そして巨乳はいなくなった 3
「ホームズ、事件についてのまとめとさっきの合図についてのメモだ」
僕はそう言って書き終わったメモを渡す。
内容はこうだった。
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依頼:偽乳をしている人物を見つける。
容疑者一覧 所属部活 委員会 ()内には特徴を記載
・2-1 大宮 茶道部所属 図書委員 (メガネ、お下げ)
・2-1 藤本 バレーボール部所属 文化祭実行委員 (ショートカット)
・2-2 光本 バレーボール部所属 体育祭実行委員 (ポニーテール)
・2-2 矢沢 料理部所属 図書委員 (太ってる、セミロング)
・2-3 外山 料理部所属 文化祭実行委員 (この中で一番可愛い、胸も一番だと思う、黒髪ロング)
・2-3 花本 バレーボール部所属 体育祭実行委員 (成績上位者、ショートボブ)
合図について
・名前で呼ぶ→黙って頷く
・苗字で呼ぶ→僕が噓を吐くのでそれに合わせて返答をする
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「分かりやすいメモだが、外山だけ記述が多くないか?」
「いいだろ。別に」
「黒髪ストレートロングみたいな子が好きなのかい?ボーイッシュな子はダメなのかい?」
ホームズはそう言って自分の前髪を触った。
「ホームズ、そんなことはどうでもいい。それより、あそこのコーナーに入って来てくれ。それで巨乳女子達がいないかどうかを確認してこい」
僕はそう言って、トンキ内にあるヌーブラのコーナーを指差した。
「え?ああ、分かったよ」
「頼んだぞ」
彼女を送り出して僕は少し離れた場所で待機をする。
さて、それっぽい場所を訪れて見たが無意味だろうか。
ヌーブラを購入している巨乳女子達の1人を見つけることが出来れば謎は解ける。
しかし、ヌーブラを落としたのは噓の話だ。加えて、ヌーブラのヘビーユーザーなら恐らく、ここの10回程度の粘着力しかないヌーブラを購入することはないだろう。だが、何かの間違いで……。
そう思いコーナーの出入口を見守っていると、ぞろぞろと人が出て来た。
「……!」
そこに見えたのは巨乳女子達全員の姿だった。
恐らくホームズを見て逃げ出して来たのだろうが……。何で全員が?
これは、もしかして……。
ーーーーーーーーーー解決編?ーーーーーーーーーー
翌日の放課後に僕は中川を部室に呼び出した。
「いいか。ここのロッカーに隠れておけ。それで話を聞けば偽乳の人物が分かるはずだ」
「ああ。分かった」
「もうすぐ彼女達を連れてホームズがやって来る、絶対に喋るなよ」
「もちろんだぜ」
中川の入ったロッカーの扉を閉めると、タイミング良くホームズがやって来た。
「相棒、連れて来たよ」
「ありがとう」
6人が部室に入ったのを確認して、ホームズは扉を閉めた。
「はぁ、話があるなら早くしてよね。部活始まっちゃうから」
矢沢はそう言って僕を急かす。
「ええ、はい。そうですね。では早速……、昨日の放課後、あなた方がこの部室を去ってから僕と家永さんは学校の1駅隣のトンキに行きました。もちろん、依頼達成のためです。そのために、ホームズをヌーブラが置かれているコーナーへと行かせました。その時にホームズはあなた方全員を見たと言っています。そう、つまり……」
僕は視線をホームズにやる。
ホームズは黙って頷いた後で、「あっ!」と言い彼女達を見た。
「そう、つまり、ヌーブラを付けているのはここにいる全員だったのです」
ガタガタとロッカーが揺れる。
動くなという命令も追加すればよかっただろうか。
「……もういいよね?じゃあ」
ホームズの推理が終わると、彼女達はさっさと外に出て行った。
そして、勢い良くロッカーから中川が出てくる。
「そ、そんな!全員がヌーブラを付けていたなんて!」
「それが真実です。協力した保健委員の女の子は中川の夢を壊したくないとそう噓を吐いたと言っていました。確認も取れています」
「そうか。俺の夢を守るために……」
中川は涙を拭くような仕草をしてから、発言を続ける。
「ありがとう、これからは心入れ替えるよ。
俺はもうセクハラしない!巨乳がいないならセクハラの意味はないから。
もちろん、ボランティア活動も手伝うよ。そこで出会いがあるかもしれないし。
じゃあ、ありがとうな、ホームズと……。キモい探偵!」
要らない一言を足してから中川は廊下へと出て行った。
「凄いな、君の作戦通りだったよ」
ホームズは彼の足音が聞こえなくなってからそう言う。
「ホームズ。これが上手くやるってことだ。覚えておけよ」
我ながら活かした決め台詞をこの時は返したと思う。
ただ、ホームズは「ああ、メモにして渡してくれ」そう言って僕に頭を抱えさせたのだった。