【白でも黒でもない】20
「朝陽」
部屋に飛び込んできた藍美は息を切らしていて、目は真っ赤だった。
「朝陽!」
藍美は朝陽を抱き締めた。
「ごめんね。ごめんねえ」
藍美は朝陽を抱き締めてぼろぼろと泣いている。
「ママ、勝手にお友達呼んだりして。あんなにいっぱい大人の人がいたら、怖いよね。驚くよね。朝陽の気持ち、ちゃんと考えてなくて、ごめんねえ」
朝陽は何も言わず、ただ藍美の腕の中で藍美の声を聞く。
「ママ、朝陽がもう帰ってこないんじゃないかって心配で心配で。ママ、朝陽がいなくなったら死んじゃうよ。だからママのもとからいなくならないで。お願いよう」
いつも綺麗に整っている藍美の髪の毛はぼさぼさに乱れていて、泣き過ぎて化粧も取れていた。いつもより少し老けて見える。
「ああ、うん」
なんと返事をしたらいいか分からない。勝手なものだと思う。でも少し嬉しくもあった。
「ごめん」
「お友達にも怒られちゃった。母親なんだからしっかりしなさいって。みんなね、相棒との子供を産むかどうか悩んでたり、治験場での暮らしが寂しくて、お友達が欲しい人ばっかりなの。今度、ひとりずつちゃんと紹介するね」
藍美は朝陽の頭を撫でながら、優しい声を出した。
「朝陽が良い子だから、ちょっと甘え過ぎちゃってたかもしれない。本当にごめんね」
もう一度頭を下げた藍美に、朝陽は唇を噛み締めて「僕、ママが男の人といるかもしれないって思って」と言った。藍美は「あははははは」と笑った。
「あのね、朝陽。ママ今彼氏とか要らないよ。そりゃあやっぱり寂しいからお友達は欲しいけど、ママには朝陽がいるからね」
藍美は朝陽のおでこにキスをした。
「だからもう、いなくなったりしないでよ」
もう一度抱き締められた腕の中で、朝陽は目を閉じた。
そういえば。
相棒との関係に悩んで家を飛び出すのは、今回で二回目だ。自分はあまり変わっていないのかもしれないと思うと少しおかしな気持ちになり「ふふ」と笑った。
藍美は「あー。朝陽、笑ってるー」と言って朝陽の頬を人差し指でぷにぷにとつついた。




