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8話 お寝坊JKとお助け天使


「……」

「すぴ〜……」

「……?」


いつもより少し早く目が覚めたら、何故かミカエルが私の横で寝てた。

夜中寝る時はそれぞれの部屋で寝たハズだけど……夜中にトイレ行った後で寝ぼけてミカエルの部屋のベッドに間違えて入っちゃったかな?

起こさないように部屋から出……あの机に置いてあるの、私の学校用のカバンじゃない?

ミカエルの部屋に置いた覚えは無いし、やっぱここ私の部屋じゃん。


「シュークリーム……ふへへ」


夢の中でまでシュークリーム食べてるのかこの天使。

まぁミカエルの事はこのまま寝かしといていいや。

いつもより少し早く起きちゃったけど二度寝するには微妙な時間、でも特にする事も無いし適当にネットサーフィンでもして時間潰そう。

さてスマホは……あ、ベッドの下に落ちてた。

手を伸ばすだけじゃ届きそうにない位置だし、仕方ない一度ベッドから出るか……。


「……あれ?」


ベッドから降りようとしたらグッと身体の動きが止まる。

手足の自由は効くけど身体の動きが途中で止まる。

金縛りではなさそうだけどいったいーー


「抱き枕〜……くか〜……」


ーーはい、ミカエルに掛け布団ごと抱きつかれてましたわ。

普通に動けなくてちょっと困るから、その腕ほどかせてもらうよーーって力強くて腕をほどけない!

ミカエルは起きそうにないしスマホも取れない。

どーしたもんかなーー……


「……すぴ〜……」

「くかー……」








ーーピリリリリリ

ーーピリリリリリ


「……んぅ?」


なんの音……?

聞き覚えのある音のような……あー、目覚ましの音かこれ。

スマホがどこかに……あれ?

音はするけど姿はなし……あ、ベッドの下に落ちてた。


「む、やっと起きたかスズ」

「ミカエル……?おはよ……」

「ああ、おはよう」

「なんでミカエルが私の部屋に……?」

「夜中に寝ぼけながらトイレに行ってな、自分の部屋に戻ったと思ってたらスズの部屋で寝ていたのだ」

「あぁ〜……」

「それより、時間は気にしなくていいのか?」

「じかん……?」


眠くて回らない頭と動きの鈍い身体を何とか動かしてスマホの時計を見る。


「えーと……八時十五分……ゔぁ!?」


一気に目が覚めたわ。

ヤバい遅刻じゃん!


「寝坊して遅刻とは自己管理がなってない証拠だぞスズ」

「普段からずっと暗い部屋でゲームと昼寝ばかりのミカエルにだけは言われたくないセリフだ……!」

「私は学校に行ってないからなー。ほらほら、急がないと大変だぞスズー」


くっ!自分は遅刻という単語とは無縁な生活してるからって余裕そうな表情を……っ!

急いで着替えている間に「学生とは大変だなー」とかのんきに言ってくるので少しムカついたからミカエル頭にチョップをかまして着替え終え、カバンとスマホを持って急いで家を出て学校まで走っていく。

うおおおお!間に合ええええええ!!!



〇 ● 〇 ● 〇 ●



「スズめ、本気でチョップする事はないだろうに……いたた」


人間に比べるとはるかに頑丈な天使の肉体には大したダメージにはならないが、脳天に本気のチョップをくらえば天使の肉体といえど痛いものは痛い。


「二度寝しようにも目が冴えてしまったな……普通に起きるとするか」


腹も減ったし、ママさんの作った朝食でも食べるかーーそう思ってふとスズの机の上に目を向けると、机の上に乱雑に置かれた一冊のノートが。


「これは……数学のノートか」


やれやれ、遅刻しそうになったあげくに忘れものとはな。

スズは普段しっかりしている様に見えるが、案外おっちょこちょいなとこがあったのだな。

ノートをパラパラと数ページめくると、書かれているのは学校の授業でやった箇所なのだろう、字の綺麗さはともかく内容は綺麗に纏められていて分かりやすくなっている。

私だったらこんな綺麗に纏めたりしないで「その時分かればいいか」とか言って適当にノートを書いて終わりだろうな……。

おっと、ノートよりも今はママさんの朝食だ。

私はノートを閉じて机の上に置き、スズの部屋を出てキッチンへと向かった。


「あら、おはようミカさん」

「うむ、おはようママさん」

「朝食なら今準備するからちょっと待っててね」

「ありがとうママさん」


今日の朝食は卵焼きとハムを何枚か焼いたもので、ママさん曰く「大した朝食じゃないけどいいかしら?」と言っていたが、朝ならこれでも充分良い朝食だと思う。

素直な感想を食べながら言うと「ありがとうね」と逆にお礼を言われて少し戸惑ってしまった。


「たまに他のお宅の主婦同士で話す事があるんだけど、他のお宅は朝から魚を焼いたりもっと手間暇かけて作ってるって聞いたから、うちの料理ってどうなのか気になってたのよね」

「そういう話って大抵は見栄を張ってそれっぽく言ってるだけの時もあるから、あまり真に受けなくていいと思うぞ」

「そうよねぇ……ふふ、ミカさんに話したら気が楽になったわ」

「助けになったなら何よりだ。そしてご飯おかわり」

「はーい、ちょっと待ってね……はいどうぞ」

「ありがとうママさん」


うむ、今日もママさんの作るご飯は美味いな。

特にこの卵焼き、甘めの味付けなのがとても私好みの味付けで気に入った。


「今日はスズが珍しく朝ご飯も食べずに学校へ行ったから、炊いたご飯がたくさん余っちゃうわね」

「そういえばスズが寝坊したって慌てて学校へ行っていたな」

「あら、ご飯作ってたから時間見てなかったけどそういう事だったのね」

「相当慌ててたのか、さっきスズの机の上にノートが置き忘れてあったな。見たところ数学のノートだったみたいだが」

「スズったら……あれ?そういえば昨日課題があるからやらなきゃとか言ってたけど、もしかして忘れてったりは……」

「課題?」


課題か……そんなのがあったのか。

……いや待て、確か昨日ゲームに付き合ってもらう時に「課題終わるまで待ってて」とスズに言われた覚えがあるな。

その時にチラッと見えたが、本を開いて何か書き込んでいたのを見てすぐ部屋に戻ってしまったが……もしかしたらあのノートがその課題だったりするのか?

スズのあの今朝の慌てっぷりだとノートを忘れた事に気がついてない気がするな……。

……仕方ない、昨日スズには私のゲームに付き合ってもらったからな。

少しくらいスズの事を助けるのも悪くないか。


「あの子ったら……後で忘れものを持ってった方がいいのかしら……」

「それだったらママさん、スズの学校に忘れものを持っていくのは私が行ってくるよ」

「あら、それは助かるけど……いいの?」

「帰りについでに買いたいお菓子もあるのでね」


さて、たまには人助けでもするかと朝食を食べ終えた私は部屋に戻って着替えると、スマホに着信がきていた事に気がついた。

スズからのメールで「課題をやったノートを忘れたから持ってきて!お願い!」との内容だった。

やれやれ、スズからも直接言われたら持ってかない訳にはいかないな。

しかし二限目の数学までに持ってきてほしいとなると、あまり時間をかけられないという事だし早めに行くとしよう。

私はスズの部屋に入って机の上のノートを持ってママさんに「行ってくる」と伝えて家を出てスズの学校へと向か


「……待て、スズの学校ってどっちにあるんだ?」


しまった!スズの学校がある場所をまったく聞いてなかった!

確か天塚西高校という学校名なのは知っているが、それ以外は……そうだ!


「こういう時に役立つのが文明の利器、天界に比べると人間界は便利で助かるな」


ジャケットからスマホを取り出して行うのは地図検索。

地域と学校名を入力して検索すれば……ほら出てきた。

ふふ、私は賢いな、ムフー。


「家からだと徒歩で約三十分以上とはなかなかに遠いな……」


直線距離だともう少し早いと思うが、住宅街で道が曲がりくねっていて地図を見ながらじゃないと場所がわからなくなりそうだ。

だがそれは人間の話。

私は天使で、この背には翼がある。

なら飛んでいけば良いじゃないか!


「学校の場所は分かったし飛んでいくか」


私はスマホを片手に、反対側の手にノートを持ちながら翼を羽ばたかせて宙に浮き、学校のある方角に向かって飛んでいった。


「えーと、方向はこっちであってるかな?」


スマホの画面とにらめっこしながらまっすぐ飛んでいくと、スマホに表示された目的地の学校が確認できた。

ふむ、ここがスズの通っている学校か。

飛んだまま上からぐるりと学校を外側から眺めると、グラウンドと思われる広い場所には数十人の人がいた。


「アレは……体育の授業か?」


見たところ男子生徒が二チームに分かれてサッカーをしているな。

女子が居ないのは別々の場所で授業をしているという事か?


「体育の授業をしているという事は、今の時間は授業中か。どのみち待つ必要がありそうだな……」


私はグラウンドから離れて正面入り口の前に降り立つ。

思ったが、こういう場所には生徒以外が入るための入り口などあってもよさそうなものだが、お客様入り口的なのはないのだろうか?


「おや……?どちら様ですかな?」

「む?」


ふと後ろから声が聞こえたので振り向くと、作業着を着て箒を手にしたおじさんが立っていた。

そうだ、この人に聞いてみよう。


「すまない、私はミカエルという者だ。今日はこちらの生徒の忘れものを持ってきたのだが、ここの者以外が入るにはどうしたらいいかと思っていてな」

「おや、そうでしたか。それでしたら……」


どうやらこのおじさんに聞いてみて正解だったようだ。

私はおじさんに教えられたお客様入り口の方に向かい、入り口の受付の女性にスズの忘れものを持ってきた旨を伝えると、軽く書類を書いて『お客様』と書かれたバッジを受け取ったのでジャケットに付ける。

忘れものを持ってきただけで大層なものを付けるのだな……と思っていたら部外者が黙って入り込んだと思われないための措置らしい。


「それで、一年B組はどこにあるのでしょうか?」

「一年B組でしたら二階ですね。近くの階段を上がって二階に出ましたら右手の方に一年生の教室がありますので」

「二階だな?ありがとうございます」

「時間的にもうすぐ授業の終わる時間になるでしょうから、教室に着く頃にはちょうど良いタイミングかもしれないですね」


それならスズの居る教室の前で待つのでもいいかもな。

私は教えられた通りに行くと『1ーB』と表札の付いた教室を見つけた。


「ふむ、まだ授業中だったか……」


教室の入り口のドアについている窓から中の様子をこっそりと覗き見ると、教師と思われる男性が黒板に英語を書いている。

それを黒板に向かいあうように座っている多くの男女がノートに書き留めている……む、あの目立つ白髪はスズか。

どうやらスズも真面目に授業を受けているみたいだな。


ーーキ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン……


「お、これは授業が終わったという事か?」


私はいったんドアから離れると、授業が終わったからか1ーBや他の教室からも学生が何人も出てきた。

生徒以外が学校に居るのが珍しいのか周囲から注目されている気がする。

っと、今はそんな事を気にするよりスズにノートを渡さなければ。

私は教室の中へ入ってスズへ声をかけた。


「居るかスズ?」

「ミカエル……!?」

「メールで私を呼んだだろう?ほら、忘れ物のノートだ」

「助かった〜……!ミカエルありがとう!」

「よかったねスズ!」

「次が数学だったからギリギリセーフ」


確かスズの友人の……留美と葵だったか。

以前会った時よりもスズと仲が良さそうで何よりだ。


「さて、渡すものは渡したから私はそろそろ帰らせてもらうぞ」

「あれ、もう行っちゃうんですか?」

「一応部外者だからあまり長居するのもよくないだろう?それに早く帰ってお菓子を食べながらネトゲがやりたいのだ」

「最近ネトゲにハマってるねー」

「ファンタジーアースオンラインが思ったより面白くてな……では私は帰るぞ、授業頑張れよ三人とも」


そう言って私は教室を出て、さっきの受付に寄って学校にバッジを返却して外に出る。

後はコンビニでお菓子を買って帰ってネトゲの時間だな。

私は翼をはばたかせて空を飛んでコンビニへとまっすぐ向かっていった。



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