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【3章】帰れない楽園  作者: 結糸
第1章 異世界召喚
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もう一人の賢者

 部屋へに戻り、一葉は着替えて風呂に入った。寝間着をきて部屋で慣れないことをした身体をストレッチしていると、突然カインが分離した。


「うわ、と。どうしたの?」


 何の前触れもなかったことに、一葉が驚いてカインを振り返る。

「青の賢者が呼んでいます」

「え、なんで? なんの用?」

「聞けばわかりますよ。行きましょう」

「行くって、どうやって…」

「開け異なる場所への門、オープン・ザ・ゲート」

 カインが手をかざすと、床に魔法陣が出現した。


 呆気に取られている一葉に「つかまっててください」と言って、カインはいぬくんと一葉の手を引いて魔法陣の中へ入る。すると、一瞬で青の賢者のいる雲の上らしき場所に来た。


「ああ、ここ…。なんか、懐かしいな」

 一葉はいぬくんを抱き上げて息を吐く。雲の上にいるようなのに、暑くもなく寒くもない。ギリシアの神殿のような造りをしている。

「遅かったのう」

 杖を持った青の賢者は、少年の姿をしながらも相変わらず老人のような話し方をする。


「すみません。皇太子の誕生日会ということで夜会があり、遅くなりました」

 カインが一応説明したが、「知っておる」と青の賢者は答えた。

「あーうん。なんかそんな感じ…ぐはっ!」

 青の賢者は無言で杖を振る。

 一瞬で一葉の身体が柱にたたきつけられた。ずるりと地面に尻を着く。

「うっ…」

「大丈夫ですか?」

 カインが一葉を助け起こす。一葉は身体に痛みを感じながら、立ち上がった。


「げほ、何すん…」

「儂はおぬしに、ラスティを王にするよう命じたはずじゃ。夜会とはいい身分じゃのう」

 一葉は言い返そうと思ったが、また柱にたたきつけられてはたまらないので「すみませんねえ」と皮肉たっぷりに笑った。


「まあよい。今回おぬしを呼んだのは、おぬしと同じ異世界の人間をもう一人、ここへ呼ぶためじゃ」

「もう一人? なんで? 誰を? なんのために?」

 矢継ぎ早に一葉が質問するのを無視して、あの賢者は続ける。

「世界にはそもそも理と言うものが存在する。一方の国にだけ肩入れするわけにはいかぬ。超獣使いはおぬしじゃが、レスタントの敵国コルディアにも同じ条件をつけなければならんじゃろうて」


「え? 何? どういうこと?」

「要するに、あなたの対立候補を召喚するということです」

 カインが手短に説明する。


「ええ! なんで?」

「言ったであろう。儂らは世界に手を出さぬが、調停をするのだ。どちらかの国のみに超獣使いがいてはつり合いがとれぬ。そういうことじゃ」

「ほっほっほ。相変わらず青の賢者は堅苦しいのう」

 突然、また年老いた言葉づかいで、老人のような声が聞こえてきた。


「え…誰?」

「下です」

 きょろきょろと周りを見る一葉の目には、声の主がみつけられない。カインに言われて下を見ると、赤い目をした白いうさぎがローブを着て小さな杖を持って二足で立って一葉を見上げている。


「やだ、うさたん! かわいい!」

 一葉はうさぎを抱き上げた。

「こ、これ、何をするのじゃ」

「くるくる」

 いぬくんが自分の忘れないでくれというように一葉の足にまとわりつく。


「やだ、いぬくんももちろんかわいいよ。でもうさぎはうさぎのかわいさがあるんだよよね」

 一葉はふわふわの毛を思う存分撫でまくる。一葉から逃げようとするが、いかんせん体格に差がありすぎてうさぎは逃げられない。


「やめんか、こら、青の賢者、なんとかせい」

「いい加減にせぬか。その方はうさぎの外見をしているが、儂と同じ七賢者の一人、白の賢者であるぞ」

「賢者? うさぎが?」

 一葉はうさぎを胸に抱いて目をぱちくりさせた。


「いかにも。某は白の賢者。さあ、下ろしてたもれ」

「はい…」

 一葉は仕方なく白の賢者を地面に下ろした。「やれやれ」と白の賢者はため息を吐く。

「まったく、困った娘じゃのう。某が魅力的なのはわかるが、もうちょっと丁寧が対応をいたすがよい」

「あ、はあ。すみません」

 一葉はうさぎに頭を下げた。


「なんだおぬし、儂とずいぶん態度が違うのう」

 青の賢者は冷たい目つきで一葉を見る。

「いや、うさたんかわいいから…」

「うさたんではない。某は白の賢者であるぞ。…では始めるか。もう一人の異世界の人間を召喚するぞえ」

「承知した。では召喚の儀を執り行っていただく」

 青の賢者は杖をふるった。


「え? 今?」

「今ですよ。下がっていてください」

 カインに肩を引かれて一葉は下がった。一匹の賢者は、杖を掲げ、呪文を唱える。


「我は願う。異世界の次元を開き、ここへ異世界の人間をまいらせよ。サモン」

 床に魔法陣が描かれ、光の柱が立ち上がった。あまりのまぶしさに一葉は目を閉じる。


 光が収まったところで目をそっと開けると、そこには一人の少女が、一葉のよく見知ったセーラー服の少女がぽかんとして口を開けてこちらを見て立ち尽くしていた。

「…一葉?」

「…みちる?」

 この世界に召喚されたのは、一葉の親友のみちるだった。


ちょっといつもより短めですが、ここでいったん区切ります。

スマホで読んでくださってる方もいるので、短いほうが読みやすいのかな…とか思ったり。

迷いながら載せてます。

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