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誓言 ~砂漠を渡る太陽は銀の月と憩う~  作者: 中山佳映&宝來りょう
シーズンⅠ(かえ担当)
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第一話

流浪の踊り子の幼い恋が運命の車輪をまわし ――――――  。

それはいつしか、ひとつの国を、あまたの人々の運命をも変えていく。

御伽噺で言えば、「はじまり、はじまり」といったところでしょうか。

舞台はシルクロード西域にある、ロプノール湖畔の国。


長いお話となりますが、最後までおつきあいいただけますれば、中山佳恵、宝來りょう、両名とも望外の喜びでございます。


シーズンⅠは、中山佳恵が担当しています。

「誓言」の読みどころは、作者ふたりの全く違う文章でしょうか(笑)

シーズンⅧまでは、執筆済みですので、毎日投稿いたします。

それでは、最後までお楽しみいただければ幸いです。


作者二人とも、感想をいただけると踊りを踊って喜びますので、一行だけでもいただけるとうれしいです。

 挿絵(By みてみん)

                   睡蓮と銀月    イラスト:彩都めぐり



 運命の輪を回し始めたのは、誰だったのか。

 流浪の踊り子だったかもしれない。

 まだ幼さが残る、駆け出しの。

 群舞の端くれ、花形の引き立て役に過ぎなかったのだが。


 たまたま、お忍びでやって来た族長に、見初められた。

 運のいい娘だよ、と口々に褒めそやされ、

 当人は周囲の浮かれた空気に乗せられ、

 深慮もなく、族長のもとへ。


 踊りを、所望されるのだと、思い込んでいた。

 だって自分は、踊り子だから。

 それに。

 この辺り一帯でいちばん偉いお方だと、

 皆に敬われているのに。


 踊り子の前で、どっしりと胡坐をかき、

 むっつりと押し黙り、苦虫を噛み潰したような表情で、

 酒をあおる壮年の、この男性は。


 ちっとも、幸福そうではない。


 どうにか、お慰めしたい、と思った。

 なんとしても、お慰めしなければ、と思った。

 だから精一杯、踊った。


 仕込まれた限りの技を、

 考えつく最高の、構成で。


 鹿のように可憐に、俊敏に。

 虎のように傲然と、しなやかに。

 炎のように熱く、妖艶に。

 水のように、清らかに、舞った。


 舞い終わり、楽師たちが遠ざけられ、

 自分ひとり、族長に手招きされて、

 傍ちかくに、侍っても。


 踊り子は、怯えたりなど、しなかった。

 男女の交わりをその身で体験するのは、

 初めてだったけれど。


 踊り子は自分が、この年かさの族長を魅了し、

 すっかり虜にしていると、肌で感じ取っていたから。


 果たして、族長は。

 薔薇のつぼみを愛でるが如くに、

 踊り子を、丁重に扱ってくれた。


 踊り子が、少しでも苦しげなそぶりを見せると。

 痛かったか、酷くしたかと、気遣ってくれる。


 自身の高ぶりよりも、

 踊り子へのいたわりを、優先。


 踊り子は、そのやさしさに打たれ、

 不慣れながら応えようと、懸命。


 戯れから始まった、一夜かぎりの火遊びは。

 夜が明ける頃には、すでに違うものへと、

 変容を遂げていた。


 ただの土塊が、こねまわされ、

 燃えさかる炎に煽られて、

 色鮮やかな陶器へと、窯変するように。

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