心霊写真のでき方
バサバサという、鳥の羽ばたきに目を覚ます。
一瞬、自分の居る所を失念するが、緑の天井とそこから漏れる白い光線。そして茶色い、いや、こちらも緑の湿った床で、ようやく自分の居る所を思い出す。
いつから居たのかは忘れてしまった。
崖の下に横たわっていた体を起こし、森の中を見渡す。何の変哲もない、ただの森だ。
どうしてこんな所に?
思い出したのに、夢から覚める様に、忘れてしまった。
朝露に揺れる葉を踏み歩き、ふらふらと麓を目指す。
なぜ麓を目指す?
決まっている。下から来たからだ。
いつから物を食べて無いか分からないが、空腹感は無い。
そこらに生える怪しげな植物たちは食べたくなかったので、助かったとしか考えなかった。
しばらく進むと木の根に足を取られて転んだ。
しかし痛みは感じなかった。思わずついた手の皮もむけていない。
その事に驚くが、土だからだろうと納得した。
茂みの中に入ると、動物たちに出会った。
不思議なことに動物たちは逃げ出さなかった。
一瞬こちらを見上げ、なんでもない様に股の下をくぐっていく。
何度か驚かせてやろうと足を強く踏み鳴らしたが、平気な顔をしていた。
不思議だったが、それほどに自分が弱っているのだと思った。
動物たちに脅威を感じさせないほどに。
しかし納得は出来なかった。
出発してから何時間か経ち、歩いている内に、疲れが取れていった。体が軽くなっていくのだ。
おかしいとは思うが、体は健康なのだと苦しい理由をつけた。
納得などしようがない。
さらに歩き続けていると、突然、前方の木々が開けた。
やっと山を抜けたのだ。
嬉しくなり、駆け出す。
陽は傾いていた。
どれだけ彷徨った事か。
嬉しくて嬉しくて、体が羽毛の様に軽かった。
地に足がつかない気持ち。
いや、本当に浮いている?
足許を見る。
足が無かった。
しかし奇妙に納得もできた。
無理に理由をつけずとも、《それ》ならばすべての事に説明がつくからだ。
そんなことあるはず無いと、無理に考えない様にしていたが、理解をすると、気が楽になった。
解放感が、気持ちいい。
《それ》を理解した瞬間、俺はすべてから解放されたのだ。
しばらく解放感を味わったあと、ある考えが浮かんだ。
《それ》なら一つ、試してみたいことがある。
実行には、カメラを持った人間が必要だ。
ニヤリと、笑う。
この世で最後の悪戯だ。
《みんな》も、そう思ったんだろうな。
タイトルがネタばれです。 すみません。そのまますぎですね。