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霊体マッサージで女神様を癒やしたら、異世界に飛ばされて異種族の娘たちにモテモテになって困る! 俺はただのおっさん整体師なのに!  作者: カクナノゾム
第五章 古の竜

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第34話 竜の間(上)

 岩壁の裂け目を抜けた瞬間、息を呑んだ。

 そこは、炎の海のような空間だった。


 足元は黒く焦げた岩。

 天井から垂れる赤い光脈が、脈打つたびに雷鳴のような響きを生む。


 奥には、巨大な石座。

 そこに、ひとつの影が座していた。


 ――竜だ。


 紅の鱗が、炎の光を反射して輝いている。

 長い首、鋭い爪、そして背中に畳まれた巨大な翼。


 その身体は、岩の間に収まりきらないほど大きかった。

 紅の瞳が、ゆっくりとこちらを向く。

 こいつは――死霊ではない。


 ということは、この迷宮には竜が二頭いるということか?

 生きている竜と死霊の竜。


「人よ。この先にゆくことあいならぬ。無駄にその命を散らすことになるぞ」


 その声だけで、空気が震えた。


「ふ、震えがとまらない、これって!?」


「こ、古代竜ですにゃ! 神に近しい存在ですにゃ!」


 ミナが一歩下がり、リーネが耳を伏せる。


「人がどうにか出来る存在ではありません! ユージさんっ!」


 セレスも、剣を構えたまま動けないでいた。

 俺は喉を鳴らしながら、それでも震える足で前に出た。


「……あなたが、この迷宮の主か」


「我が名はラグナ。この死霊の迷宮を封じし者」


 ラグナの瞳が、細まる。


「俺は、桐谷悠司。癒やし手だ」


「癒やし手、だと? ルナリアの眷属か」


 ラグナの声に、わずかな興味が滲む。


「癒やし手よ。貴様、何用でこの地に来た」


「グレイヴァルドから聞いた。この地に、竜がいると」


「……グレイヴァルド」


 ラグナの身体が、わずかに震えた。


「随分と懐かしい名を聞く。とうの昔に死んだ戦士の名だ」


「ああ、会ったのは、死霊と化した彼だ」


 ラグナの声が、悲しげに沈む。


「あやつも、結局……この迷宮の理に捕らえられてしまったのか」


「あなたは、グレイヴァルドと知り合いだったのか?」


「知り合いというほどではない」


 ラグナが、静かに言う。


「あやつは、遠い昔、今はなき王国の命を受けてこの地に来た。我はその力を認め、奥に進むことを許した」


 巨大な瞳が、遠い過去を思い出すように細められる。


「あやつは迷わず奥へ進んだ。部下たちを率いて、この迷宮を作り出している原因を倒そうとしたようだ」


「……迷宮を作り出している原因、というのは?」


 俺が問うと、ラグナは静かに答えた。


「――竜の死霊だ」


「あやつの出す瘴気が、全ての魂を捕らえ、死霊と化している。グレイヴァルドも、部下たちも……この瘴気に呑まれ、正気を失った」


 ラグナの紅い瞳が、悲しみに揺れる。

 その言葉に、深い後悔が滲んでいた。


「我はそれを抑えるため、この地に既に数百年近く封印を維持し続け、瘴気が外に漏れ出さぬようにしている……だが近来、いささか我が力も衰えている」


「それが原因で、この迷宮が活性化しているのか」


「人よ、癒やし手よ。戻り生あるものたちに告げよ。程なくして迷宮の封は解ける。疾くこの地を去るのだ、と」


 ラグナの声が、重く沈む。


「――グレイヴァルドは最後に、誇りを取り戻して消えた」


 俺は、静かに言った。


「彼は救われた。だから、今度は――」


 俺は、ラグナを見つめる。

 そして、霊体視を開いた。

 ラグナの霊体が、ぼんやりと浮かび上がる。


 ――その瞬間、俺は息を呑んだ。


 光の筋が、あちこちで裂けている。

 黒い斑点が、全身に広がっている。

 竜の身体は人とは違うが、それでも酷い状態であることは一目見てわかった。


「お前……」


 俺は、思わず呟いた。


「ボロボロじゃないか」


「……何?」


 ラグナの瞳が、わずかに揺れる。


「長年の封印で、疲れ果てているんだ。そんな状態で、よく保ってるな……」


「……我のことなど、どうでもよい」


 ラグナが、低く言う。


「我は古代竜。この程度、何いうこともない」


「嘘つけ。お前、かなり無理してるだろ」


 俺は、まっすぐラグナを見つめた。


「この迷宮の奥に進む前に、まずお前を癒やさせてくれ」


「……何を言っている」


 ラグナの声が、震える。


「我を、癒やす、だと……?」


「笑止!」


 ラグナの身体から、炎が立ち上る。


「我は古代竜ぞ! 人間ごときの手を借りるなど――」


「借りていいんだよ」


 俺は、静かに言った。


「お前は、ずっと一人で戦ってきた」


「でも、もう限界だろ」


「……黙れ」


 ラグナの声が、かすかに揺れる。


「貴様に……我の何が分かる……」


「分かるさ。お前の霊体が、悲鳴を上げてる」


 俺は、一歩前に出た。


「頼む。お前を、楽にさせてくれ」


「……ふざけるな」


 ラグナが、咆哮する。


「ならば試させてもらおう!」


「我に指一本でも触れることが出来れば、貴様のその戯言、考慮してやろう!」


 次の瞬間、ラグナの口から、炎が吹き出した。


──第34話「竜の間(上)」・完


【次回予告】

古代竜の炎が、悠司を襲う。

ミナ・リーネ・セレスの連携で、悠司は竜に挑む。


「届け!」


──第34話「竜の間(中)」

おじさん、古代竜に触れる!


 ◇◇◇

 作者からのお願い。


 ここまで読んでいただいてありがとうございました。


 よろしければブックマークと応援、そしてレビュー【☆☆☆】の方、何卒よろしくお願いします。これから物語を続けていく上でのモチベーションに繋がります。

 コメントも頂けると、深く礼をします!

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