末路
ちょっとした興味本位で思い立ち…
に、兄さま……
ふと思い出して目の前に座るお祖父さまに問いかける。
「お祖父さま、以前お話しいただいた、父さまたちを殺した者たちはどうなったのですか?」
いきなりのことに驚いたらしいお祖父さまは吹き出しこそはしなかったが紅茶に咳き込んだ。慌てて駆け寄り背中をさする。すいません、ホントいきなりで。
「い、いきなりだな…ゴホッ」
「済みません。今思い出したもので」
まだ少し咳き込みながらも呼吸を整えたお祖父さまはなぜか苦々しげな表情を浮かべていた。
「…武装集団の方はすでに王立騎士団によって検挙されている。薬物中毒者の方は……あちらも相応の処断を受けた」
「…お祖父さま、なぜ目を逸らすのですか?」
後半、言い逃れるようにわたしから目を逸らしたお祖父さま。詰め寄ろうとしたがその前にノックの音が部屋に響く。「フロールクスです」という声にお祖父さまは一瞬ためらった後、入室を許可した。フロルが入ってくるなりわたしを見つけて頬を緩めたのにわたしはとっさに身構える。もう条件反射だ。けれどすぐにフロルもわたしと同じ話を聞いているはずだと思い至り、今日ばかりはわたしの方から兄に駆け寄る。
「兄さま!」
「セラ!」
近寄った瞬間その腕に抱き込まれたが今は気にしない。
「兄さまも父さまたちの死因の話、聞いているんですよね?!」
勢い込んで聞くと彼は驚いた顔をしたが否定やごまかしはしなかった。
「母さまを殺した男がどうなったのかご存知ですか?」
少し落ち着こうとできるだけ静かに問いかける。すると兄さまはさらに目を見張った次の瞬間、なぜか輝かんばかりの笑みを満面に浮かべた。思わず後退る。
「ああ、知っているよ。でもあんな奴らがどうなろうと、セラが気にする必要はないよ」
キラキラしい満面の笑顔で言われしばし思考が停止していたが、ゆっくりと動き始めた考えがひとつのことに思い至って問いかける。
「…兄さまが手を下されたのですか?」
わたしの問いにフロルは笑顔のまま否定も肯定もしなかった。何やら背筋がぞわぞわとするのは気のせいだろうか。
「…何を、したのですか?」
フロルの緑柱石の瞳を見上げながら問うたが、その目が笑っていないのを見て再度固まる。その際、神々しいまでの笑顔の向こうに黒いオーラが見えた気がした。
「聞きたい?」
「…できれば」
聞いてしまえば同情してしまいそうになる心境で、聞くだけは聞いてみようかな?なんて思った自分は甘いのだと思い知る。
「この二年余り、ずっとセラを苦しめ続けていた奴だからね。そう簡単に許すことはできないよ。
だから―――」
死んだ方がマシだと思うくらいの“お礼”をしてあげたんだ
心底嬉しそうににっこり笑いながら言う兄の姿はわたしが初めて見る残酷な一面だったのだと思う。
なんで聞いたんだろう、わたし。
後―――
何をしたの、フロル兄さま。
フロル兄さまは最愛の妹のためなら慈愛の微笑みで人を(物理的に)切り捨てられるような人間です
そして隠れSです