【あなたと私】3
隣に荷物が運ばれてくる音を聞く為に、聴覚感度を上げた。
そのまま静止しているこのみを見て、樹が呆れた顔をした。
「本人たちはまだ来ない」
「でも、荷物が」
「治験者は一旦中央公社に向かう。そこで面談をして、治験場の説明を受けて、それから相棒と対面だ。昨日連絡来てただろ」
このみは「まあ、それはそうだけど」と答えた。
三人は共有情報で予定を共有していた。昨夜悠真から送られてきていたし、このみもそれを認識していた。
「だって気になるし」
「だとしても、その態度はどうかと思う」
壁に耳を付けていたこのみは「そうかなあ」と立ち上がり、ソファーの前に移動した。樹の横に腰掛ける。
「やる気があるのはいいことだけど、ちょっと落ち着け」
向かいのテレビに視線を移した樹に対し、このみは「でもだって」と反論した。
「早く知りたくて。だって初めての友達だから」
「そんなにそわそわしてると変なやつだと思われるぞ。なんかあの眼鏡の子、すごい勢いで怖い、とか言われて、距離取られて、埋まらない溝が出来たらどうする」
「それは非常に良くない流れです」
このみは首を横に振った。それでも一応、視線は壁の方に向けたままだ。
テレビ画面に映っていた洋画が途切れ、スポンサー名を流し始めたとき、樹は「ところで」とこのみに顔を向けた。
「なんでお前、眼鏡してるの」
「今更ですか」
「機械だから眼鏡要らないだろ。最初から気になってはいた」
「理由、聞きたいですか」
「いや、別にそこまでじゃ」
「聞いてください」
「喋りたいなら早く話せよ」
「この眼鏡は私の憧れている機械の友達がかけているものと同じデザインで作ってもらった特注品! 髪型もその少年をイメージしてショートカットにしてもらいました!」
「ふうん。そうなんだ」
「本当は機械の方に外見を寄せようと思ったんだけど、機体を青くするのは駄目だって言われたから」
「そりゃそうだ」
「樹は、何かモデルにしてる外見とか憧れてる機械とかいないの?」
「ちょっと待って」
CMが開けて洋画が始まってしまったので、樹との会話は途切れた。
樹はいつもテレビばかり見ていて、特に海外のドラマや映画を好んでいる。
このみは壁の方をちらりと見て、その後は樹と一緒に洋画を見た。
隣の部屋に楓子と悠真がやってくるまで、樹に気付かれないようにテレビの上の壁掛け時計を何度も繰り返し確認した。




