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エピローグ 滅びし名は、再び歩きだす
――その名は、もう忘れ去られたはずだった。
かつて、神聖セントレア王国が建国された遥か古の時代――国を支えし十五の血族が存在した。
人は彼らを“聖15血族”と呼んだ。
その一族たちは、強き魔を操り、王国の礎を築いた英雄たち。その中には、“千寿”と名乗る一族もいたという。
だが、歴史の闇は残酷だった。
戦乱の時代に紛れ、その名は途絶え、忘れられ、封じられ――今や語られることすらない。
知る者は王国史に通じたごく一部の学者か、現存する聖血族の末裔、あるいは王国の最上層部くらいだろう。
民衆の誰一人として、“千寿”という姓に特別な意味を見出す者などいない。
それは、失われた名。
滅びし血筋。
そして、忘れられることを選んだ運命――。
けれど、その名が、今ふたたび動き出す。
すべては、一人の少年とともに。
名もなき孤児として生まれ、誰にも知られず育てられた少年が、軍靴を履き、歩き出したその時から。
彼の名は――千寿蓮也せんじゅ れんや。
滅びし家系の少年は、今、大元帥を目指す。