と会話するでもなく、たった一人でこんな時間に外を歩くのは久しぶりのような気がする。右手にはスーパーの袋。左手は小銭入れをにぎってパーカーのポケットに手を突っ込んでいる。夜道にすれ違ったカップルを見て、1か月前は私の隣にも異性の人がいたことを思い出す。もしもどうして別れたのかと聞かれたら、私が別れたかったから、と答えると思うのに未だ彼のことを思い出してしまう。まだ付き合っていたら一緒にゼリーを作っていたのかな。夜道は危ないって言って材料を買いに行けなかったかもしれないな。そこまでイケメンじゃなかったかな。野良猫が鳴いた。私の代わりにニャーと高い声をあげてくれた。

 家に帰った私はすぐに作る準備をした。正直、見切り発車でゼリーを作ろうとして買い物に行ったから、なんの用意もしていなかった。お湯を沸かしている間にボールとコップを洗った。ボールにはリンゴジュースを入れて、別の容器にゼラチンを入れた。しばらくするとお湯が沸いたので、そこにお湯を加えてスプーンで混ぜた。それらをボールに入れて、さらによく混ぜて、2つのコップに流しいれた。りんごとか切ってゼリーにいれたら、もっとおいしくなるのかな。初めて作るし、今回はこれでいいか。そのままラップをして冷蔵庫で冷やした。

 固まるのを待っている間洗濯物を干していた。そろそろ30分がたつころ、ラジオからモーツァルトの曲が流れた。洗濯機が空になった。冷蔵庫からゼリーを取り出して食べてみた。「冷たい」と声を出す。私が作ったそれは、ゼリーというよりは寒天みたいだった。コップ1つ分が少し多かったのかもしれない。半分くらい食べたところでお腹が冷たくなってきた。体を震わせる。残り半分は明日のお昼に食べよう。

 モーツァルトを聞きながら明日の朝・昼ごはんのおにぎりをつくった。お弁当用のバックにおにぎりとゼリーのコップとスプーンを2つずつ入れる。ベランダの戸を少し開けると涼しい風が吹き抜けた。

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