第三話 山脈
ケルセ山脈。
多種多様な山々が包丁の峰の様に立ち並ぶ。
その姿はまさに壮観である。
中でもベルガモ山は山脈の中でも随一の高さを誇り、完登者をまだ一人足りとも出していない。
夜中。ベルガモ山の麓。めろん、紅王、祐樹は話し合いをしていた。
「薬屋の女の人に聞いたら、ベルガモ山は完登者を一人も出していないらしいぞ。そんな山登れるのか?」
「まず山の中腹にある村に泊まる」
祐樹が山の中腹の僅かな灯りを指差す。
「そしてそこから繋がっているクァース山に登り、降りる」
「村のある高さから向こう側に迂回は出来ないのか?」
「大きな峡谷があり、迂回は難しい」
小さな滝の音が聞こえる。
「じゃあ、祐樹のルートで行きますか・・・」
「で、あの巨木は何?」
ここから見ても分かる程の巨木。
「1000年前ぐらいから生えてる『ベルカモの巨木』だな・・・」
「よし!行くぞ!」
ずしっずしっ
「・・・何か地面泥濘だらけだぞ」
「昨日この山脈に大雨が降ったらしい」
ずしっぐちょっ
「硬い地面が踏みたい・・・」
紅王が泣きながら言う。
「今夜はこの辺りで野宿だな・・・硬い地面を探さないと・・・」
紅王が茂みの中に入っていく。
「待て!」
追いかけると、そこには・・・
「『ベルガモの巨木』・・・」
近くで見ると巨大だ。
「この下は木の葉と枝がカバーになって地面が濡れてないから、布団を敷けるよ!」
「おぉ!」
川で取った魚を串刺しにして焚き火に立てる。
パチパチと音を立てる焚き火。
「うぅぅぅぅ!」
一足先に眠った紅王が唸っている。
「悪夢見てるんだろうな」
「だな・・・乾いているとはいえ地面は冷たいし硬いからね」
パチパチ。焚き火が鳴る。
「夜食」
魚をくわえるめろん。
「夜食は体に悪いっていつも父さんに注意してるんだけどな・・・」
「まったく。どっちが親なんだよ」
笑いあう二人。
「そんで、これ本題な」
紅王を起こさないように祐樹がめろんの耳の近くに口を持ってくる。
「現実世界とこの世界って、何があって繋がったんだと思う?」
「時空のずれです!」
「くじら!」
最近影が薄いよな。
「時空のずれってそもそも何なんだ?」
「多分・・・」
めろんが細長い紙を二枚取り出し、地面に平行に置く。
「こっちがこの世界。これが現実世界」
紙を順に指差す。
「異世界は異世界で、現実世界は現実世界で時間が経過するはずだった。でも、何らかの理由で二つの世界が交わった」
紙を端っこで繋げる。『>』の形ができる。
「問題は何で夢という形で現れたか。この場合、『就寝』という行為は異世界に行くためのある種の儀式と言っていい」
「ふんふん」
めろんが紙を二つまとめて持ち上げる。
「【金剣】」
剣が出現し、机代わりになる。
一つは剣の上に、あと一つはめろんが持ち上げる。
「その儀式により、僕らはワームホールを通ることができるんだ」
上から木の枝を突き刺す。
二枚の紙を貫通する。
「だから、時空のずれっていうのは、二つの世界が交わり、このワームホールが出現することなんだ。問題はこのワームホールが何故出現したかなんだけど・・・」
「う~ん」
考え込む二人と一台。
「まぁ、今分かんなくても、いずれ分かるよな!」
「だな!」
「うぅぅぅん」
「やっぱり悪夢見てる」
次回予告 第四話 学校生活