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霊体マッサージで女神様を癒やしたら、異世界に飛ばされて異種族の娘たちにモテモテになって困る! 俺はただのおっさん整体師なのに!  作者: カクナノゾム
第五章 古の竜

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第35話 死霊竜の咆哮(下)

 俺は歩み寄る。

 炎の中で、金の竜が静かに横たわっていた。

 瞳を閉じ、胸には黒い霊核。


(……ここが、あいつの心の奥)


 死霊竜の意識の中。

 触れようとした瞬間、

 風が吹き荒れ、声が響いた。


「来るな……!」


 金の竜が、崩れかけた翼で立ち上がる。

 半身が黒く、もう半分が光に溶けている。

 その瞳には、苦痛と恐怖と、深い後悔。


「我は……人も竜も……焼いた……ラグナの翼も……友の魂も……我に触れるな、人の子……」


「それでも、触れるさ」


 俺は一歩踏み出す。

 霊火が足を焼く。

 けれど、構わず進む。


「痛みを見て見ぬふりするのは、癒やし手じゃない」


「……癒やし、だと?」


「お前が何を壊したって関係ない。まだ“心が痛む”なら、生きてる証拠だ」


 掌を差し出す。

 光が集まり、金の竜の胸に触れる。

 焼けつくような痛み。

 でも、その奥に――温かさがあった。


「我は……許されぬ……」


「許しなんて、誰が決める」


 霊火が軋み、空が震えた。

 黒い霧が竜の身体を覆う。

 その下から、かすかに光が滲み出る。


「……ラグナ……」


 死霊竜が、掠れた声でその名を呼んだ。

 それは、ただの幻ではない。

 魂の奥で、まだ彼女を想い続けている証だった。


「そうだ。呼んでやれ」


 俺は囁く。

 霊火が掌を伝って、竜の胸へ流れ込む。

 黒い靄が、ひとつ、またひとつと溶けていく。


「……ラグナ……我は……まだ……」


「聞こえてる。だから、もう一度、光のほうへ行け」


 黒炎の海が波打ち、空が金色に染まる。

 竜の身体が揺らめき、霊火の奥で瞳が潤んだ。


「……ありがとう……人の子よ……」


 その瞬間、光が爆ぜた。

 俺の身体が、現実へと引き戻される。



 視界が歪み、光の中から現実が戻ってくる。

 霊火の匂い、焦げた岩の熱。

 死霊竜の咆哮が、洞窟全体を震わせていた。



「……っはぁ……!」


 俺は膝をつき、息を吐いた。

 心臓が跳ねる。

 魂の中にまだ、さっきの記憶の残響が残っている。


「ユージ!」


 ミナが駆け寄る。

 腕を貸してくれようとするが、俺は首を横に振った。


「大丈夫だ。……見えたんだ。あいつの“心”が」


 リーネが目を見開く。


「え、それって……」


「あいつの魂は、まだ生きてる。だから……次で、必ず届かせる」


 ラグナが立ち尽くしていた。

 彼女の紅い瞳が、震えている。


「癒やし手……お前、あの中を見たのか」


「見た。……お前の伴侶は、ずっとお前を呼んでる」


 ラグナの唇が震え、言葉が詰まる。

 けれど、泣き出す代わりに、拳を握った。


「……ならば、どうすればよい」


「簡単さ」


 俺は立ち上がり、胸に手を当てた。


「俺が、その呼び声を届ける」


 手の甲の刻印が、うっすらと光る。

 霊力が高まるたびに、焼けるような痛みが走る。

 だが、それは恐怖じゃなかった。


(これが、最後になるかもしれない)


 頭の奥で、無機質な声が響く。


『霊力上昇を検知。残余出力、臨界値付近。再使用時、加護維持は保証されません。』


 録音された、感情のないルナリアの声。

 どこか遠くで、機械が動くような響き。


「……分かってる」


 俺は静かに答えた。


「けど、これを使わなきゃ、もう誰も救えない」


 掌を開く。

 霊火が集まり、金色の光が揺れる。

 洞窟の空気が震え、瘴気が一瞬だけ後退した。


 ミナが叫ぶ。


「ユージ、それ以上やったら身体が――!」


 俺は振り向かずに言った。


「俺はただの整体師だ……でも目の前に苦しんでいる相手がいて、俺にはそれを癒やす手段がある!」


 光が、刻印の中心で弾けた。

 紅と白の線が絡み合い、封印陣の輪郭が浮かび上がる。

 空間全体が、低く唸った。


「ラグナ。次で終わりだ。あんたの伴侶を、解放してやる」


 ラグナが一歩近づく。

 瞳に迷いの色が浮かぶが、すぐに消える。


「……分かった。癒やし手。我も全ての力を貸す。この封印を、最後まで見届けよう」


 霊火が静まった。

 洞窟の奥で、死霊竜がゆっくりと息をする。

 その瞳が、金と黒の狭間で揺れた。


 俺は掌を握りしめた。

 光が集中し、視界の端が白く染まる。

 ――あと一歩。

 あと一瞬で、全てが繋がる。


 集中! 死霊竜の霊体がぼんやりと視界に浮かび上がった。


(次で、行く)


 光が膨らみ、洞窟全体を包み込んだ。

 ――そして、音が消えた。


 ソウル・トランスファー!

 左手の紋章が光を放った!


〈第35話 完〉


【次回予告】

最後の禁術、ついに発動。

封印を越え、死霊竜の魂は光へと帰る――

代償は、癒やし手自身の魂。


――第36話「最後の禁術」

おじさん、魂のすべてを燃やす!


 ◇◇◇

 作者からのお願い。


 ここまで読んでいただいてありがとうございました。


 よろしければブックマークと応援、そしてレビュー【☆☆☆】の方、何卒よろしくお願いします。これから物語を続けていく上でのモチベーションに繋がります。

 コメントも頂けると、深く礼をします!

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