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【朝が来る】15

 日差しの眩しい朝だった。

 洋二は珍しく、爽やかに目を覚ました。

 身体を起こして伸びをし、ベッドから抜け出て、絵里の待つリビングへと向かう。寝室の扉を開けた瞬間、良い匂いが洋二の鼻をくすぐり、反応して腹がぐう、と鳴った。

「おはよう」

 キッチンに立つ絵里に声をかける。

「おはようございます」

 絵里は洋二に笑顔を向けた。ああ、今日も絵里は綺麗だなと思った。

「ああ、腹減ったあ」

 洋二はダイニングの椅子に座り、朝食を待った。絵里は洋二を見て微笑み、「今日は調子が良さそうですね」と言った。

「あ、そうなんだよ。今日は頭痛くないんだ」

「昨日、洋二さん一日断酒出来ましたもんね」

「いやあ。あの、絵里の言う通り、身体を動かしたのも、良かったのかも知れないね」

 昨日は絵里と二人で商業施設(ショッピングモール)に出向き、最上階の遊戯施設アミューズメントパークでボウリングをした。久しぶりだったが意外と体が覚えていて、やっているうちに楽しくなった。

 絵里のボールはやけに遅く、へなへなと転がっていく。それを見るとやたらと可笑しくなり、洋二は腹を抱えて笑った。

 食事をし、午後はゲームセンターで遊んだ。

 UFOキャッチャーで丸いぬいぐるみを取ってやると、絵里は飛び上がるほど喜んでいた。ほとんど球体の白い塊であるぬいぐるみはこげ茶と黒の耳と、オレンジのしっぽらしきものがついていた。三毛猫っぽいなとは思ったけれど、なんのキャラクターであるかまでは分からなかった。

 ぬいぐるみを抱き締めて笑う絵里に「大げさだよ」と言いながら、洋二は気分が良かった。絵里を喜ばせることが出来たのはもしかして初めてかもしれないと思うと、にやにやとだらしなく口の端が上がった。

 音楽に合わせて身体を動かすゲームで汗をかき、最後に映画を観て帰った。充実感で胸がいっぱいのまま、夕飯を食べるとすぐに眠ってしまった。

「楽しかったですね」

「うん。楽しかった」

 絵里と二人で昨日の話をしながら朝食を食べた。いつもより味が冴えている気がした。

「き、昨日は結構疲れたから、今日は体調悪いかと思ったんだけど」

「どうですか?」

「あの、それがさ、すごい調子良いんだよ。信じられないくらい」

 昨日は朝のうちは体調が悪かった。頭痛の種がじわじわと存在を主張していたし、身体もだるかった。けれどいつの間にかそれを忘れていた。

 今朝は頭痛の種も沈黙している。このままいなくなってくれることを願う。

「うふふ。それは良かったです」

 絵里が笑ったので、洋二も笑った。幸せな朝だと思った。

 窓から差し込む朝陽に目を細めてから、リビングのソファーに腰掛け、テレビをつけた。

 腰を下ろした拍子に視界が一瞬だけ揺れたが、気にしないことにした。

 綺麗な顔立ちのアナウンサーが、朝のニュースを読み上げている。首相の体調を心配するニュースのあとに表示された画面に、洋二の目は釘付けになった。

「……が殺害された事件で、警察は、同社従業員の──」

 被害者の名前も、加害者の名前も、見覚えがあった。洋二をクビにした親方と、洋二をクビにするきっかけを作った年下の先輩。頭が真っ白になり、心臓が跳ねた。

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