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【3章】帰れない楽園  作者: 結糸
第1章 異世界召喚
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クラークの苦労

「一葉はまだ戻らないのか?」


 ラスティが剣をおいて、タオルで汗を拭いた。クラークと剣の稽古をしていたのだ。

「はい。まだ」

 クラークもタオルで汗を拭く。ブライアンが持ってきた水を飲んだ。

「無事でいるんだろうな?」

 そう言ってから、「あいつのことだからしぶとく生きてるだろうな」とラスティはひとりごつ。


「そのようです。アシュリーの配下の報告によると、フレッチャーの侍女として宮殿で働いているようです。みちるは超獣使いだと名乗って、国王の側室候補となったとか」

「よく潜り込めたな」

 ラスティは呆れとも感心ともつかない声をあげた。


「あちらはオスカーが無類の女好きですからね。側室探し兼侍女候補として採用されたようです」

「フレッチャーとは顔見知りだったか?」

「ええ。何か初対面からずいぶんと打ち解けたようでしたね」

「まったく。クラークといいフレッチャーといい、女の趣味が悪すぎるよ」

 へらへらと笑いながら、イヴァンが訓練所へやってきた。ほかの兵士たちが軽く会釈する。

「イヴァン。もう時間か?」

 ラスティはブライアンの持っている水を飲んだ。


「大丈夫ですよ。殿下の様子を見に来ただけですから」

「見ていたのか? 気づかなかったな」

 ラスティは憮然とする。

「イヴァンは気配を消すのは得意ですから」

「なんだか褒められてる気がしないねえ。で、超獣は…」

 クラークのそばからさほど離れないところにいぬくんはいた。座ったまま、じっとこちらを見ている。


「ねえ、あれに命令して何ができるか試してみてよ」

「もうした」

 クラークはタオルを置いて木の剣を壁に立てかけた。

「そうなのか?」

「ええ。一葉はほとんど超獣の力を使うことをしませんでしたからね。どの程度の力が使えるのか、私のほうで確かめました。一葉以外でも命令は聞くようですね。もっとも、うちの使用人のいうことは聞きませんでしたが」


「どうだったんだ?」

 ラスティが興味深げに聞く。

「私が確かめたのは、大地の力と炎の力をどの程度使えるかです。あまり派手にやると周りに知られるので、うちの屋敷の庭でやりましたが…魔法使い十人程度の力はありますね。一葉の命令なら、もっとすごいことができるのかもしれません」

「じゃあ、ヒースコート将軍とファラデー将軍に見せなきゃ」

「それはしない」

 イヴァンの提案をクラークは拒否した。


「どうして? ずっと前から言われてたでしょ? 一葉の力を見せろって」

「超獣の力を知ったら、すぐに一葉は利用される。それこそ、コルディアに狙われるのは避けられない」

「それは大きい力を持つ者の代償だよ。それに、一葉の力ではなく超獣の力だ」

「クラーク、一葉を慮ってやってるんだな」

 ラスティが微笑む。

「…どうでしょうね」

 クラークは口の端をあげて笑った。


「ふん。相変わらずあの小娘に甘いことで。でも一葉が戻ったらどうなるかね」

「…なんとかするさ」

 クラークは大きく息を吐いた。

「ああ、そう。殿下、そろそろまいりましょう。お時間ですよ」

「わかった。クラーク、俺は行く。また頼むぞ」

「承知いたしました」

 クラークはラスティたちを見送って頭を下げた。いぬくんはじっとクラークを見ていた。




「召喚獣狩り?」

 アーウィンの部屋を掃除していると、今から出かけると告げられた。


「そう。まあ魔物退治なんだけどね。オスカー様が今日は元老院との議会がないから、行きたいとおっしゃってね」

「元老院?」

「嫌だよ、この子は。そんなことも知らないのかい」

 メリッサが呆れたように言う。

「レスタントは貴族議員と平民議員で議会を開くんだったね」

「ああ、そう…だったかな?」

 知らないので一葉は適当に答えた。もっと勉強しておくんだった。本を読んでばかりでも、世情にうといのでは役に立たない。


「元老院は貴族院と似ているね。貴族のいわゆる隠居生活を送る方々が国王と政治の会議をする。政治経験を積んだ方たちから知恵を借りると言う名目でね」

「うーん…。それって、貴族だけが得することにはならないの?」

「そうならないようにするのが我らが国王の腕の見せ所だよ。もしよければ、一葉も一緒に狩りへ行く?」

「え、いいの?」

 どんなふうに召喚獣にするのか一葉も気になっていた。


「アーウィン様、この娘を甘やかしすぎですよ」

 メリッサがため息交じりに言う。

「いいじゃないか。コルディアに来たばかりで息抜きも必要だろう? 仕事も頑張って覚えているし」

「息抜きさせすぎですよ」

「行きたい! どうやって魔物が召喚獣になるのか見てみたい!」

 一葉が興奮気味に言うので、話はすぐ決まった。


 アーウィンについて宮殿の外へ出て厩舎へ行くと、みちるもシリウスと一緒にいた。みちるは身軽な服装にブーツのようなものを履いていた。

「あれ、みちるも?」

「一葉も来たのね。よかった」

「待ってたよ。一葉も連れてきてくれてよかった」

 オスカーはやさしく微笑む。


「お待たせしました。では、馬で行きますか?」

「そうしよう。シリウスはついてこられるかな?」

「えっと…ついてこいって言えば、来ると思います」

 みちるがそう言うと<無論>とシリウスから返事が来た。

「じゃあ、行こうか。みちるは私の馬に乗るといいよ」

「ありがとうございます」

 オスカーは白馬を厩舎から出した。


「一葉は私と一緒に」

 アーウィンは茶色い馬を厩舎から出す。

「うん。オスカーの馬って白馬なんだね」

「ちょっと一葉、オスカー様でしょ」

「あ、そっか」

 みちるに言われて一葉は頬をかく。


「はははは! 別にかまわないよ。呼び捨てされるなんて久しぶりだ。いいね」

「よろしいのですか?」

 アーウィンが困惑したように聞く。

「私がいいと言ってるじゃないか。ああ、でもこの面子でいるときだけだね。下の者に示しがつかないから」

「はあ、どうも」

「オスカー様がそれでよろしいなら」

 アーウィンは苦笑した。


 一葉とみちるは馬に乗せてもらい、城から近くの山へ馬を走らせた。


ちょっと…私事でいろいろありすぎて、頭はげそうです。

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