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霊体マッサージで女神様を癒やしたら、異世界に飛ばされて異種族の娘たちにモテモテになって困る! 俺はただのおっさん整体師なのに!  作者: カクナノゾム


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第28話 門番の恋(下)

 マルガが帰ってから、しばらく経った頃。

 再び、扉が開いた。


「ユージ殿……」


 ガルムだった。

 さっきよりも、さらに悩んだ顔をしている。


「おかえりなさい、ガルムさん」


 俺が声をかけると、ガルムは重い足取りで中へ入ってきた。


「……やはり、俺には……」


 その声が、震えている。


「種族の違いが……

 俺には……資格がないのではないか……

 マルガ殿を……困らせてしまうのではないか……」


 ミナの耳が、ぴくんと立った。


「ちょっと待って!」


 ミナが立ち上がる。


「種族が違うから何? 好きなら関係ないよ!」


「そうにゃ!」


 リーネも尻尾を立てる。


「心が大事にゃ! 種族より、気持ちにゃ!」


 セレスも静かに歩み寄った。


「……ガルムさん。

 私は、シェイプシフターです。

 長い間、自分の種族を隠して生きてきました」


 ガルムが、セレスを見つめる。


「でも……ここにいられる。

 ユージさんも、ミナさんも、リーネさんも……

 誰も、私の種族を気にしませんでした」


 セレスの瞳が、優しく光る。


「お二人は……きっと結ばれるべきですわ。

 種族の違いなど……些細なことです」


 ガルムが、ぐっと唇を噛んだ。


「……だが……」


 俺は、ガルムの肩に手を置いた。


「ガルムさん。

 あなたが本当に恐れているのは……

 種族の違いじゃない。

 拒絶されることが、怖いんでしょう?」


「……っ」


 ガルムの瞳が、揺れた。


「そうだ……

 もし……マルガ殿に断られたら……

 俺は……」


「断られるかどうかは、伝えてみないと分かりません。

 でも……伝えないで後悔するより、

 伝えて前に進む方が、ずっといい」


 俺ははっきりと言った。


「あなたの気持ちは、本物なんでしょう?」


「……本物だ。

 誰よりも……真剣に……好いている」


「なら、それを伝えてください。

 種族なんて関係ない。

 あなたの心を、マルガさんに届けてください」


 ガルムが、ゆっくりと拳を握った。


「……そうだな。

 俺は……逃げていただけだ。

 種族を言い訳にして……

 自分の弱さから、目を逸らしていた……」


 ガルムの瞳に、光が戻ってきた。


「ユージ殿。

 俺は……マルガ殿に、伝える。

 この想いを……!」


 その声は、もう震えていなかった。


 ミナが笑顔で頷く。


「うん! それでいいよ!」


「頑張るにゃ、ガルムさん!」


 リーネも尻尾を振る。


「応援していますわ」


 セレスが静かに微笑んだ。


 ガルムが深く頭を下げる。


「……感謝する。

 では、行ってくる!」


 そう言って――

 ガルムが扉へ向かおうとした、その瞬間。


 カランッ。


 扉が開いた。


「あの……ガルムさん……」


 入ってきたのは――マルガだった。


「マ、マルガ殿!?」


 ガルムが固まる。


 マルガも、驚いた顔で立ち尽くす。


「ガ、ガルムさん……

 わたし……その……」


 二人の視線が、絡み合う。


 ミナが息を詰め、リーネは尻尾を丸くし、セレスはそっと俺を見た。


 背中を押せ、という無言の合図だった。


 俺は軽く咳払いした。


「……ここで、話してみたらどうですか」


 ガルムとマルガが、同時に俺を見る。


 俺は頷いた。


「お二人とも……伝えたいことがあるんでしょう?」


 ガルムが、ぐっと拳を握った。


 マルガも、胸の前で手を重ねる。


 しばしの沈黙。


 そして――


 ガルムが、一歩前へ踏み出した。


「マルガ殿!」


 その声は、戦場で叫ぶような力強さだった。


「俺は……あなたを、好いている!!」


 マルガの瞳が、大きく見開かれる。


「誰よりも真剣に……!

 ずっと……ずっと想っていた……!」


 ガルムの声が、震える。


「だが……俺はゴリラ族で……

 あなたは熊族……

 種族が違う……

 それが……怖かった……

 あなたを困らせてしまうのではないかと……」


 マルガの目に、涙が滲んだ。


「でも……!」


 ガルムが、さらに一歩前へ。


「種族など……関係ない!

 俺の心は……ずっとあなたを見ていた!

 どうか……俺の想いを……受け取ってほしい……!」


 その言葉に――


 マルガの涙が、ぽろぽろとこぼれた。


「ガルムさん……

 わたしも……!

 ずっと……ずっと好きでした……!」


 マルガの声が、震えながらも響く。


「わたしも……同じでした……

 種族が違うから……

 ガルムさんを困らせてしまうんじゃないかって……

 ずっと……怖かったんです……!」


 マルガが、一歩前へ。


「でも……!

 わたしの気持ちは……本物です……!

 種族が違っても……

 ガルムさんが好きです……!」


 二人の距離が、縮まる。


 ガルムが、マルガの手を取った。


「マルガ殿……」


「ガルムさん……」


 二人の顔が、真っ赤に染まる。


 けれど――

 その笑顔は、嬉しそうで、幸せそうで。


 ミナが泣きそうな声で笑った。


「よかった……本当によかったね……!」


「両想い確定にゃ……!」


 リーネが尻尾をぱたぱた振る。


「美しい場面でしたわ……」


 セレスも、どこか誇らしげだ。


 俺も、思わず笑みがこぼれた。


(……良かった。

 二人とも、勇気を出せたんだな)


 ガルムとマルガは、お互いの手を握りしめたまま――

 照れくさそうに笑っていた。


「ユージ殿……感謝する」


「先生……勇気をいただきました……」


 そう言って並んで店を出ていく二人の背中は――

 どこかぎこちなく、けれど確かに幸せそうだった。


 扉が閉まり、静けさが戻る。



 夕暮れのユージ堂。


 ミナが胸の前で手を組む。


「ねえユージ」


「ん?」


「今日さ……また恋がひとつ、ここで生まれたね」


 ミナの声が、優しい。


「にゃ。癒やし処なのに恋の処にもなってるにゃ」


 リーネが笑い、尾を振る。


「先生は、人の心を整えることにも長けていますから」


 セレスがしれっと言う。


「いやいや、俺は背中を押しただけで――」


 三人は同時に首をかしげた。


「「「それが一番モテるんだよ」」」


「違うと思うんだが……」


 俺が苦笑したところで、三人娘はくすくすと笑い合った。


 ミナがふと、真剣な顔になる。


「でもさ、ユージ」


「ん?」


「種族が違っても、好きなら関係ないよね」


 その言葉に、リーネも頷く。


「そうにゃ。心が大事にゃ」


 セレスも静かに微笑んだ。


「……私も、そう思いますわ。

 種族や、過去や、立場や……

 そんなものより……

 大切なのは、想い合う心ですから」


 三人の視線が――

 じっと、俺を見つめている。


(……なんだ、この空気……)


 俺は少し居心地が悪くなって、窓の外を見た。


 夕陽に照らされた街の人々が、今日も笑いながら行き交っている。

 ゴリラ族も、熊族も、狼族も、猫族も。

 みんな、それぞれの種族で、それぞれの人生を生きている。


 でも――

 ここには、種族の壁なんてない。


 ユージ堂には、ただ――

 癒やしと、笑顔と、温かさがあるだけだ。


(……この場所を、ずっと守っていきたいな)


 そんなことを思いながら、俺はそっと看板に目をやった。


『おかえりなさい、癒やし処 ユージ堂』


 その文字が、少しだけ誇らしく見えた。


 そして今日もまた、夜が静かに降りていく。


 誰かが癒やされ、誰かが想いを伝えられる場所。

 種族を超えて、心が繋がる場所。


 そんなユージ堂の夕暮れは――

 穏やかに、やさしく、沈んでいった。


〈第38話 完〉



【次回予告】


「またケンカしてるのかい、あんたたち」


 酒場の奥で、エルフのとドワーフの冒険者が睨み合う。


「貴様の理論は机上の空論だ!」


「お前の技術は古臭い伝統に縛られてる!」


 種族も、価値観も、何もかも違う二人。

 でも――優しい手が、凝り固まった心をほぐしていく。


 違いを認め合う、不器用な友情。


――次回

第39話「エルフとドワーフの仲直り」

おじさん、喧嘩仲裁する。


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