第七話 くじらの策略
めろんたちの通う高校には謎の行事がある。
それは・・・
「第42回学校鬼ごっこを始めます!」
鬼ごっこ。
3年生が鬼となり、2,1年生を鬼ごっこでボコボコにするという2,1年生に何の配慮もされていない行事。
3年生の受験でたまるストレスを発散してやろうという教師たちにより作られた毎年恒例の行事である。
フィールドはこの高校の中のみ。
だが、今回は平年とは少し違った。
なぜなら・・・
「1年、田中博アウト」
くじらの声が校舎に響く。
そう。くじらがこの学校の教師たちに身分をスマートウォッチではなく教育委員会の偉物と偽って多額の寄付をし、学校に取り込み、鬼ごっこの主催権を教師から奪い取ったのだ。
要は賄賂を送って学校の偉物になった訳だ。
家ではくじらは、
「作者に賄賂を送って登場回を作ってもらったんです」
と言っていた。賄賂好きだねぇ。
「それじゃあ放送室のコンピューターに入り込んできます!3,2,1GO!」
この行事で唯一2,1年生が3年生に対抗する手段。
それは三年の持つカードを奪い取ること。
「3年 原一司。金森アレクによりカードを奪い取られ、アウト」
アレクが原先輩のカードを奪い取った。
まぁ、こんな感じだ。
「見つけた!日比谷!窪田!」
音楽室から前原先輩が飛び出してくる。
窪田?紅王なんて何処に・・・
「きゃぁ!」
めろんに誰かがしがみつく。
「あ、付いて来たんだ」
慌ててめろんから手を放す紅王。
「べ、別に付いてきた訳じゃないし?」
口笛を吹き始める紅王。
「それより今は逃げよう!」
目にもとまらぬスピードで二人が走る。
「異世界によって手に入ったこのスピードを見たか!」
2年フロアに向かって走って行く二人。
「バカめが・・・」
前原先輩が呟く。
2年フロア。
「ひ、人がいないよ・・・」
めろんに一瞬しがみついて離れる紅王。
「2年が全員出て行って、3年がこのフロアを支配してるって所かな・・・」
2―Bから3年生が3人飛び出してくる。
「うおぉぉぉぉぉぉ!」
受験のストレスが余程溜まっていたのか、血相を変えて走ってくる。
ひらりとかわす紅王。
よけざまに二人のカードを奪い取るめろん。
残りの1人は二人の隙を見て間をすり抜けていった。
「日比谷、窪田に要注意!」
トランシーバーで連絡する3年生。
視聴覚室前を歩く二人。
「まったく、気が抜けないな・・・」
「そういえば祐樹は?」
キーンコーンカーンコーン。
「萩原祐樹、アウト」
・・・
「何やってんだぁぁぁぁぁぁぁ!」
絶叫するめろん。
「紅王。ここからは積極的に3年のカードを・・・ってあれ?」
さっきまでそこに立っていたはずの紅王がいない。
「どこに行ったんだ?」
角を曲がり、中央階段を使い下の階に降りようとする。
ひらりと舞い落ちる紙切れ。
「ん?何だこれ?」
[紅王は1―Eにいる]
1―E。僕らのクラスだ。
「続きがある」
[返して欲しければ来い areku k.]
アレク。金森アレク。
「狙いは何なんだ・・・」
1―E。
「いわれた通り来たよ」
「よろしい」
アレクと向かい合うめろん。
「紅王は?」
「このスーツケースの中だ」
スーツケースをポンポンと叩くアレク。
・・・
「紅王をさらった理由を言え」
「めろんに試したいことがあるんだ・・・【閃光】!」
アレクの手からまばゆい光は発される。
「【露防】!」
攻撃を防ぐめろん。
「どういうことだ・・・スキルが使えた・・・」
「そう。スキルが使えるようになったんだ、この世界で」
「お前も異世界に行けたんだ・・・それだけで紅王を誘拐したの?」
・・・
「いや、別の目的がある」
教卓を叩くアレク。
「お前の成績をいつも俺は超えられなかった。だから、力で叩きのめす!【光速】!」
一瞬でめろんの懐に入るアレク。
「な・・・」
「【閃光】!」
めろんが吹き飛ばされ掃除用具入れに激突する。
「カハ・・・」
「紅王を誘拐した理由は単純だ・・・紅王を誘拐すれば確実にお前は来る」
「なるほど・・・紅王にしてはとんだ迷惑だ」
立ち上がるめろん。
「アレク。僕は初めてぶちぎれたよ。友達に迷惑をかけられたんだ・・・黙ってる友達がどこにいる?」
「友達ね・・・」
「【金剣】!」
金の剣が教卓に突き刺さる。
「ふうーん」
「こら!」
青い髪の男の人が入ってくる。
「やるなら外でやってください!学校が壊れたら現時点での最高権力者の私の責任なんですよ!」
・・・
「お前・・・くじらか」
「正解!」
くじらの見事な説得により紅王も解放された。
めでたしめでたし。
ちなみに鬼ごっこで勝利したのは2,1年生だったよ。
その後、異世界でアレクと合流して、仲間は四人になった。心強い!
次回予告 第八話 クリスマス