表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/66

【あなたと私】6

「あ。うっそ。ちょっと待って」

 ゲームのコントローラーを持った楓子が、テレビ画面に向かって呟く。

「あー。だから、待ってって。ちょっと。あーあ」

 画面では楓子の使用しているキャラクターが倒れていた。

 楓子は最近、オンライン対戦ゲームにはまっていた。見知らぬ相手とチームを組んで戦うゲームだ。

 楓子の操作キャラクターは復活したが、試合終了のカウントダウンが始まった。楓子はコントローラーを放り、「もー」と口を尖らせた。

「なんで何もしなかったの?」

 横で見ていた悠真が問うと「だって」と楓子は頬を膨らませた。

「どうせ負けるし」

「そうなの?」

「そうだよ。ちょっと悪あがきしたところでもううちのチームは惨敗って感じ。全然連携取れてないんだもん」

 先ほどの視覚情報を再生する限り、他にいくつも敗因はあるように感じた。しかしそのことには触れずに、悠真は「そうなんだ」と頷いた。

 楓子はゲームを終了し、「あー」と言いながら左に倒れて悠真の膝の上に頭を乗せた。身体を仰向けにして足もソファーの上に乗せる。下から悠真を見て「勝てない」と言った。

「難しいんだねえ」

 悠真は顔にかかった楓子の髪の毛を避け、頭を撫でた。

「そうなの。あたし単体だと超強いの。ストーリーモードとか圧勝なんだけど、チーム戦になると全然勝てない。みんな全然弱いんだもん。どうして参戦してくるのかね」

「足を引っ張られてるんだね」

「そうだよ。あたしがいなければもっと負けてたよ。みんな自分の役割を分かってない」

「役割?」

「そう。射程距離とか役割とかあるのに、それを理解せずに突っ込んでいく馬鹿が多すぎ。本当みんな頭悪いんだから」

「そっかあ」

 悠真は緩やかに相槌を打ち、目を細めて楓子を見た。

「楓子、大変だねえ」

 楓子は悠真の背中に腕をまわし、腹のあたりに顔を埋めた。

「でもこういうこと言うと、嫌われる。悠真もあたしのこと、性格悪いって思ったでしょ」

「思わないよ。楓子は正直で格好良いじゃない」

「本当?」

 楓子は上目づかいで悠真の顔を見た。悠真は楓子を見つめ返して、微笑んで頷く。

「僕は楓子のそういう素直なところが好きなんだ」

「もう」

 楓子は唇を噛んで視線を外し、それからはっとして悠真に問う。

「ねえ、相棒機械(パートナーロボット)ってみんなそういうこと言うように設定(プログラミング)されてるの?」

「そういうこと?」

「そう。好きだとか可愛いとか、悠真が良く言うこと」

「別に設定(プログラミング)されてるわけじゃないよ。ただ楓子のことを思うと自然とそういう言葉が浮かぶんだ」

「ふうんじゃあさ」

 楓子はまた後頭部を悠真の膝の上に乗せ、「樹は相棒(パートナー)失格なんだね」と言った。

「そうかな?」

「だってこのみ、全然好きだとか愛してるとか言われないらしいよ。このみも樹にそういう感情抱いてないっぽいし」

「そうなんだ」

「それにさ、悠真みたいに家事とか全然協力してくれないって。話聞いてると、いっつもこのみが働いてる。普通機械(ロボット)の方がするもんなんじゃないの? このみって昔から体が弱くて、やっと良くなったと思ったらお母さんが死んで、再婚する父親のところに居場所もなくて治験場(ここ)に来たって言ってたじゃん。だったら普通はさ、余計大事にしない? 体の弱い彼女にさ、そういうことさせなくない?」

「うーん。そうかもねえ」

 楓子は「そうだよ」と言った。

「それに、このみのことってあたしよく分かんない」

 ぐるん、と体の向きを変え、楓子はうつぶせになった。悠真の膝に顎を乗せ、指先を弄びながら「だあってさあ」と言葉を続ける。

「このみって全然人の悪口言わないし、いっつも笑ってるし、なんかちょっと変。どっちかって言うとこのみが機械(ロボット)みたい。だって悠真にちょっと似てるもん」

「僕に?」

「そう。樹の方がずっと人間みたい。わがままで、自分勝手で、マイペースで、だけどその裏で、本当はいろいろ考えてる」

 楓子は一度言葉を切ってふう、と息を吐いた。

「まるであたしみたい」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ