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第八話 失踪の謎

異世界ではもう春がやってきた。

歩く道の横には桜が咲いて、まるで都市バコロに入るのを祝福しているようであった。


聖都市バコロ。

神話に登場する神々の王バイアグが作り上げたとされる都市だ。

郊外にも教会はあるが、中心部には一際目立つ大きな教会兼領主邸があり、バイアグを祀っている。

教会は円錐形の形をしており、そこに直方体の領主邸がくっついている。

領主の名はソラアール。バコロの住民から多大な支持を集めている。


聖都市バコロ内、亡霊の森。

ここに住んでいる死者蘇生の研究家。

四人が森を歩いていると、小さな小屋を見つけた。

「あ、あれかな・・・?」

紅王が恐る恐る言う。

「多分」

アレクが言いながら前に出て小屋の扉をノックする。

「すいませ~ん!」

反応はない。

「すいませ~ん!返事ないんだったらこの小屋燃やしますよ~!」

なんて物騒な。

「返事は無しか・・・めろん、燃やして」

「いやいや燃やせと言われても!」

すると茂みから物音がした。

「怯えて出て来たか?」

茂みに入り、匍匐前進で進む。

草が無くなった。

「・・・」

そこには沼があって、そこに足を踏みいれようとしている七三分け眼鏡の男性だ。

「ちょぉぉぉっと!」

叫ぶ紅王と祐樹。

「な、何が起こった!?」


男性が立ち止まり足元を見る。

「あぁ!底なし沼だ!危ない所を助けていただき、ありがとうございました!」

「はい・・・」

状況が吞み込めない。

「おじさん、こんな辺鄙な所で何してんだ?」

「すまない、申し遅れたね、私の名はソラアール」

ソラアール?聞き覚えが・・・

「りょ、領主様!?」

「うむ。私がこの聖都市バコロの領主だ」

って事はアレクは領主にため口を・・・?

「しょ、処刑だけはご勘弁を・・・!」

土下座する三人。

当の本人のアレクは首をかしげている。

「いやいや、大丈夫ですよ。処刑を実行する権限は私にはありません」

ホッとした祐樹が立ち上がり、ソラアールに尋ねる。

「それじゃあ、権限は誰にあるんですか?」

「もちろんバイアグ様さ。お抱えの占い師がバイアグ様に伺い、罪人の処罰が決まるんだ。全てはバイアグ様の御心のままにって事」

「なるほど・・・」

「ここの死者蘇生の研究家に用があるのですか?」

「はい・・・」

死者蘇生の研究家は一体何処に姿を消したのだろうか。

「実は私も彼を気に入っていてね、お抱えの研究家にならないかと打診するために数日前この小屋を訪れたのだが・・・」

研究家の家は滅茶苦茶に荒らされていた。

天井に吊られた和風の電球の障子は何か尖った物で傷つけられたかのように破れていた。

「アバーハイト・・・」

「そう。私もそれを疑った。だがね、お抱えの魔法使いに残留するスキルパワーを調べさせたが、それはアバーハイトの物ではなく、人間のスキルパワーだったんだ」


聖都市バコロ主要街道。

おばあさんが駆け寄って来る。

「あんたたち、冒険者かい!?」

ひどく慌てている。

「婆さん、俺らは探している人がいんだよ。悪いけどその話は後で・・・」

「待って!話を聞こう!」

紅王がアレクに言う。

「・・・ったく。めんどくせーな」

首の後ろをかきながら納得するアレク。

「それで、話は?」

めろんがおばあさんに尋ねる。

「実は、ここ最近妙な化け物が出没しているんじゃよ」

「ば、化け物!?」

「夜中に現れ、背丈は大人二人分程。カコッという独特の足音で村人の家に侵入し、人参を盗んでいくのさ・・・」

「に、人参!?」

随分物好きな化け物だ。

子供には疎遠になりがちなあの野菜を盗むなんて。

「退治して欲しいんだ!作物の収穫で生計を立てている農家達からしたらとんだ迷惑だよ!」

「・・・いいですけど」


午前2時。

四人は木の陰に隠れておばあさんの家を見張っていた。

なぜあのおばあさんの家が次に狙われるか分かったのか、それは・・・

「地図で狙われた家の特徴は、二階建てで片流れ屋根の木造民家。村にあるこの条件を満たす家は7件。その内6件は被害にあっている。残る条件を満たす家はあのおばあさんの家だけ・・・」

というめろんの推理のお陰だ。

カコッ

例の化け物の足音がした。

「竹の音だ・・・」

アレクが呟く。

「何て?」

「あの化け物の足音、竹の音だ」

耳を澄ます三人。

「確かに・・・」

「それにあのマント」

化け物の身に着けているマントが風に翻ると竹が姿を現す。

「・・・なるほど」

めろんが呟く。

「あの化け物の正体が分かった・・・紅王。あの化け物の足元に飛び込め」

「え、あ、うん」

前に飛び出し、化け物に体当たりする紅王。

ぼきっという音がして、化け物がゆっくりと倒れる。

「な、何が起こった!?」

前に飛び出す祐樹。

マントの中から這い出てきたのは、人間だった。

「うううぅ・・・はっ!」

「あんたが研究家を誘拐したの?」

男は言った。

「は、はい。私が研究家を誘拐しました・・・」

次回予告 第九話 真相と試練

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