第九話 真相と試練
研究家を誘拐した犯人は語りだした。
「私があの研究家を訪れたのは、餓死した父親を生き返らせる為です。私と父は5年前に村から追い出され、森を彷徨っていました」
「・・・」
ある夏の晩。彼は研究家を訪れた。
扉を2,3回ノックすると、目をこすりながら例の研究家が扉を開いた。
その研究家は彼の身の上話となぜ此処に来たかをニッコリ笑って熱心に聞いてくれた。
彼は熱心に話し続けた。
その薬を作るためには、ニンジンが必要だと言われた。
素直に彼はニンジンを苦労して育てた。
そして研究家から提示された数のニンジンを持ち、研究家の家に向かった。
扉をノックしようとドアに手を近づけると、その時聞こえてきた。
多分、研究家が友人や何かと酒を飲んでいるのだろう。
「いやぁ、この前の・・・・・・・・・・あの子の顔・・・最高だったね。まだ遊び・・よ」
「あまり・・・事を言うんじゃないか・が可哀そ・だろ?」
酒を飲んでいたためか二人共呂律が回っていない。
だがかろうじて聞こえる。
何だって!?
こちとら必死になって生きづらい身でニンジンを集めたんだぞ!
全ては遊びだったというのか!?
彼は無性に腹が立った。
そして彼に復讐をした。誘拐したのだ。
だが彼は人を殺す程愚かな人間では無い。
水や食べ物は与えた。
そして研究家が彼を弄んだニンジンという野菜を盗んだのだ!
「いや、意味が分からないんですけど」
「でも、おじさん」
「失礼な・・・まだ約30代だぞ!」
『約』って・・・
アレクが面倒くさそうに言う。
「じゃあ、お爺さん」
「余計ひどいわ!」
アレクがキレて言う。
「ったく文句の多いじじぃだぜ・・・で、お、兄、さ、ん?」
「こいつ腹立つから領主様に申し出て処刑してもらおうかな」
「研究家はどこにいるの?」
紅王が顔を近づけると、鼻血を出すお兄さん。
「この下衆野郎が!」
ゴリラを憑依させてお兄さんの顎にプロボクサーでさえ意識不明になりそうなアッパーを入れる。
よからぬ音がしてお兄さんが倒れる。
「何してるんだ!研究家の場所を聞かないと!」
祐樹が紅王を怒鳴る。
壮絶な殴り合いが始まる。
アレクがめろんに話しかける。
「どういう状況?」
「・・・気にしないで、単なる喧嘩だ。それよりこのぶっ倒れてるお爺さんが研究家の場所を教えてくれないと・・・」
祐樹が紅王と殴り合いしながら言う。
「お、お爺さんとは、めろんも言うように、なったな・・・!うっ!くそっ!この阿婆擦れが!」
「このやろー!」
「気にしないで。喧嘩だ」
アレクが倒れたおじさんに近づく。
「この程度の気絶なら俺のスキルの【寝話】で何とかなりそうだ」
アレクがお兄さんの顔に手をかざす。
するとおじさんが言った。
「ど、ドマーゲン洞窟・・・」
再び気絶するお爺さん。
「全くこのパーティにはろくな人がいない!」
聖都市バコロ領。ドマーゲン洞窟。
四人は男を連れて洞窟へやって来た。
そこには白髪で初老の男が倒れていた。
「だ、大丈夫ですか?」
白髪男はゆっくりと起き上がり、大きな大きな欠伸をした。
「・・・」
「あぁ。すまない・・・あの男を捕まえたのか。ありがとう」
再び欠伸をする白髪男。
「お、お前は俺を弄んだのか!」
「誤解だよ。何度も言っているじゃないか」
「じゃ、じゃあ、あの時の会話は・・・」
研究家の口から真相が語られた。
「いやぁ、この前の・・・・・・・・・・あの子の顔・・・最高だったね。まだ遊び・・よ」
は、
「いやぁ、この前の名前を付けられた時のあの子の顔すごく最高だったね。また遊びたいよ」
で、
「あまり・・・事を言うんじゃないか・が可哀そ・だろ?」
は、
「あまりそんな事を言うんじゃない彼女が可哀想だろ?」
だったのだ。
「名前?」
紅王が研究家に聞く。
「私は亡霊の森に訪れた子供にコードネームを付けたやるのだ。話に出てきた少女には、『少女戦隊煎茶1号』と名付けたのさ。いやぁ、今でも思い出すよ。私が出した煎茶をあんなに美味しそうに飲んでくれるなんて・・・」
だからって少女戦隊煎茶1号はは可哀想でしょ。
「じゃあさ、祐樹は?」
アレクが祐樹を指差す。
「ふむ。彼は・・・『スーパーデリバリーウルトラハイパー少年』かな」
絶対ネタ切れただろ。
研究家がめろんの持つ便を見やる。
「ふむ。なるほど」
亡霊の森。研究家宅。
「君たち。その人は何で亡くなったのかい?」
「女神に選ばれたからです」
「ほう・・・」
しばらく考え込む研究家。
「近くの地下遺跡にある古代の植物が必要だな・・・」
「その遺跡って魔物とかいますか?」
「・・・遺跡は階層で分かれている。地下10階にはボスがいる」
なるほど。
「行こうか」
「うん」
そのダンジョンは四人が思うほど楽では無かった。
第二シーズン閉幕。
第三シーズン開幕の日付は決まり次第ご連絡致します!