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9話 グータラ天使とオタクの聖地


『次は〜茅場町〜茅場町でございます。電車をお乗り換えの方はホーム右手の階段やエスカレーターで上った先にあるホームにてお待ちください〜』

「ふぁー……次で乗り換えかぁ。ミカエル……も寝てら」


電車で座席に座っている間に二人して寝てたみたいで、ミカエルを起こして一度電車を降り、別の電車に乗って向かう先はオタクの聖地である秋葉原。

ゲームで使っているコントローラーの調子が悪くなってきたので新しいのを買おうと久しぶりに秋葉原に行こうとしてたら「私も秋葉原に買いに行く物があるから行こうかな」とミカエルもついて来たので、二人で秋葉原へ行く流れに。


『次は〜秋葉原〜秋葉原でございます〜』


おっと、乗り換えた後は秋葉原まで早いね。

電車が駅に到着すると、私たちはホームに出て階段を上り、改札を通って更にエスカレーターで上へ。

そしてエスカレーターから降りると眼前にあるのは大規模な電気屋のヤドバシカメラに別の電車へ乗るための改札口。


「おお〜……ここが秋葉原か!」

「あれ、ミカエルって秋葉原に来るの初めてだっけ?」

「どんな所かは知っていたが、実際に来るのは初めてだな」

「それならミカエルの買いたい物がある店の場所ってわかる?」

「それは事前に調べてあるから問題ない。どのみち他の場所もあちこち見て回りたいから、目的の店に行くのは後の方になるがな」

「私もゲームショップに行ければいいから、今日はミカエルの行きたいとこ回ってこうか」

「良いのか?ありがとうスズ。それなら最初はガチャポンランドに行ってみようかな」


ーーガチャポンランド

秋葉原にある三階建てのビルで、建物内を埋め尽くすほどのガチャガチャが置いてある店である。

デパートに置いてある普通のガチャガチャを始めとして、全国区でも流通の少ない希少なガチャガチャが置いてあるので秋葉原のオタクたちオススメスポットの一つである!


「……ってSNSで見たのもあって少し気になっていてな。私のやってるゲームのでガチャが置いてあったら少し回してこうかと」

「私も何か良さそうなガチャがあったら回そうかな……」


希少なガチャが何かってのも気になるしね。

普段私が回すガチャというとソシャゲのレアガチャだから、普通のガチャガチャを回す機会は実は全然なかったりする。

とりあえず最初に行く場所が決まったので、古本屋やパチンコ屋のある道を通って大通りに出る。


「うへー、日曜日だから人が多いね」

「何かイベントがある訳でもないのにこの人混みか……日曜日の秋葉原は凄いな」


大通りは若い男女がたくさん歩いていたり、メイド喫茶の客引きで可愛らしい格好をした女性が何人も立っていてチラシを配ったり、店の前で集まっている人だったりでごった返していて普通に歩くだけでも人の波に飲まれそうになる。

ひとまず信号を渡って秋葉原にある大きなゲーセンの前を通り、そのまま道にそってまっすぐ歩いていく。

何度か信号を渡り、十字路を左に曲がったその先に目的の『ガチャポンランド』の看板のある建物を見つけた。


「ここがガチャポンランドか、入り口からもうたくさんのガチャが置いてあるのだな」

「今アニメでやってるやつのラバーストラップとかフィギュアが多いね」

「よくわからない物も結構あるな」

「なんだろう、おもちゃ系のガチャって不思議と回したくなってくる」

「せっかく来たんだし、私も何かガチャを回してみるか」


たまにはこういうのにお金使うのもいいでしょ。

私は銃のおもちゃのガチャを、ミカエルはパズル系のおもちゃのガチャをそれぞれ引いてカプセルから中身を取り出す。


「ゲームでありそうなハンドガンみたいなやつ出た。え、これ付属の弾を入れて撃てるの?よくできてるなぁ……」

「私は色を揃えるキューブのおもちゃが出た。おお、結構しっかり遊べるな」


三百円はちょっと高いと思ったけど、出来がかなり良いからこれは三百円払った価値あるかも。

肩掛けカバンにガチャで引いたおもちゃを入れて改めてガチャポンランドの中を見て回っていく。


「む、十種類のゲームが遊べる液晶ミニゲームだと?」

「昔そういうの持ってたなー。あまり面白くなくてすぐ飽きちゃったけど」

「百円ならさわってみるのもアリだな……一個ゲットしとこう」



「あ!これあのゲームの缶バッジだ!」

「本当だ。どれ、一回ガチャを回して……おお!魔法を反射できるあのバッジではないか!」

「これ、もしかしてシークレットじゃない?出てくるのが五種類とシークレットが一種類って書いてあるし」

「一発でシークレットを引き当てるとは流石私だな、ムフー」

「うーん、これはドヤ顔になるのもわかる気がする」




「『お願いぷちエンジェル』ってやつにミカエルの名前があるよ」

「ほう、これは私たち天使を題材にしたガチャもあるのか」

「出てくるのはガヴリエル、ラファエル、サリエル、ミカエル、ハニエル、カマエルだってさ」

「天界に居た時に聞いた名前ばかりだな」

「あ、やっぱり天界にご本人が居るんだ」

「あまり話す事は無かったが、どいつもこいつも天使らしく真面目〜な連中だったよ」

「普段見てる天使がミカエルだから真面目な天使って想像つかないなぁ」

「まぁ私みたいに人間界に来る事は無いと思うから気にする事でもないさ。それよりこれも一回くらいガチャを回してこうか」

「何が出るかな〜っと、赤髪の少年って事はガヴリエルかな?」

「私の知るガヴリエルはオレンジ色の髪だから赤髪だと違和感が凄いな……」

「あ、そうなんだ……私もガチャろ」

「スズのは何が……金髪の男、という事は私か」

「おお、一発でミカエルが出た!」

「良かったなスズ。しかしこのフィギュアだと私が男性になってるのは少し複雑だな……」

「フィギュアの制作陣はミカエルに会ったわけじゃ無いだろうから……」

「むぅー」


ーーと、ガチャポンランドの中を一通り巡ってガチャを回して話して楽しんでから「そろそろ次へ行こうか」とガチャポンランドを後にした私たち。

次に向かったのは秋葉原の有名なゲームセンターの『Hoy』の二階。

クレーンゲームや音ゲー、シューティングゲームが置いてあるフロアだ。


「ぬー、このクレーンゲームはどうなっているんだ。全然取れないではないか」

「これは持ち上げるよりも上手いこと押して落とすのが正解だね。今の位置からなら……お、いい感じに動いた」

「なるほど、では試してみるか……おお!本当に取れたぞ!」

「おー、良かったねミカエル!」

「……しかし、クレーンとは本来物を持ち上げるものではないのか?何かがおかしい気が……」

「……たぶんそれ以上はいけない」

「むー(納得してない顔」



ーーと、クレーンゲームで景品を取ったりシューティングゲームで遊んでから三階の格闘ゲームコーナーへ



「うわ、ボスキャラの必殺技をくらったら体力が七割消し飛んだぞ!昔の格闘ゲームは凄いな!」

「話には聞いてたけど、CPUの超反応必殺技がエグいな〜。特にこの当身が超反応で出てくるのは……って言ったそばから当身投げぇ!?」

「今の格闘ゲームのアーケードモードはかなり優しい難易度になったのだな。と言うよりは昔のが難しかったと言うのが正しいのか?」

「両方かなぁー。あっ、乱入された」

「ほう、頑張れよスズ」

「頑張って勝ちたいねー」



ーー結果は負けたけど、アーケードモードで遊んだりミカエルと対戦して続きは帰ってからやろうとほどほどにゲーセンを出た私たちであった。



「そろそろお腹空いたし何か食べる?」

「そうだな……このゲーセンの裏手にラーメン屋とカレー屋があるみたいだぞ」

「ミカエルが食べたい方で良いよ」

「なら今日はカレーの気分だな」

「オッケー。このゲーセン近くだと泉屋カレーだったかな、あそこのカレー屋私は好きなんだよね」

「あ、でも私あまり辛いのは苦手なんだが辛さは……」

「チーズカレーならチーズが辛さを結構抑えてくれるから、辛いのが苦手な人にオススメかな」

「それは良いことを聞いたな。では早速行こう!」


ミカエルに押される形でゲーセンの裏手に回り、目的のカレー屋に入ると日曜日の昼時なのもあってかカレー屋は混雑していた。

店員さんに二名ですと伝え、スタンプカードをもらって入り口近くの食券機で食券を買ってテーブル席が空くのを待つ。


「スズ、スタンプカードにライス五百グラム以下でミニハムカツが付くと書いてあるぞ」

「気がついた?このカレー屋はね、ライスがある程度まで無料で増せるのと、スタンプカードがあるとミニハムカツがサービスで付くんだよ」

「それは良いな。それでライスがある程度まで無料とは?」

「なんと一キロまで無料です。だから私このカレー屋好きなんだよね〜」

「それは確かに大食いのスズ好みだろうな」

「テーブル席でお待ちの二名様ー、こちら席が空きましたのでどうぞー」

「お、呼ばれたし座ろっか」

「だな」


空いたテーブル席に座って店員さんに購入した食券を渡し、ミカエルはライス普通盛りで私は最大の一キロで注文する。

注文した瞬間に一瞬周りからギョッとした視線を受けたけど何だったのやら。

注文してからしばらく待つと、店員さんがライス普通盛りのミニハムカツが乗ったチーズカレーとライス一キロのチーズカレーの皿が私たちの前に置かれる。


「おお~これは確かに美味そうだ」

「でしょ?それじゃ早速いただきます」

「いただきます……ん、確かにカレーの辛さはあるがチーズのおかげであまり辛さを感じずに食べれるな」

「私がオススメって言った理由がわかったでしょ?」


秋葉原に来ると高頻度で泉屋カレーに食べに行くから毎回違うカレーやトッピングを選ぶのだけど、今日はミカエルにあわせてのシンプルなチーズカレー。

久しぶりに食べたけどとても美味しくて食が進む進む。

ミカエルも「美味いな」と笑顔で食べてるし泉屋のカレーが気に入ったみたいだね。

あ、せっかくだし写真撮ってSNSやJiscodeに飯テロ写真あげてもよかったかも。

まぁ次の機会でいいか!


「ふー、美味しかった」

「私もごちそうさま、実に美味かったぞ」


二人ともカレーを完食し、次に向かうのはカレー屋近くにあるレトロゲームショップの『ハイパーサラダ』のあるビル。

ビルの入り口入って三階と四階がレトロゲームショップになっていて、ミカエルが購入する目的のものは四階にあるためエレベーターで上に上がっていく。


「ここにあるのが全部レトロゲームか!」

「タイトルは知ってるけど、私が産まれる前のゲームばっかりでやった事無いのばっかりだ」

「ここなら私が買いたいのも打ってるはず……やはりあったな、レトロゲーム機」

「ミカエルの買いたいものってゲーム機だったの?」

「ちょっと昔のゲームも遊んでみたくなってな。ふふふ、帰って遊ぶのが楽しみだ」


「早速買ってくる」とレトロゲーム機を二つといくつかゲームソフトを持ってレジへ向かったミカエル。

いつの間にかゲームソフトも選んでたらしい。

今日の私の目的はゲームソフトじゃなくてコントローラーの方だけど、せっかくだし私も中古ソフトで何か面白そうなの捜してみよ。


「初代モンスタースレイヤー……スペース硫黄物語……あ!?」


私は『それ』を見つけた瞬間、思わず大声を出してしまった。

というのも、私が今手に取った格闘ゲームの『罪の歯車』シリーズの四作目の家庭用版。

そう、格闘ゲームの家庭用版なんだけど、これはだけどただの家庭用版じゃない……今となっては激レアソフトの初期版!

四作目の家庭用版は二種類あって、サブタイトルの『*RECORDアスタリスクレコード』の部分が初期版の赤と後期版の青の二種類があり、初期版の赤の方はなんとバグの数が非常に多いという問題作なのだ。

あまりにもバグが多すぎた結果、事態を重く見たゲームメーカーがバグを修正した後期版の青文字の方のゲームを販売および赤文字の回収、後期版との無料交換を行っていた……という事があった。

当時の販売年と私の産まれた年の関係で触る機会は無かったけど……これは格ゲーマーとしては触ってみたさがかなりある。

値段は……レアソフトだから高いけど財布の中身と貯めていたお小遣いを考えれば手は出せる。

でも一万円近い値段は流石に高い……いやでもこの機会を逃したら次来た時には売れて無くなってる可能性が……どうする。

どうする私よ!



〇 ● 〇 ● 〇 ●



「いやー、ゲーム機の他に面白そうなゲームも買えてよかった」

「そう……よかったね」

「うむ、帰ったら早速遊んでみるとするか。ところでスズはハイパーサラダで何か買ったのか?」

「昔の格ゲーでレアなソフトを一つね……高い買い物だったな……しばらくは節制しないとな……」

「スズ、目が虚ろになってるが大丈夫か……?」

「だいじょぶだいじょぶ、ちょっと明日からお小遣いを貰える日まで食費がかなり減るだけだから」

「そのうちバイトとかしてみたらどうだ?」


確かにそのうちアリかもしれない。

高校生ともなれば色々と今後入り用になるだろうし、軽いバイトくらいはしてみるのも考えてみよう。

さて、高い買い物でお金が消し飛んでダメージ受けてたけど、そろそろ気を持ち直して。

ゲームソフトを買って予定外のお金は使ったけど、私の本来の目的のコントローラーはまだ買ってなかったので、近くのコンビニにあるATMでお金をおろしてからゲームショップに寄ってコントローラーを購入してお互いに買いたいものは買った。

その後も秋葉原内でゲーセンで遊んだり本屋など色々と見て回り、夕方になって夕食を食べてそろそろ帰ろうかという時間に。


「もう五時過ぎだし、暗くなってきたからそろそろ帰ろっか」

「そうだな、今日は私も買うものは一通り買ったしそろそろ帰ってゲームがしたい」

「色々と買ってたもんねー」

「昔のゲームは今のゲームより難しいものが多いらしいが、私の手にかかればクリアできるはずだ」

「レトロゲーム配信とかしたら需要ありそうな気がする」

「配信か……また秋葉原に来た時にでも機材を揃えてみるか」


ミカエルのレトロゲーム配信、ちょっと見てみたさあるなぁ。

秋葉原に来た時と同じ電車に乗って地元の天塚町へ帰るまでの間、私とミカエルはスマホで配信のやり方と機材の事を調べるのだった。



〇 ● 〇 ● 〇 ●



ーー天塚町駅前

町の入り口でもある駅前にはデパートを始めとしてホテルや高層マンション、数は少ないが企業名の書かれたビルも建っており、日が落ちてすっかり暗くなった今はビルから出てきたスーツ姿の男女がそれぞれ帰路についたり開いている居酒屋など飲食店に入っていく姿が見受けられる。


「…………」


その様子を眼下に見下ろす一つの人影があった。

ホテルの屋上、暗い夜空の下で夜風に吹かれながら立つその人影がホテルの屋上に付いたライトで照らされる。


「……見つけましたよ」


ライトによって映し出された人影は青髪の女性で、眼鏡越しに映る瞳は髪色と同じ青い瞳に白い服。

そして一番目を引くのはその女性の背にある『大きな純白の翼』だろう。

女性は眼下に広がる天塚町駅前の景色にて一点をじっと見つめる。

青い瞳に映るのは、たった今駅から出てきた二人の人物……その片方。


「貴女を天界に連れ戻しに来ましたよ」


女性の瞳に映るその人物は、金髪でその背に純白の翼が見受けられる。

もう片方の白髪の少女と共に駅を離れて町の中へと歩いていく様子を瞳に映し一言ーー





「……ミカエル」





ーーそう呟くと女性はホテルの屋上からジャンプすると、翼を大きく羽ばたかせて後を追うように夜空へと消えていった。


◆この女性はいったい……

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