【あなたと私】19
目を覚ましても、いつも通りの楓子は戻ってこなかった。
目を閉じるか静かに泣くかを繰り返す楓子は、とにかく弱々しかった。
悠真は隣でじっと楓子が元気になるのを待った。
他愛のない話をした。自傷の理由にはどちらも触れなかった。
楓子の方も天気や気温の話などをぽつりぽつりと話すだけで、このみの名も樹の名も出すことなく、静かに時間を過ごしていた。一週間ほど、そうして過ごした。
退院の話が出たとき、楓子は「ねえ」と悠真に語り掛けた。
「ごめんね。心配したよね」
「うん。すごく心配した」
楓子は「ごめん」ともう一度頭を下げた。
「でも、あたしは心配して貰えるような価値のある人間じゃないよ。あたしって本当に最低だし」
「そんなことない」
悠真は楓子の手を取った。
「そんなこと言わないで。僕は楓子が好きなんだ。大好きなんだよ」
楓子は「うん。ごめん」と言いながら涙を流した。
「楓子に辛い思いをさせちゃったなら、謝る。僕が悪いんだ。僕が楓子の相棒機械なのに、楓子を追い詰めるようなこと」
「やめて」
楓子は悠真の言葉を遮った。
「悠真は悪くない。あたしが悪いの。だからもう謝らないで!」
悲鳴のように楓子は叫んだ。悠真は「あ」と言いながら固まってしまう。
「じゃあ」と楓子は口を開いた。
「じゃあ、あたしのわがまま、なんでも聞いてくれる?」
楓子の目は遠くを見ている。悠真は「うん」と頷いた。
「退院したら、樹と二人で少し話したい。出来れば丸一日。二人で出かけてきてもいい?」
悠真は頷いた。
「もうすぐ、退院かあ」
呟く楓子の声が聞こえてはいたものの、悠真は黙り込んだ。右手の拳をぎゅっと握り締めた。




