【あなたと私】11
このみは慌てて家に駆け込み、樹に声をかけた。
「今、悠真から送られてきた映像見た?」
出かける前と同じ姿勢でソファーに座っていた樹は「見たよ」と、低く固い声で返事をした。
「だから何だよ」
うんざりした表情の樹に、このみは「どう思う?」と重ねて問うた。
「お前は、どう思うんだよ」
「どうって……」
このみは黙った。樹は数秒待ってから、ふう、と低く息を吐いた。「興奮するのはいいけどよ」と静かに続けた。
「ちゃんと考えろよ、お前も。相棒機械だろう」
反論する言葉が見つからない。このみは俯いた。
「だからお前、治験者に利用されるんだよ。お前が隙だらけだから、つけこまれてんだよ」
「利用されて?」
このみは顔を上げた。樹は「ああもう」と苛立ち、座っていたソファーにぼすんと拳をぶつけた。
「本当に楓子がお前を心配してそんなこと言うと思うか? 俺のこと心配してそんなこと言うと思うか? なんでお前には分からないんだ。毎回だらだら長話して、結局お前が一番楓子のこと考えてないよ。本当にただの無駄話じゃねえか。自分の仕事、なんだか分かってんのか」
このみは樹の言葉を頭の中で繰り返す。
「楓子の主相棒の、補佐」
「お前のせいで」
樹は立ち上がり、このみを睨みつけた。
「悠真の立場まで危ういじゃねえか」
そう言って樹は玄関の方へとずんずん歩いて行ってしまう。
「どこ行くの?」
このみが問うと樹は「呼び出しだよ。倖田所長からな」と振り返らずに返事をして靴を履き、傘を手に外に出て行ってしまった。いつの間にか、雨は本降りになっている。
このみはその場にぺたんと座り込み、状況を整理しようと考えた。
自分の行動の何がいけなかったのだろう。何が欠けていたのだろう。樹は何故あんなに怒っているのだろう。樹の言葉を理解したいと、このみは思った。
楓子に直接聞きたい衝動に駆られた。でも、それはきっといけないことだ。楓子はこの話を内緒にして欲しいと野々村に訴えたのだから。
しばらくその場に座ったまま動けなかった。
もしかしたら自分は、相棒機械という仕事を甘く見過ぎていたのかもしれない。楓子の友達になる為には、まだまだ乗り越えなければならない問題がたくさんありそうだ。




