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プロトタイプ ―原型―

作者: 高遠響

「○○ちゃんって知ってる? そうそう、最近連続ドラマで人気の出てきた子役の○○ちゃん。あの子、可愛いよね。演技も巧いし。天才子役って最近多いけど、彼女もその一人だわね。

 ふと思ったんだけど、あの子、どっかで観た事あるなぁって。でも、まだ6歳とか7歳とかでしょ? それもまだデビューして二作目とか三作目とかって聞いてるんだけど。

 でも、どっかで観た……そんな気がしてしょうがないのよねぇ」


 母がそんな事を言いだしてしばらくしてから、職場のパートのおばちゃんが昼休みの雑談の時に同じような事を言いだした。


「そうそう、私もそう思ってたわ。○○ちゃんって誰かに似てるな~って。でね、よくよく考えたら、昔子役で有名になった△△ちゃんって子に似てるって事に気がついたのよぉ。

そうね~、私がまだ若い頃だから、三十ン年前よ」


 そうしておばちゃんがスマホで検索して見せてくれた画像は確かに○○ちゃんに良く似ている。


「すっごく可愛い子でさ。歌も上手で、芝居も突出してた。天才子役って言われてて。出演した映画がアカデミー賞なんか取っちゃってさ、△△ちゃんも史上最年少の助演女優賞なんか取っちゃったりしさ。と~っても将来を嘱望された子役って事で一躍有名人よ。

で、△△ちゃんってどうしたんだっけ。……そうそう、確か結構売れてたんだけど、中学で非行に走って、干されたんだよね。

その後? 知らないわ~。検索してみるわね……。あ、なんか、結構早くに亡くなったみたいよ。生きてたら私達よりちょっと若いくらい? もったいないよね。ちゃんとした人生を送ってれば、今頃きっと大女優よぉ。才能が無駄になっちゃったって訳ね」


 そんな事を思った人はうちの母とパートのおばちゃんだけではなかったらしい。そのうち女性週刊誌に取り上げられ、気がつけば大衆紙やスポーツ新聞にまで取り上げられるようになった。


 そうこうしているうちに、妙な噂が流れだした。


 芸能界には△△のクローンが密かに混じっている。早くに亡くなった△△の父親は実は著名な遺伝子工学の研究者であった。△△の才能を高く買っていたプロダクション社長と父親は討議を重ねた末、夭逝した△△の体細胞を父親の研究室にて冷凍保存する事にした。

 近年のips細胞の研究やクローン技術の向上で△△の遺伝子を用いてクローンが誕生。才能あふれる△△はこの世に再生し、自らが半ばで挫折した道を辿っている。研究室にはまだ保存されている体細胞が残っており、今後も△△のクローンが誕生する可能性がある。


 ……んな、アホな。そんな事があるもんか。そんな事があるはずない。とは思いつつも、見れば見る程○○ちゃんは△△ちゃんと良く似ている。


 そう言えば、数年前にちょこっと世間に出た子役の女の子、彼女も○○ちゃんと雰囲気が良く似てたな。

 ン? そう言えば、○○ちゃんよりもだいぶ年上だけど、××ちゃんってアイドルも子供の頃の写真が○○ちゃんとよく似てたんだよね。あの子はどうしたっけ? 最近見ないけど。


 よくよく考えればさ、可愛いんだけど、区別の出来ない芸能人って多いよね。それってさ……、もしかして……。

 

 ……んなアホな。そんな事、あるはずないよね。そう思いながら私はテレビのチャンネルを変える。

 


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