【あなたと私】20
楓子が退院してから数日後、樹と楓子が二人で出かけることになった。
難しい顔の樹を送り出すと、すぐに悠真が尋ねてきた。
リビングのテレビに樹の視点映像が映し出される。共有情報で送られてきたものだ。これは樹の希望だった。
「もしも今日の様子を見ていて、お前らが納得して楓子の主相棒を俺に代えた方がいいと思うなら、俺が楓子の主相棒になる」
そう言い残されれば、このみは緊張せざるを得ない。悠真も真剣な顔をして映像に見入っている。
「ふふふ」
白色乗用車で商業施設に向かっているようだ。車内で楓子は楽しそうに笑った。
「新しいゲームのコントローラーが見たいんだよねえ」
楓子は足をぶらぶらさせながら言った。樹の視線が楓子の左手のリストバンドで一瞬止まる。
「ふうん。ゲームって、面白いかね」
「超面白いよ! 樹もやってみればいいじゃん。絶対ハマるし」
楓子の頬が紅潮している。
このみは悠真の様子を窺った。じっと無表情で画面を見つめている。
「いや俺はドラマ見るのに忙しいから」
「樹は本当にドラマが好きだねー。そんなに面白い?」
「面白いって。ときどき信じられない展開になるんだよ。百パーセントフィクションだなって思うほどうまくいかなかったりうまくいきすぎたりな。展開も早いから一瞬たりとも目が離せない」
楓子はまた「ふふ」と笑った。
「そんなに面白いなら、あたしも今度見てみよう」
商業施設では楓子の希望通りゲームのコントローラーを見て、しばらくウインドウショッピングをした。
途中入ったアクセサリーショップで、楓子は目を輝かせてアクセサリーを見ていた。
「ねえこれ、可愛くない?」
樹の洋服の袖を引き、華奢な指輪を見せた。
「可愛いか?」
「可愛いよー! この可愛さが分かんないの?」
「いや全然分からん。全然」
「二回言わなくてもいいよ」
楓子が笑うと、樹は「じゃあ買ってやるよ」と言った。
「え! 嘘!」
楓子は飛び上がって喜んだ。
「嘘じゃない。退院祝いな」
樹は楓子の指のサイズを確認して、会計機に歩いていく。一緒に買ったもう一つの袋をポケットにしまった。
「はい」
樹が指輪を箱から取り出す。楓子が差し出した指は、左手の薬指だ。樹は一瞬動きを止め、楓子の指に指輪を通した。
「嬉しい! ありがとう樹!」
樹の左腕に、自身の両腕を巻き付けた。楓子は本当に嬉しそうに笑っている。
「大事にしろよ」
「はーい」
悠真の拳が、膝の上で強く握られた。このみは何も言わず、画面に視線を戻した。




