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第五話 アバーハイト

昔々、ある所に小さな村がありました。

人間と人間の子供は人間だよね?

でも、ある赤ちゃんは角が生えていたんだ。占い師は、この子は魔物だとその赤ちゃんのお母さんとお父さんに言ったんだ。

その赤ちゃんは捨てられ、森で育ったんだよ。

皆と違う、それだけで捨てられた彼は人間の習性に怒ったんだ。

火が燃えている。

そこら中に死んだ人が転がっている。

彼は九才の時生まれた村を襲ったんだ!

彼は壊すことが幸せだったんだ。

何もかもぶち壊してやるって彼は思った。

その再来年、彼は城塞都市を襲撃したよ。

でも、兵隊さんに攻撃され、森に逃げたんだ。

彼は悔しかった。

彼は自分をコピーしたんだ。

結果は完ぺきとは言えなかった。

が、角が生え破壊を楽しむというところは同じだった。

数が千人に達すると、人類側にも情報が渡り、彼らはアバーハイトと呼ばれるようになりました。


                                     (終)


「ふぅ~ん」

紅王が退屈そうに言う。

「これが昔話?」

「そう。僕らの世界でいう所の『桃太郎』とか、『内臓を吐く子供』みたいなメジャーな童話なんだ」

祐樹が自慢げに語る。なるほど。桃太郎みたいな・・・って、え?内臓を吐く・・・え?

「野原で生贄の牛を焼く人が、隣人である貧しい母と子供を招待した。子供はここぞとばかりに牛の内臓を食べた。食べすぎて、お腹がいっぱいになり、子供は母に言った。

『お母さん、牛の内臓を吐いちゃうよ』それを聞いた母は言った。

『それはお前のではなくお前が食べた内臓だよ。吐いても大丈夫だ』って言うお話」

全然知らんぞ。それに馬鹿じゃないかその親子。

「にしても『破壊を楽しむ』か・・・」

ベルガモ山4合目。4合目は西側には崖、東には滝がある。

三人は崖の前に立っていた。

「高いな・・・15mはあるんじゃないか?」」

「まぁ私は・・・」

二人の後ろにいた紅王が言い、二人が振り返る。

「飛べますから」

「ずる!」

祐樹が叫ぶ。

「でもめろんお前は一緒に崖を登ってくれるよな?」

「僕も飛べるよ」

「めろん~!」

おいおい泣き出した祐樹。

「あぁ!もう!」

二人が飛んで祐樹を引っ張り上げる。

崖の上。

「ありがと・・・」

「もう日が暮れてくる・・・今日の寝床の準備をしなきゃ・・・」

夕日を紅王が見つめる。

「【銀化】」

祐樹が一瞬にして銀に変わる。

「え?祐樹?」

「随分吞気な事だ・・・まるで魔物に対する警戒がない」

後ろを振り向くと、黒いスーツに身を包んでいて、角が生え、目に光がない人間がいた。

「アバーハイト・・・」

「お前たちはここで安らかに銀に包まれた永劫の時を過ごす・・・」

スキルパワーの上限が596。強い。

「破滅の時まで、君たちはここで私と美麗な戦い(ダンス)を踊れ・・・【炎盤】!」

【火円】を小さくしたかのような炎の円盤が二人を襲う。

「【露防】。【金剣】!」

アバーハイト目掛けて金の剣が飛ぶ。

「【銀盤】」

銀のバリアが張られて攻撃が防がれる。

「駄目じゃないですか、自己紹介もせずいきなり攻撃だなんて・・・」

当たってない。

「私は187番目にできたアバーハイト。『銀の太閤』ラルディです」

ラルディの周りに銀の剣が浮かぶ。

「【銀剣】!」

「【金剣】!」

めろんとラルディの剣が空中で激しくぶつかり合う。

「【憑依】!」

紅王が前に飛び出し蹴りを放った。


ガシィ!


紅王の足がラルディに受け止められる。

「くっ・・・」

「【銀・・・」

紅王を銀に変えようとしたラルディの腕が切り落とされる。

「ふむ・・・」

「【金剣】!」

金の剣と紅王のが蹴りが同時に迫る。

「【銀化】」

4合目全体が銀に包まれた。


「・・・!」

めろんは気が付くと無限に広がる銀の空間にいた。

(ラルディの【銀化】にやられた?それにこの空間は・・・?)

しばらく時間が経つ。

(女神が内側から結界を破れたなら、僕にだってこの銀の空間も破れるはず・・・)

めろんは銀の空間の観察を続けた。

その時間、およそ3か月。

「これって現実世界では寝たきり状態なのかな、それとも現実世界の時間はストップしているのか・・・どちらにせよ、もう銀の空間は破れる」

銀の空間には無数のひびが入っていた。

「破壊だ」

ガラスが割れるような音を立てて銀の空間が崩壊した。


4合目。

固まっためろんの形をした銀が崩れていった。

「ふぅ・・・」

状態は深刻だ。

4合目全体が見渡す限りの銀。

「銀世界ってこういう事・・・」

すぐ傍には固まった紅王と祐樹。

祐樹に手を触れるめろん。

「構造は一緒だ」

紅王と祐樹の銀が崩れていく。

「戻してくれたの?」

「うん」

「ちょっと!銀まみれじゃない!」

めろんが銀の地面に手をつく。

「構造は単純。ただこの場合は面積が広い・・・」

「何ぶつぶつ言ってんの?」

「静かにして。集中できない」

ふぅーっと息を吐く。

カッと目を見開く。

銀が剝がれて行く。

「綺麗・・・」

紅王が呟く。

ラルディが歩いてくる。

「まさか銀の空間を破るとは・・・」

「ラルディ。決着をつけよう」

次回予告 第六話 討伐依頼

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