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【3章】帰れない楽園  作者: 結糸
第1章 異世界召喚
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紙飛行機の行方

「おかえりなさいませ、アーウィン様」

「ただいま、メリッサ」

「ただいま、メリッサさん」


 すでにアーウィンの部屋ではお茶の用意がされていた。紅茶とスコーンが置かれている。

「よくこの時間に戻ってくるって思ってましたね?」

「アーウィン様は時間を守られるお方だからね。本も届いてますよ」

 メリッサが机の上にある包装された本を指す。アーウィンはうなずいて椅子に座った。


「一葉、メリッサに渡してくれないか」

「ああ、そうだった。メリッサさん、これアーウィンから」

「はて。なんでしょう? 開けてもいいんですか?」

「もちろん」

 メリッサが包装を開けると、さきほど雑貨屋で買ったポプリとリースが出てきた。

「まあ…」

 メリッサは嬉しそうに目を細める。


「一葉が選んでくれたんだよ。いつもメリッサにはお世話になっているからね」

「ふうん…。あんたが選んだにしちゃ、なかなかだね」

「気に入ってもらえましたか?」

 一葉がわくわくしながら聞くのをメリッサは笑って「まあ、それなりにね」と答えた。


「メリッサはすごく喜んでるよ。素直じゃないんだ」

「アーウィン様、余計なことはおっしゃらないで」

 メリッサは「紅茶をいれるんだよ」と一葉に言う。一葉は3人分のお茶をいれてお茶会が始まった。メリッサに買い物した様子を話して、時間は過ぎた。


「あれ、あんた…」

 一葉の髪飾りに気づいたメリッサが指摘する。

「そんなのつけてたっけ?」

「あ、えっと…」

「さっき買い物に行ったついでにね」

 内緒に、と言ったアーウィンがさらりと話した。

「そんな甘やかして…」

 メリッサはため息を吐く。


「いいじゃないか。ご褒美があったほうが張り合いも出るだろう」

「あんたはご褒美をもらいすぎだよ。さ、お茶会も終わりだ」

「はい」

 また掃除を始めて夕方になったころ、「行っていいよ」とメリッサが言うので一葉はみちるの部屋へ向かった。


「みちる、入るよ」

「いいよ」

 ドアをノックして部屋へ入ると、みちるはコリンと折り紙を折っていた。ドレスと言うほど大げさではないが、ふわりとした白のレースの上下そろいの服を着ていた。


「へえ、それ折り紙?」

「そう。コリンと一緒にできる遊びはないかって考えたの。紙ならもらえるから、時間つぶしに」

「いいね。懐かしい」

 一葉も座って折り紙にまざる。侍女のアグネスはこの時間は侍女たちのおしゃべりに興じているらしい。一人の時間もほしいのでちょうどいい、とみちるは笑った。


「今日の服、かわいいね」

「側室候補だから、それなりの服を着ろって。私、制服しか持ってないしね」

 コリンは折り紙を手に乗せてみせる。


「そう。上手よ、コリン」

 鶴を折ったコリンは、みちるに褒められて嬉しそうに笑った。

「今日は何してたの?」

「シリウスをみんなにお披露目してたの。側室の人たちはみんな結構やさしいよ、今のところは。シリウスもみんなに触られてもおとなしくしてた」

<我慢しているだけだ>

 シリウスが不満げに言う。この声は一葉とみちるにしか聞こえていない。


「頑張ってね、シリウス。私はアーウィンと買い物に行ってた」

「そう…。昨日のこと、何か話した?」

「うん。…たぶん、私が気にしてると思って連れて行ってくれたんだと思う」

「そうなのね。アーウィンさんてやさしいね」

「やさしいよね。…ああいう人がいるとなんか嬉しくなる」

 微笑む一葉の表情は柔らかかった。


 みちるは折り紙を折りながら、小さい声で「クラークさんに余計なこと言ったかな」とつぶやいた。

「ん? 何が?」

「なんでもない。紙飛行機、飛ばしてみようか」

「いいね、それ。…どうやって折るんだっけ?」

「えっとね…」

 それから三人で夕食まで紙飛行機を飛ばして遊んだ。


 ふと、一葉は宮殿のそとに高い塔が立っているのに気づいた。何の塔なんだろう。そのうち、アーウィンに聞いてみようと一葉は思った。


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