哀れなるものたちの眩しい季節(1/2)
彼女が浴室で歌っている声がする
朝からシャワーを浴びているうちに気分が良くなり、自然と歌い出したようだった
僕は膝を曲げて座りながら眼を見開き、頭を抱えていた
──絶対に自分のような怪物は彼女といるべきではないし、彼女を幸せにする事も出来ない
これは1つの明確な根拠に基づいた確信だった
歌が終わると浴室の扉が開く
僕は何も無かったような明るい表情でバスタオルを両手で広げ、彼女に手渡した
「ありがと」
彼女がそれを受け取る
彼女の躰を見る事が辛くなり、なるべく不審に思われないようにしながら僕は視線を逸らした
大前提として僕たちは交際していない
彼女は女性が好きだし、男の格好をするのが好きだ
一方で僕は男とでも女とでも恋をする事が出来る
でも、どちらかと言えば少年が好きだった
そのため彼女には「そういう人間」として説明してあるし、ある意味では本当の事だった
今までの経験が偏っているだけなのかも知れないが、少年の透き通る肌というものは、この世のどんな美女の裸体よりも僕の瞳には艶めかしく映るのだ
なんにせよ、それが僕たちが一緒に暮らしている理由のすべてだった
「どうしたの?」
いつの間にか深刻な顔をしてしまっていたらしい、彼女は躰を拭く手を止めて僕を見ていた
──恐らく本当の事を話せば軽蔑されるだろう
彼女の事は世界で一番知っている、これだけは間違い無かった
少年のようであり
しかしそれよりも柔らかく優しい躰付き
僕は彼女の躰に性的なものを常に強烈に感じていた
「ちょっと最近疲れてるのかも…」
苦し紛れだったが、彼女はそれで納得すると「毎日ちゃんと食べないと駄目だよ?」と言いながら胸にさらしを巻き始めた
彼女の躰が女から少年になっていく
心が締め付けられた
僕はあの躰に触れる事は出来ない
そうすれば、この世で一番かけがえのない存在は永久に損なわれてしまう
僕は彼女を守らなくてはいけない
一人の人間として彼女を尊敬しているし、愛しているからだ
にも関わらず
僕はあの躰を蹂躙したい
泣きながら抵抗する彼女を組み敷いて、無理矢理自分のものにしたい
暴力を躰に刻み付けてしまいたい
彼女を強引に自分のものにする想像を僕は毎日繰り返していた
僕は怪物だ
僕は自分の大切なものを自らの手で壊してしまおうとしている
僕の心は、既に良心の呵責で限界を迎えていた
「少し寝るよ…」
何としてでもその場を離れたかった
【…to be continued】




