表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/66

【あなたと私】19

 目を覚ましても、いつも通りの楓子は戻ってこなかった。

 目を閉じるか静かに泣くかを繰り返す楓子は、とにかく弱々しかった。

 悠真は隣でじっと楓子が元気になるのを待った。

 他愛のない話をした。自傷の理由にはどちらも触れなかった。

 楓子の方も天気や気温の話などをぽつりぽつりと話すだけで、このみの名も樹の名も出すことなく、静かに時間を過ごしていた。一週間ほど、そうして過ごした。

 退院の話が出たとき、楓子は「ねえ」と悠真に語り掛けた。

「ごめんね。心配したよね」

「うん。すごく心配した」

 楓子は「ごめん」ともう一度頭を下げた。

「でも、あたしは心配して貰えるような価値のある人間じゃないよ。あたしって本当に最低だし」

「そんなことない」

 悠真は楓子の手を取った。

「そんなこと言わないで。僕は楓子が好きなんだ。大好きなんだよ」

 楓子は「うん。ごめん」と言いながら涙を流した。

「楓子に辛い思いをさせちゃったなら、謝る。僕が悪いんだ。僕が楓子の相棒機械(パートナーロボット)なのに、楓子を追い詰めるようなこと」

「やめて」

 楓子は悠真の言葉を遮った。

「悠真は悪くない。あたしが悪いの。だからもう謝らないで!」

 悲鳴のように楓子は叫んだ。悠真は「あ」と言いながら固まってしまう。

「じゃあ」と楓子は口を開いた。

「じゃあ、あたしのわがまま、なんでも聞いてくれる?」

 楓子の目は遠くを見ている。悠真は「うん」と頷いた。

「退院したら、樹と二人で少し話したい。出来れば丸一日。二人で出かけてきてもいい?」

 悠真は頷いた。

「もうすぐ、退院かあ」

 呟く楓子の声が聞こえてはいたものの、悠真は黙り込んだ。右手の拳をぎゅっと握り締めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ