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霊体マッサージで女神様を癒やしたら、異世界に飛ばされて異種族の娘たちにモテモテになって困る! 俺はただのおっさん整体師なのに!  作者: カクナノゾム


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第33話 古代の将(中)

「濃すぎる瘴気が、新しい魔物を蘇らせてるにゃ!」


 淡く光る、濁った魂の影。

 怒りと後悔が交じり合い、炎のように揺れている。


「……お屋敷の本にあった、古い国の戦衣装です」


 セレスがそっと言った。

 昔の戦士が、魔物として蘇ったのだろうか。

 ただの戦士ではない、強い統率と守る意志を感じる。


 そのときだった。

 カツン――と、大剣の先端が地面に落ちた音。

 完全に実体化したらしい。


 ゆっくりと、骸骨がこちらを向いた。

 空洞の眼窩の奥に、燃えるような光。


 そして――


「――誰だ、我が部下に触れたのは」


 低く、しわがれた、しかし威圧感に満ちた声だった。

 俺は、そっと前に出た。

 静かに答える。


「俺は、癒やし手だ。

 ここで倒れていた人々に施術をした。それだけだ」


「貴様か」


 武将の骸骨が、ギリ……と拳を握った。


「貴様が……奴らの“苦しみ”を、奪ったのか……」


「……それが、悪かったのか?」


 俺は問う。


 その問いに――骸骨は、震えるように言葉を吐いた。


「苦しみこそ、我が責めだ……」


「我が部下たちを、守れなかった……罪……」


「それを……背負うのが、我が罰だというのに……!」


 空気が震えた。霊圧が一気に膨れ上がる。


 次の瞬間、彼の大剣が赤黒く輝き、

 ゆっくりと、こちらに構えられた。


「癒やし手よ……貴様も、我が刃の下に伏せよ」


 将の霊体が、怒りの波となって襲いかかってきた。


 その哀しみと怒りを――

 俺はこの手で、ほどくしかない。


 大剣が、地を裂いた。


 岩盤がえぐれ、熱と衝撃が吹き抜ける。

 それだけで、前衛のリーネとミナが後方へ跳ね退いた。


「っ……速い! ただの死霊じゃないにゃ!」


 リーネが魔力を展開しながら叫ぶ。


「動きが……生きてるのと変わらないっ」


 ミナが地を蹴って駆け、即座に間合いを詰める。


 骸骨の将は、まさに戦士だった。

 朽ち果てた肉体を補うように、霊体が全身にまとわりついている。


 刃筋も鋭く、動きに迷いがない。

 まるで――今も戦場に立っているかのようだった。


「止めてみせます」


 セレスが剣を抜く。

 その刃が光を帯び、将の霊体をかすめた。


 しかし――


「……浅いにゃ! ダメージ、ほとんど通ってない!」


 リーネの魔法も弾かれる。


「霊体が鎧と融合してる……下手な一撃じゃ届かない!」


 セレスが低く言う。


 俺は、霊体視を開く。

 将の霊体が、黒い炎のように全身を包んでいた。


 中でも、とくに濃いのは――胸部。


 胸の奥に、剣のような形をした霊核がある。

 それが彼の怒りの象徴だ。


「……あそこだ」


 俺はつぶやいた。


「ユージ、行くの!?」


 ミナが振り返る。


「施術を通すには、まず動きを止めないとですにゃ!」


 リーネが叫ぶ。


「援護します。短時間でいい、隙を作ります」


 セレスが前に出る。


 俺は頷き――走った。


 将の霊圧が、刃のように空気を裂いてくる。

 一瞬でも気を抜けば、押しつぶされる。

 でも――


「俺は、癒やすためにここにいるんだ!」


 その想いが、身体を支えていた。


「にゃあああああっ!」


 リーネの手から飛び出す火の玉の魔法が、将の視界を一瞬奪う。


「こっちはこっちで仕事中なんだからねっ!」


 ミナの短剣が鎧の隙間をかすめる。


 セレスが、その瞬間、将の前に飛び出す。


「今です、ユージさん!」


 俺は滑り込むように、将の懐に飛び込んだ。

 その胸に、手を――伸ばした。

 将の霊体に、掌が触れた。


 ビリッ、とした電流のような感覚。

 怒りと悲しみが凝縮された霊圧が、俺の腕にぶつかってくる。


「っ……!」


 頭の奥が、きしむように痛む。

 だが、ここで引くわけにはいかない。


「……触れるぞ」


 俺は、小さく呟いた。


 将の霊体の胸元――

 まるで剣のように尖った“霊核”へと、そっと手を添える。


 ――こいつは、ずっと怒ってた。

 誰よりも、長く。

 誰よりも、深く。

 仲間を守れなかった自分を、許せずに。


 俺は軽擦法を使った。

 胸から肩、そして背中へと手を滑らせる。

 朽ちた鎧の上からでも、霊体は応えてくれる。


「お、おおっ! これは!?」


 ――だが。

 ほぐれ始めたと感じた霊体に再び黒い炎が湧き上がった!


「否! 否だっ! この悔しみ、憎しみ、無念! 我が決して忘れてはならぬもの!」


 ダメだ! あまりに想念が強すぎるッ!


 この相手を癒やすには――。

 あれを使うしかないっ!



 この相手を癒やすには――。

 あれを使うしかないっ!


 俺は、左手の甲を見た。

 ルナリアの紋章が、淡く光っている。


「ソウル・トランスファー……」


〈第33話 続〉


【次回予告】


 強すぎる怒りと後悔に囚われた将。

 通常の施術では届かない――ならば。

「お前を、救いたいんだ」

 悠司は、再び禁術を使う。


 ──第33話「古代の将(下)」

 おじさん、魂を削る覚悟を決める!

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