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踊る人間関係 1

土曜日の放課後、僕らの部室をわざわざ訪れたの部員になりたいという男女だった。

「そうかい。じゃあ、まずは自己紹介を」

ホームズがそう言うと、長身の男は困ったような顔をして

「すみません。ニックネームでもよろしいでしょうか?」と、返事を返した。

「それはまた……どうしてだい?」

「面白い謎が台無しになってしまうと思ったので……。

ああ、それでニックネームなのですが、俺のことはワトソンでお願いします」

「へぇ、ワトソンか。ホームズが好きなのかな?」

「まあ、はい」

「仲間だね。それで」

ホームズはワトソンと名乗る男から視線をずらし、隣のサイドテールの女の子を見た。

「君はなんて呼べばいいのかな?」

サイドテールの女の子は少し考えてから

「じゃあ、あーしは松下で」

そう答える。

「松下……。ニックネームっぽくないね」

「……」

松下はホームズのその言葉に黙って、ワトソンの方を見る。

ワトソンはその視線に気付かず、目を細めて僕の後ろにある本棚を見ていた。

ホームズが気まずそうに一度咳払いをする。

「えっと、本題に行こうかな。この探偵部に入るなら面白い謎を持って来るのがルールだ。

それは大丈夫かな?」

「ああ、はい。部活動紹介のポスターで確認済みです」

ワトソンは夢中になっていた本棚から、ホームズの方に視線を向けてそう答える。

「では聞こう。君たちが持ってきた謎は何かな?」

「それは……。

俺と松下の関係性を当てるというものです」

「関係性?」

「そうです。ヒントはもう与えているのですが、どうですか?」

「……」

ホームズはその言葉に黙って僕の方を見る。

彼女なりの助けて欲しいというサインだ。

まあ、話はほとんど聞いてたし手伝うか。

「ホームズ、何か二人で気づいたことはあるか?」

僕はとりあえずホームズがどこまで認識しているのかを聞いてみる。

「うーん、そうだね。二人は髪の毛をしっかりと固めるタイプの髪型だ。

それで……、ワトソンの方は眼鏡を普段かけているのかな?

細目でこちらを見ることがあったから、そんな気がする。そ、それくらいだ」

「……そう、だな」

あ、あれ?僕の気づいていることとあまり大差がないな。

「相棒はどうだい?私より気づいたことは?」

「……」

ホームズに負けたくないので僕はそれを聞かれた瞬間に急いで二人の方へと顔を動かした。

じっくりと、片方ずつを見よう。


まずは、ワトソンだ。

出ている情報として、

長身(恐らく175cmくらい)、近視の可能性、綺麗に固めた七三、ホームズが好きの4つがある。

先程までの様子と現在の観察で分かるのは、僕の方にある本棚を見ていることだ。

僕の後ろにある本棚はミステリー小説が入っている。

彼の目線は僕の少し上だから、座高から考えて3列目か4列目を見ているはず……。

そこに入っているミステリー小説はコナン・ドイル作品だ。

ぼやけた背表紙であるもののホームズの本だと気が付いて、こちらを見ているのだろう。

ここから分かるのは、彼の方に新しい情報はない。さて次に行くか。


隣に立つ彼女は松下と言っていた。

こちらも出ている情報として、

僕より少し高い身長(165cmくらい)、サイドテールの2つ。

追加するなら、気だるげそうであり、彼女は帰りたそうにしている。

……それくらいか?


「相棒?何か気づきは?」

ホームズは返答を急かしてくる。それに対して僕は

「……これは以外と骨がある謎かもしれない。それが分かった」

苦し紛れの言葉を口にした。

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