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【あなたと私】18

 樹が手配した医療機関の緊急車両はすぐに到着し、楓子を搬送した。悠真は付き添いで同行し、このみと樹だけが部屋に残された。

「あーあ」

 樹は悲しげに言った。

「どうしてこうなっちゃうんだろうなあ」

 医療機関機械(ロボット)が何度「命に別状はありません」と言っても悠真は楓子の名を呼び続けた。繰り返し再生されるその姿はこのみを悲しい気持ちにさせる。

「死んだら、もう二度と会えないのになあ」

 樹が遠い目をして呟くように言った。

 このみは、もしかして、と思った。

 樹の以前の相棒(パートナー)は亡くなってしまったのかもしれない。何度聞いても教えてくれない樹の過去に少しだけ触れたような気になり、このみは余計に悲しい気持ちになった。目から勝手に涙が溢れる。

「泣くなよ」

「私も止めたいんだけど」

 このみがおろおろしていると、樹がこのみの手を引き、ぎゅっと抱き締めた。

「ちょっとだけ、胸を貸してやる」

 そう言われてこのみは涙が止まるまで樹の胸のあたりに顔を埋め、洋服を濡らした。

 頭の上に水滴が降って来た。樹の涙かもしれない。何も言わずに、このみは樹の背中に腕を回した。

 玄関から物音がして、慌てて身体を離した。

 清掃機械(ロボット)が二体、玄関の扉を開いて入って来たのだ。

「倖田所長に依頼されて、清掃に参りました」

 機械(ロボット)達は樹とこのみの返事を待たず、速やかに清掃作業に入った。

 樹とこのみは自宅へと戻り、ソファーに沈み込むように腰掛けた。二人ともしばらく無言だった。

「楓子は、何を望んでるんだろうな」

 樹が静かに切り出した。

「悠真と一緒にいれば、絶対に幸せになれるのに」

 このみは返事が出来なかった。

 どのように喋っても、楓子が内緒にしたかったことに触れずにはいられない。

「俺なんかより、悠真の方がよっぽど楓子を幸せにしてやれるのに」

 このみは「それは違うよ」と反射的に言った。

「樹はすっごくいい機械(ロボット)だよ! 本当に! それだけは私、自信を持って言える」

 樹は頭をぽりぽりと掻いて「気を遣うなよ」と言った。

「気なんか遣ってない!」

 このみの反論に「でも俺は」と樹は悲しい顔をした。

以前(まえ)相棒(パートナー)を幸せに出来なかった。それだけは事実なんだ」

「でも楓子は……」

 このみは言葉を探した。

「悠真みたいに優しいだけだと、駄目なのかも」

 樹は何も言わない。

「楓子は……樹みたいな人が好きなんだと思う」

「お前は」

 樹はゆっくりと言葉を発した。

「俺と悠真が代わればいいと思ってるのか」

「分かんない」

 このみは首を横に振った。

「私は楓子が幸せになってくれればいい」

 樹はしばらく考え込んで「とりあえず、今日は休む」と言って寝室へ行ってしまった。このみはその背中を見送って、ソファーの上で一晩を過ごした。

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