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6話 グータラ天使たちと親の居ない日


「え、お父さん明後日から出張?」

「そうなんだよ、上司から急に栃木に出張に行けって言われちゃってね」

「大変だねぇ」

「それでな、明後日から一週間は帰ってこれないから今日中に三人に伝えておこうと思ったんだ」


夜七時、早めに帰ってきたお父さんを含めた四人で晩ご飯を食べている最中に「ちょっと良いかな」と話を切り出してきたお父さんからの出張発言。

本当に急じゃない?とは思ったけど、お父さん曰く「抱えてる案件の事でもあるからどのみちいつか出張に行く可能性はあった」とかで、予定より早く事が進んだ分出張に行く予定も早まった……という。


「それでな、実は千春も栃木に行く事になるからよろしくな」

「そういう事だから家の事はスズとミカさんに任せたわよ」

「ふんふん……なんて?」


なんか今しれっと聞かされたけどなに?

お母さんも?


「帰る時に先に千春にはメールで伝えてたんだが、栃木への出張が今後何度かあるかもしれないとかで会社が栃木にアパートを用意しててな。ビジネスホテルなら自分一人でも何とか大丈夫だったんだけど、アパートで暮らすとなるとその……滞在中の料理とか洗濯とか色々……な?」

「要するに、この人仕事はできてもそれ以外が壊滅的なのよ。それでお母さんにも来てほしいってメールしてきたのよ」

「あ、そゆことね」


まぁ仕事の事となると「大変そうだけど頑張ってね」としか言えないのでお父さんにそう言うと、お父さんは「家族のために出張頑張るかぁー!」と気合いが入ったようで勢いよくご飯を食べだした。

仕事頑張ってくれそうだしまぁヨシ?


「パパさん」


話の間黙ってご飯を食べていたミカエルがコトリと茶碗と箸をテーブルに置き、お父さんを見据える。


「お、何かなミカさん?」

「いえ、私からも仕事頑張ってくださいという応援を」

「おお……ありがとうミカさん。二人から応援されるなんてお父さん嬉しいなぁ」

「それと」


それと?


「栃木の美味しそうなお土産をお願いします!」


お土産は遠足じゃなくて仕事だし難しいんじゃないかな……?


「買って帰れそうならお菓子系のお土産でも良いかな?」


あれ、案外そうでもない?


「ぜひ!」

「わかった」

「ありがとうパパさん!」


……私の分もお願いしようかな。



〇 ● 〇 ● 〇 ●



ーーという話があってから二日後……つまり今日がその日。

お父さんの出張に着いて行く形でお母さんも今日から栃木へ行っているから、その間家に居るのは私とミカエルの二人。

朝早くにはもう二人は家を出たので、これから学校へ行く私を除いたら家にはミカエル一人での留守番となる。

なので私は家を出る前にとミカエルの部屋に赴き、ベッドに寝転がって携帯ゲーム機を起動させているミカエルの横へ。


「ミカエル、特に通販とか注文してないから電話とかインターホンが鳴っても出なくて良いからね。それと外に買い物行くとしたらドアや窓の鍵かけるの忘れないでね?」

「私に任せてくれスズ、ゲームをしてる間は何かが来ても出る気は一切無いからな」

「……せめて私の電話には出てね?」

「んっ」


返事の気力の無さとは正反対に『グッ!』と携帯ゲーム機片手に良いサムズアップで返事を返してくれた。

まぁでもミカエルなら大丈夫かな。

通販で買った物が来る日は自分で把握してるだろうし、私の電話やメールはちゃんと出てくれるからね。

さてと、そろそろ学校に行かないと遅刻しても不味い。

家の鍵は……かけた

忘れ物は……問題なし

スマホのバッテリー……問題なし

良し!とチェックし終えたところで学校へと向かって歩き出す。

しばらく両親が居ないってなると晩ご飯は私が作る必要があるとして……いや、ウーバーを頼むのも選択肢の一つかな。

ミカエルの事もあるから一人で食べて帰るんじゃちょっとかわいそうだし、友達にも向こう一週間は遊びとか誘われても行けないって事伝えとかなきゃ。

後で埋め合わせとか考えたほうが良いのかなーなどあれこれ考えてるうちに気がつけば学校の前。

んーむ、これ以上考えるのは後で良いや。

何にしたって『しばらく放課後遊べないんだごめーん』っていう話だけだし。

靴を履き替えて教室へ行くと、既に留美と葵の二人は教室に居て教室の後ろで喋っている。

私が教室に入ったのが後ろからだから二人もすぐ気付いたみたいで「おはよー」「おはー」と軽い挨拶をしながら自分の席に荷物を置く。


「そうだ、先に二人に言っておくんだけど、今日からうち両親が出張で居ないから放課後遊びに行くのちょっと難しくなるんだ」

「そうなんだ。それじゃあ今はスズ一人……じゃなくてミカエルさんと二人って事?」

「一週間くらいだけどね」

「でも、スズ一人ならともかくミカエルさんが居るなら大丈夫そうな気もする」

「だよね!天使って真面目系とか誠実ってイメージがあるし、ミカエルさんも天使なら家の事はやれそうに思えるな」

「ん……んぁーー……ん……うん……んー……」

「えっあれ何スズのその反応は」


そうかー、この前スイパラで会って話はしたけど、ミカエルの普段の事については話してなかったなーー。

留美の言うイメージ全部ぶち壊しだけど良いよね……言っちまうか!


「ミカエルの事なんだけどね……」

「「うん……」」

「……家事、全然できないんだ」

「「……へ?」」


最初は見た目だけならそういう人には見えないからね、その反応はわかるよ。


「とてもそういう感じには見えなかったけど……」

「意外な欠点」

「まぁお母さんに指示された部分ならなんとかってレベルではできるんだけど、一からやろうとすると全然ダメってやつだね」


なので私も最初、家事をやらない理由についてミカエルに聞いたことがあって、その時の会話はまだ覚えているーー


『ミカエル、一応居候なら何か家事を手伝ったりした方が良いんじゃないの?』

『スズ、私は家事をやらないんじゃないんだ……できないんだ!ムフー』

『ドヤ顔で威張って言うことじゃないでしょそれ』


ーーなんであの時無性に腹立つドヤ顔で言ってたんだろうなぁ。

今でもわかんないけど。

実際、一から家事をやってみてって言ったら大変な事になりまくりで、お母さんから「気持ちだけ受け取っておくわ」と戦力外通告をくらっていた。

グータラ気質で普段から「面倒な事はする気が無い」とよく言うミカエルでも思う事があったのか、部屋に戻っていく時の背中はちょっと哀愁漂っていて、翼も心なしか普段の純白さがやや失われているように見えた。


「え、それでミカエルさんはその後どうしたの?家事の練習をし始めたりは……」

「いや?家事はできないからやらんって言ってすっぱりやらなくなった」

「諦めちゃった……」


その後だったのかな、お母さんがミカエルの部屋に入って「ミカエルさんに何かやれる事があったら何でも良い、それでちょっとでも助けてくれたらお母さんたちはそれで良いのよ」とミカエルに言って部屋から出てきたのを見たのは。

結局、ミカエルが家事をする事は全く無くなって基本食べる寝るゲームの生活になったんだけど。


「ニート天使……?」

「あたしはミカエルさんの真面目系とか誠実そうってイメージが全部壊れてったよ……」

「でも一つミカエルがうちに大きく貢献してる事があって、私もつい最近だけど知った時は驚いたよね」

「え、なになに?」

「気になる……」

「うちにちゃんと生活費入れてくれてる」

「「おおー!」」


二人から「ミカエルさんやれる事あったじゃん」「生活費入れてるのは凄い頑張ってる」と大絶賛。


「もしかしてミカエルさん何かバイトでもしてるの?」

「あーそれがね、バイトの類はしてないかな。バイトとか面倒な事はしたくないって」

「天使が祝福した壺とか売ってるの……?」

「本物の天使が売ってる分たち悪そうだねそれ……ってそうでもなくて」

「えー、じゃあ何して稼いでるの?」

「株」

「すご!?」

「株トレーダー……!」

「働かずにお金を稼ぐ方法を捜してたら株に行き着いたらしいよ」


今でも思うけど、普通にやったら失敗して人生に影響でそうなムーブ全開だよねこれ。



〇 ● 〇 ● 〇 ●


両親の出張の話からミカエルの話に大幅に脱線したけど、とりあえず向こう一週間はムリ〜ごめんね〜と伝えたからOKかな。

登校してからの話以外は授業を受けて、三人で昼ご飯食べたり、休み時間に喋ったりしてあっという間に放課後に。


「じゃーねースズー」

「また明日……」

「また明日ねー」


校門から少し歩いた三叉路で二人と別れ、まっすぐ帰路へ……おっとその前に。


「帰りに何か買ったほうがいいものってあるかな」


コンビニで買える物なら帰りに買ってけるし、スーパーで買うのに比べると高いけどまぁいいでしょ。

カバンからスマホを出してミカエルに電話をかけると、起きてゲームしてたタイミングだったかコール数が早いうちに出てくれた。


『スズか、学校はもう終わったのか?』

「うん。それで帰りにコンビニで何か買い物でもって考えたんだけど、ミカエルは何か欲しいものある?飲み物とかお菓子とか」

『なら洋甘堂のシュークリームを』

「人の話聞いてた?」


ミカエルには何も買わなくていいか。

通話を切ろうとする寸前で『すまない!冗談だから切らないでくれ!』と慌てて引き留める声が聴こえたので再度スマホを耳に当てる。


「改めて。コ ン ビ ニ で、何か欲しいものは?」

『わかったから強調しないでくれ……その前に、スズの寄るコンビニは何だ?』

「え?フレンズマートだけどそれが?」

『フレマか……なら丼プリンなる物が売っているハズだ。それといつものミルクティーを頼む』

「オッケ」


ミカエルとの通話を切ってコンビニへ向かう。

確かにあのコンビニには各種コンビニ特有の商品……とでも言えばいいのか、丼プリンという通常よりも大きいサイズのフレマ限定商品が売っている。

ちなみに他のコンビニだと、期間で変わるパフェだったり揚げ物の種類が多かったり限定の惣菜パンだったり……と、それぞれのコンビニの特色が出ていて、その地域限定のコンビニなど全国展開していないコンビニでも弁当がめちゃんこ美味い(仲の良い格ゲーマー談)などあるのを聞いた時は一度食べてみたいと思ったよね。

とか考えてたらお腹空いてきたし、私もパンか何か食べるもの買お。

ではコンビニに着いたのでいざ中へ。


「らっしゃっせー」


疲れ切った店員さんの声を聞きつつカゴを手に取り飲料のコーナーへ。

ミカエルから頼まれたミルクティーを二本と私の好きなコーラをカゴへイン。

続けてスイーツのコーナーに置いてある頼まれものの丼プリンを見つけたのでカゴに入れ、ついでに私の分でバームクーヘンを三つカゴへ。

頼まれものはこれで全部だし、他に何か買うものはあるかな……。

家に帰ればポテチや煎餅は置いてあるし、未成年だからお酒は買えない。


「とりあえずカップ麺でも買っとく……?でも以外と食べる機会少ないからどうだろう……」


普通に晩ご飯たくさん食べた後でカップ麺って食べにくいんだよね。

前にお母さんに「もっと晩ご飯作ったほうがよかった?」って、ただでさえ普段から大量に作ってもらってるのに、そんな事言わせるのはなんかお母さんに申し訳なさが……。

夜中にカップ麺食べようとしてた私も私だけど……お。


「そういえば今日からお父さんもお母さんも居ないんだ、って事は……」


少しの間、夜食にカップ麺をどれだけ食べようと問題無い……って事!?


「とりあえずカップ焼きそばの大盛りサイズと、ミカエルが食べるとして同じの買って、カップ麺も違う味で二種類二個ずつ買って……」


この結論に至った私の行動は早かった。

目についたカップ麺をカゴに次々入れ、変わり種のカップ麺は選ぶべきだろうと真っ先に選択し、カップ焼きそばに至っては「マヨネーズ?こんな少量で足りるか!」と追加でマヨネーズを購入する暴挙に出た結果、両手に目的の買い物であるレジ袋が一つとカップ麺(+マヨネーズ)でいっぱいになったレジ袋が二つと大荷物に。


「いやー買った買った。後は買う物もないしさっさとかーえろ」


シンプルな醤油や味噌のカップ麺にソース焼きそば塩焼きそば、変わり種だとコンソメ味の焼きそばにおでん風スープのカップ麺などとミカエルの分も合わせて計十八個。

これだけ数があれば味で選ぶのに困らないし、一つじゃ足りなくても大丈夫。

ミカエルもカップ麺があれば私が居ない時でも「食べる物どうしよう」とはならないでしょ。

ふふ、夜食で食べたくなった時が楽しみだ。

あ、夜食の前に晩ご飯どうする問題もあるーーまぁそっちは帰ってから考えよ。

それから軽い足取りで歩居て着くは自宅前。

ドアの鍵を開けて入り、一度玄関に荷物を置いてドアを閉めてから買ったものを置きにキッチンへ。


「おや、お帰りスズ」

「ただいまミカエル。部屋でゲームしてると思ってたけど休憩中?」

「そんなとこだな。小腹が空いてスズが買ってくるプリンを待っていたのだ」

「それならちゃんと買ってきたから……よいしょ!」


プリンなどが入った袋とカップ麺の入った袋二つをテーブルの上に置く。


「頼んだ以上にずいぶんと買ってきたな……?」

「夜食にカップ麺食べたくなった時にとおもってついでに買っちゃってさ。あ、ミカエルの分もあるよ」

「本当にたくさん買ってきたな!しかし、しばらくは食べる物に困らなくなるか、ありがとう」


「部屋に置いてくる」とミカエルは袋を持ってキッチンから出ると、少しして戻ってきた。


「では、スズに頼んでいたプリンを食べるとしようかな……おお、確かにこのプリンは大きくて食べ応えがありそうだ」


ミカエルは丼プリンを一口食べて「うん、やはりプリンは美味しいな」と満足そうに食べている。

私も買ってきたバームクーヘン食べよ。

袋を開けて一口、うまうま。


「っと、晩ご飯作るのになんかあったかな」


バームクーヘンを口にくわえながら冷蔵庫オープン。

調味料は一通り揃ってるけど、食材の類がなーーーんにもない。

晩ご飯はウーバーで頼むかー。


「ミカエル〜、晩ご飯ウーバーで何か頼もうかなって考えてるけど何か食べたいのある?」

「それなら私はハンバーガーだな。今やっているゲームとのコラボのセットがあるからそれで頼むよ」


ミカエルはハンバーガーね、なら私も今日はハンバーガーにしよ。

スマホで『Uber Mealウーバーミール』という食事の注文をして配達してくれるアプリがあるのでそれを使って近くのハンバーガー屋を検索すると、ミカエルが言っていたメニューがあったので一つはそれを注文、私の分は『肉厚感満載!』とキャッチコピーで美味しそうな予感がした肉厚忍バーガーのセットとナゲットを注文。


「支払いは来てからの現金払いで……よし、注文したよー」

「ありがとうスズ。ふふ、コラボセットか……ゲームで使えるアイテムのダウンロードコードが付いてくるらしいが、どんなアイテムが使えるのか楽しみだ」


私もハンバーガーを食べるのは久しぶりだから忍バーガーが楽しみだよ。

そして注文して二十分が経過した頃、リビングでテレビを観ているとインターホンがなり注文したウーバーが来たので金額を支払って二つの紙袋を受け取る。

一度キッチンに持っていってからミカエルを呼び、それぞれ注文した商品の入った袋を開けて中身を出す。


「おお、これがコラボアイテムのダウンロードコードか!後で入力せねば」

「忍バーガー、袋に包まれた状態でもボリュームありそう……!」


さて、それじゃ早速


「「いただきます」」



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