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お礼

 ん?何か近づいて来てるな。

 速いな。ガキにも教えておくか。

「おい!笛の音を聞いときたい気もするが、何か速いものが近づいてきてるぞ」

「え?魔獣かな。この辺りの魔獣なら僕でも倒せるけど、猫さんは危ないから隠れてて!」

 素早い動きで笛をしまい、こしにつけていた木刀らしき物を手に取り構える。

 ん?俺が危ない?そんな相手がいるかよ。俺に歯向かうやつは…

 あれ?どうやって?

 くそっ。わからねぇ…

「猫さん!僕の後ろに!」

 分かったよ!走ってんだろ!体が小さいんだよ!

 くそっ。

 俺がビビるなんて…。

 うっ!もうすぐそこだ!

「やっぱりここか。この湖で笛を吹くの好きだったもんね…」

 その人間は凄い速さでガキに近寄った。

「おい!構えを…」

 ガキは構えをといてぐったりしてるように見える。

「もう!なんで黙ってどっか行っちゃうの!」

 人間は間髪入れずにガキに言い寄る。

 ヤバイ!殺される!

 ガキよりでけぇし、あの速さはヤバイ!

「ごめん…。センカ姉…」

 その瞬間ガキはでかい人間に抱きしめられていた。

 鯖折りか!?締め上げられる!

 俺が出て行ってもすぐ殺されるか…。

「う……。うわぁぁぁん!」

 ヤバイ!殺される!俺がなんとか気を引けば!

「おい!やめろ!」

 人間はびっくりした顔でこっちを見た。

 手はまだ人間を締め上げたままだ。

 ヤバイな。このままじゃ俺もガキも殺される…。

「何この猫!喋った!」

 ガキはまだ泣いている…。

 どうすればいい…。

「ぐすっ。そうなんだ…。その猫さんは急に現れて、話を聞いてくれて、慰めてくれたんだ。」

 何っ!?締め上げられているんじゃないのか?

 ならどういうことだ…。

 人間は締め上げていたであろう手を離し、こっちに近寄って来た。

「ありがとう。小さな猫さん。あなたが何者なのかは分からないし、聞きたいことは沢山あるけど、それよりもキョウ君が大変な時に近くに居てくれてありがとう。」

 そうか。そういやガキがセンカ姉とか最初に言ってたな。

 命の危険を感じてテンパってたみてぇだな。

 そういやガキはキョウってのか。

「ふんっ!別にそんなんじゃねーよ。寝てんのにギャーギャー泣かれてイラついたんだよ。何言って聞かねーから仕方なくな。」

「それでも…。ありがとうございます。」

 お前もそんな顔すんじゃねぇよ…。

 どうすればいいかわかんねぇじゃねぇか…。

「そうだ!キョウ君、猫さんにお礼しよう!何がいいかな?猫さんが好きそうなおもちゃはあるかな?食べ物がいいかな!」

 コロコロ表情の変わる女だな。

 辛気臭ぇ顔だと思ったら、ぱっと明るくなりやがって。

 それにしてもでかい女だな。

「そうだね。食べ物はどうかな?この前獲った鳥のベーコンを保存してるんだけど…」

「何っ!?ベーコンだと!分かってんじゃねぇか。大好物だぜ。」

 その鳥ごと食べてもいいが、ベーコンは更に美味くなってんだよな。

 ん?鳥ごと?この体じゃ無理だよな…。

「決まり!ヤギのミルクもあるし、すぐ出発しよう!」

 俺は大丈夫だが、猫はミルク次第じゃ腹壊すんじゃねぇか。

 ん?やっぱり起きたばっかで混乱してんのか、さっきからおかしいな。

 まぁ飯くれるってんならまずは飯だな。

「よし。それなら早く連れて行ってくれ。」

「じゃあ僕のかの袋物に入れるかな?」

 そんな小っちぇ袋なんかに…

 入れそうだな。

「よし。入ってやったぞ」

「じゃあ移動しよう。しっかり入っててね」

 うわっ。なかなかの速さじゃねぇか。

 体の内側で魔力使ってんのか。さっきのセンカの速さといい、アイラは人間にも魔力を…

 アイラ?

 くそっ!分かるような分かんねぇような…。

 まぁ、いいか。

 それより温けぇし、少し寝るか。

 ガキを慰めるなんてガラにもねぇことしちまったな…。

 まぁ、飯くれるってんだから…いい…か……。


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